旅のWise Spending(2)
今日は「医療保険」について書いてみたいと思います。 前回も述べたように、例えば、アメリカにJ-1ビザで研究留学を希望する場合、受け入れ大学から、大学独自の医療保険に入るか別の保険を使ってWaiverするように求められますが、条件によっては、日本の駐在員保険に設定のない保険項目(既往症など)が要求される可能性があります。さらにJ-2ビザの同行家族にも同じ条件が課されるため、その金額は相当なものになります(というわけで、アメリカを選ぶ場合は、Waiverできるかどうか事前に日本の保険会社にご相談することをお勧めします。この辺、最近のオバマケアや移民政策と関係しているのでしょうか?)。 他方、イギリスやフランスなどのヨーロッパの大学は、アメリカの医療保険に比べて厳しくないため(これも一応調べた方が良いとは思います。イギリスはNHSがあるので保険をかけなくても大丈夫という話も聞きます、ただし診察時間が随分遅くなるのでかけた方が良いという話です)、日本の駐在員用保険を使っても問題はないと思います(Waiverという概念もないと思います)。フランスの研究者ビザの場合は、「受け入れ協定書」の取得の段階で、大学と県庁によって、医療保険・賠償保険・年収・雇用状況などの審査が入りました。医療・賠償保険は、日本の保険会社の発行した英文証明書で全く問題ありませんでした(なお、渡航日が決まっていない場合は、職場・保険会社に相談すれば、暫定的な日程で証明書を出してくれます)。そして、その同行家族は?といえば、そうした医療保険への加入は任意となっているわけです。つまり、研究者自身の「受け入れ協定書」さえあれば、同行家族もビザが降りるシステムになっています。 もし通常の日本の医療保険を1年間かけた場合は、大雑把に計算すると、駐在者本人が60万程度、同じ保険内容で付帯家族の場合は、一人20万程度、したがって家族四人の場合、120万程度を想定しておく必要があります(もちろん補償内容で前後します)。結構かかりますよね(苦笑)。なんとかならないか、と思いませんか。そこで、二つの方法が浮かびます。一つは、クレジットカードの保険、それからもう一つは、共済保険、です。 (1)クレジットカードの保険 クレジットカードの海外旅行保険は、家族全体が補償されるものとして「自動付帯」タイプと「利用付帯」タイプの二つがあります。家族補償がついた「自動付帯」カードは、日本からの出国と同時に医療・損害保険が90日間保証されるもので、日本では多くのゴールドカードに設定されているタイプだと思います。そしてもう一つ、家族補償がついた「利用付帯」カードは、公共交通機関などの利用でカードを切った時から保険が90日間かかるというタイプで、つまりは海外でも国内でも利用したら補償がつくというタイプです。一見すると、「利用付帯」に比べて「自動付帯」の方がはるかに便利です。しかし海外に長期で滞在する場合は、必ずしも「自動付帯」というよりは、「利用付帯」が有効に作用する場合があるんですね。それは理屈の上では、「利用付帯」を使えば、3ヶ月間、3ヶ月間、3ヶ月間と延ばし延ばしに補償をかけることができるからです。 これが利用可能なのは、アメックスの一般カード(American expressgreen, American express sky travelers, ANA Americn Express)です(他にもSumi trust club ゴールドカードもこれに該当します。年会費はちょっと高いけどね)。これらのカードを三枚持ち、自動付帯カードと合わせれば、1年間有効に保険をかけることができる、ということになりますね。 「理屈の上ではできるけど、本当にそんなことができるの?カードを複数枚同時に所持できるの?、旅行でないとダメなんじゃないの?」など不安に思ったので、こうした場合は直接聞いてみる(笑)。ご迷惑かと思いつつ、アメリカンエキスプレスやSumi trust clubの保険担当や一般担当に電話をして確認をしたところ、結果はO.K.でした、ただしアメックスの方には、時刻表のある公共交通機関の利用という点だけ気をつけてということでしたが。補償額は保険会社の無制限に比べれば低いけど、風邪とかちょっとした病気であれば、これで対処が可能ですよね。これは使えると思いました。 (2)日本の公的な医療保険。 もう一つは、日本の公的な医療保険です。私の所属している共済保険は、海外で万が一医療にかかっても、領収書や記載事項があれば、帰国後・事後でも請求することができます。そしてこれは、通常の医療保険だけでなく、なんと駐在員保険でたいてい適用不能となっている歯の治療も適用がなされます。もちろん、3割負担になるかどうかは、共済が精査するため、自己負担は生じるかもしれませんが、海外での医療は日本の保険で部分的にカバーされているのです。 というわけで、(1)と(2)の保険をうまく使えば、家族付帯の医療保険額を節約することができます。それにヨーロッパの学校では、その学校独自の医療保険に加入させられるようです。しかも例えばフランスで眼科にいく場合、なんと予約6ヶ月先まで通常見てくれない、と現地の方にお聞きしました。一般医と専門医と分かれているそうですが、一般医に支払う金額は低額だと聞いております。確かに日本の駐在員保険の「無制限供給」という項目に目が行くのは事実ですが、よく考えると、歯の治療はできない、既往症はできない、と制約が大きいのです(この意味でアメリカの既往症への対応している保険は良いものなのかもしれません)。 判断は、人によるでしょう。安全安全、そしてお金にも十分余裕があれば、それでいいでしょう。けれど、そうも言ってられない、という場合どうでしょうか?出国前にきちんと病院で検査をした上であれば(自己管理の場合はここが重要!)、(1)(2)を組み合わせて対処すると考えることもありでしょう。保険をかければかけるだけ、その管理を怠ってしまうというのが「モラルハザード」です。さてみなさんは、どのようにお考えになりますか?