演奏のヒントになる非和声音などの話(1) | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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楽曲を演奏するときに、どうしたら表情豊かに立体的に、音楽的に表現力を持って演奏できるのか、そのヒントのひとつになるのが、たとえば非和声音ですね。エネルギーと緊張。きょうはこれについて少し書いてみます。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  非和声音

 

非和声音とはなんでしょうか。
音楽にはメロディ、に限らず、いろいろな動きがありますよね。
そして、和声音楽、調性音楽では、その背後にハーモニーがあります。
ところが、いろいろな動きってハーモニーの構成音だけで出来ていることって少ないですよね。
たとえばCのコードに乗っているメロディがドミソの音だけで出来ていることって、少ない…
そのハーモニーの音ではない音があることがほとんどです。
その、動きに含まれるハーモニー以外の音のことを、非和声音といいます。
これ、演奏の大きなヒントのひとつになるんです。
さて、どんなものがあるのでしょうか。
 

 

  代表的な非和声音

 

たくさんあるのですが、代表的なものを7つ書いてみますね。

それぞれ楽譜の下にある♪のリンクから音が聴けます。聴いてみてください。
 

 刺繍音(ししゅうおん)

 

ハーモニーの構成音(和声音)から隣の非和声音に行って、また戻ってくるもの。

弱拍に現れます。


♪刺繍音

 

 

 経過音(けいかおん)

 

ハーモニーの構成音(和声音)と、別の構成音とをつなぐ途中の非和声音。

これも弱拍に現れます。


♪経過音

 

 

 倚音(いおん)

 

強拍上で非和声音が現れ、それが隣の和声音へ解決する音。緊張感が高いです。
強拍に現れ、弱拍で解決。


♪倚音

ちなみに余談ですが、sus4 という和音がありますが、
『4→3』と解決する場合においては、一種の倚音と言えるのではないでしょうか(異論は?)。


♪sus4

それから、II→V。


♪II→V

これがもし、こうだったら…


♪II→V倚音

これだって、倚音と言えるのかもしれません。
 

 

 係留音(けいりゅうおん)

 

前の和音の構成音が、次の和音まで残って非和声音になった音。緊張感が高いです。
弱拍に始まり強拍で非和声音となり弱拍で解決。


♪係留音
ピアノの音は減衰してしまいますから緊張を感じにくいですが、これがもし減衰しない音なら…
ちなみに余談ですが、『ブルーノート』が生まれたきっかけって、係留音ではないでしょうか。
 

 

 逸音(いつおん)

 

和音が変わる直前に、和声音から隣の非和声音に移動し、次の和音の和声音に跳躍する音。
文章で書くととってもわかりにくいですね…。こういうやつです。


♪逸音
 この例では、最後のG音は逸音かどうかわかりませんよね。

これが逸音になるためには、たとえばこのあとどんなふうに続いていったらいいでしょうか?

 

 

 先取音(せんしゅおん)

 

和音が変わる直前に、次の和音の和声音を先取りして鳴らした音。


♪先取音

 

 保続音(ほぞくおん)

 

ハーモニーが変化しても、ある声部に同じ音がずっと伸ばされる音。
低音に出てくると、オルゲルプンクトと呼ばれます。
その場合、和音の性格を決定づけます。


♪保続音(わかりやすく低音をシンコペーションにしています)

ここではソの音(属音)が低音で伸ばされていますね。
すると、上がどう変化しようとも、ここは機能としてはドミナントになるのです。
低音が、ハーモニーの性格を決定づけるのですね。
ドの音(主音)で伸ばされれば、機能としてはトニックになります。
 

 

  装飾と緊張感

 

7つの、非和声音(ほんとうはもっとあるのでしょうけど…)、これを見てみると…
刺繍音、経過音、逸音、先取音、この4つは、装飾的な意味合いが大きいですよね。
保続音は、ハーモニーに変化を与えたり、ハーモニーの性格を決定づけたりします。
残りの2つ…、倚音と、係留音。これは、緊張感の高い非和声音です。
ここが、非和声音から見た、表現の決め手なのです。
緊張感、エネルギー。
なんだか長くなったので、明日は実際の楽曲を使って、非和声音を解説してみたいと思います。

さて、今取り組んでいる楽曲、どんな非和声音があるでしょうか。