響きに意識を向けましょう | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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とある作曲家さんが、今年の課題曲について大切なこととして、「ハーモニーを正確に響かす」と言われていました。さて、それはたとえばどういうことなのか、課題曲の実際の部分を例に取って書いてみたいと思います。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
 

 

  ハーモニー

 

練習を聞いていると、ハーモニーが全然意識に入っていないことが気になる…
ハーモニーに対して無頓着な音がしていることが少なくないように思うのです。
うちのホームページに吹奏楽コンクール課題曲解説を書いているのですが、
ハーモニーの話が割合多めかな、と、自分では思っていました。
でも、その、とある作曲家さんのお話を聞いて、むしろ、
『あぁ、もっと書いてもよかったな…』と思ったのでした。
さて、どんな『無頓着』な音が聞かれるのか、実際の課題曲のほんの一部を取り出して、
きょうは少し書いてみますね。
 

 

  行進曲「勇気の旗を掲げて」

 

まずは課題曲1。
第2マーチの部分(CとD)。これ、課題曲解説にも書いたのですが…
練習を聞いているとね、こんなふうに聞こえることが少なくないのです。

同じことが4回繰り返し、3回目だけ強弱が違う…

あの、同じこと、では全然ありませんよ。
2回目(C後半)は属調(変ロ長調)に転調しているのです(楽譜上の段)。

楽譜4小節目の後半、E♭mは、属調のマイナーサブドミナントですね。そして…
4回目(D後半)は平行短調(ハ短調)に行って戻ってきて終止しているのです。

このマイナーの響き、大切ですね(楽譜下の段)。



ホームページに音も置いていますが、
この響きの違い、全員がもっとちゃんと感じ取って演奏してほしいのです。
気づいていましたか?

それから、ここ。

 

 

さて、これはどこでしょう?

ここの響き、ちゃんと入っていますか。
 

 

  メルヘン

 

Bの6~7小節。解説には、
『クレシェンドディミヌエンドがありますが、4分音符の動きがちゃんと聞こえるように』…
と書きました。
さて、この2小節とも、4拍目でハーモニーが変わっているの、気づいていましたか?



この部分、変ニ長調ですよね。調号で書いてみました。
「強弱をちゃんとつけましょう」じゃないんです。
そのためにハーモニーをおろそかにしてしまっては、いい演奏にはなりません。
表現はもちろん大切ですが、だからこそ、むしろそのためにも、
もう少しハーモニーに意識を向けて欲しいのです。
このハーモニーの移り変わりが、ちゃんと聞こえないといけません。

 

 

  フロンティア・スピリット

 

この曲は転調なども注目ポイントなのですが…
いちばん響きを感じ取って欲しいと思うのは、Bの部分。
これも課題曲解説に書いた通りなのですが、特にBの10小節目から…



解説に音も置いていますが、これ、すごい響きだとは思いませんか!

ここも調号で書いてみました。
スコアを読んでいて、たまげた(大げさ?)ところです。
こういう響き、ぜひちゃんと感じ取って演奏して欲しいのです。
 

 

  風がきらめくとき

 

この曲がもしかしたら、響きを感じ取ることがいちばん大切な曲かもしれません。
非和声音、これが、この曲の美しさの大きなひとつだと思うのです。解説にも書いた通り。

(もちろん『線』の美しさも大きいのですが…)
その非和声音を感じ取り、ちゃんと拾い集めて演奏に生かしていくためには、
響きを感じ取っていくしかありません。
ハウツーでは出来ません。
そこに気づいて、意識に入れて為された演奏と、そうでない演奏とでは、雲泥の差でしょう。
この音楽の美しさ、ぜひ感じ取ってほしいです。

 

どの曲も、合奏でゆっくりのテンポで合わせて全員が響きの移り変わりを感じ取る練習、

『響きの譜読み』を、ぜひやってください。
響きをわかって演奏しているのと無頓着に演奏しているのと、全っ然違います。雲泥の差!

さて、響き、意識に入っていますか。


課題曲解説はこちらです。