もっと歌って? | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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みなさん合奏などでこんな指示を受けたことはないですか。「もっと歌って!」…。さて、これってどういう意味なのでしょうか。どうすればいいのでしょうか。これを言われて、一体どういうことなのかわかりましたか。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  便利なことば?

 

「もっと歌って!」と言われたら、どうしたらいいのでしょうか。

  • もっとビブラートをかける?
  • もっと強弱を大げさにつける?
  • もっとアゴーギクをつける?

それってでも、どうなんでしょう…
言うほうは、どんな時にこれを言うのでしょうか。

  • なんだか音楽的じゃないなぁ…
  • なんだか物足りないなぁ…
  • なんだか平坦だなぁ…

でもどうしたらいいのかわからない、そんな時の便利なことば、それがもしかしたら、
「もっと歌って!」なのかもしれません。
さて、おたくの指揮者、きょうは何回これを言いました?
 

 

  意味があるの?

 

さて、ではこの指示、なにか意味があると思われますか。
なんでもかんでも「もっと歌って!」という指示が苦手だった…
そんな声もありました。
ぼくも高校の頃、合奏でこれを言われたことがありました。
思いっきりダイナミックに吹いてやったら、「ちがう、意味を取り違えたな」って…
もうね、ふざけるなアホンダラ!と思いましたよ。
多くの場合はほとんど無意味な指示、それが、「もっと歌って!」だと思うのです。
 

 

  音楽的なパッセージにするには…

 

では、もっと音楽的に、表情豊かに、表現力を持って、抑揚のあるパッセージにするには…
フレーズの山はどこなのか、そこへどう持っていくのかをイメージする。
緊張感が高まるポイントはどこ?
どの音符がエネルギーを持っている?
拍子感はどうなっている?
音楽の種類にもよるけれど、ひとつのフレーズはひとつの長い音だと思って、
その長い音に変化をつけるイメージを持つ。
クレッシェンドはどうする?
アゴーギクは?
そして、なぜそうするの?
そういう科学的なことが駆使されて、表情豊かな音楽的演奏というのは出来ると思うのです。
 

 

  ハーモニー

 

ひとつ大きなポイントになるのは、ハーモニーです。
たとえば緊張感が高まるのはドミナントですよね。
それが、解決する、そこに、緊張感→安心感というひとつの山が生まれる。
メロディやいろいろなパッセージのなかにある非和声音(大切です!)、

 


これの持つエネルギーや方向性を読み解くのにも、和音分析が必要ですよね。
音を聞いただけで直感的に全部読み解けるような百戦錬磨の人なら別ですが…
なにしろ、そういう具体的な分析の上に出来上がるもの、それが、「歌っている」演奏。
決して、便利な言葉ひとつで出来るものではないのですよね…
 

 

  歌ってみること

 

とはいえ、歌うことに意味がないわけでもないのです。
文字通り、『歌って』みるのです。声で、ね。
いろいろな、いいことがあります。たとえば…
ハーモニーなどは、声で歌って合わせてみて、そのあと楽器でやってみると、
合うようになっていることも少なくありません。
アーティキュレーションなども、作為的に楽器でつけようとするよりも、
まずは歌ってみて、歌い伝えてつかむ。
それが有効だったりもします。
歌った通りに楽器でやってみる。
歌えないものは、楽器でも出来ない…、そういうことはよくあるのです。

だから、声で歌ってみることは有益だと思うのです。
「もっと歌って!」なんて意味のない指示をするくらいなら、
「じゃ、声でやってみようか」の方が、意味のある指示だと思うのです。

さて、みなさんのところの合奏では言われますか、「もっと歌って!」って…