演奏のヒントになる非和声音などの話(2) | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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昨日はいろいろな非和声音について書いてみましたが、きょうは実践編です。実際の楽曲も用いて見ていきたいと思います。昨日書いたように、特に大切な非和声音は倚音と係留音です。どう演奏したらいいのでしょうか。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  倚音と係留音

 

倚音と係留音は、緊張感が高い非和声音です。
強拍が非和声音になっているところが共通していますね。
不安定、緊張感、焦らし感。
緊張感やエネルギーは、音楽の表現の決め手です。

それぞれ楽譜の下の♪のリンクから音を聴けます。

♪倚音

この楽譜の倚音は、それぞれの小節の各1拍目と3拍目が緊張ポイント。

それが、2拍目、4拍目で解決する。

緊張ポイントを少し強調したり重心を置いたりして解決が見えるようにすることも…

どの程度やるのかは、いろいろです。

なにしろ大切なことは、響きを感じてみること。

 


♪係留音
この楽譜の係留音は、それぞれの小節の2拍目から始まって3拍目が緊張ポイントですよね。

それが4拍目で解決する。こちらも倚音と同じですね。
緊張のとこに重心を置いて解決が見えるようにしたりすることも…
緊張→弛緩、不安→安心、不安定→安定、焦らし→ほっとする
ここに、表現が生まれますよね。
 

 

  緊張と弛緩

 

これはハーモニーにも言えることです。

緊張感が高いのはドミナント。
それがトニックに解決する。
それを繰り返して、音楽は進んでいきます。
メロディや、いろいろな動き、そこにどんなハーモニーがついているのかを知ることは、
だからとても大切なことなのです。
音楽は、緊張と弛緩。エネルギーの出し入れ。
 

 

  係留音

 

それでは実際の楽曲を使って、まず係留音から先に見ていきますね。

どの楽曲を取り上げようか迷ったのですが、バッハの有名なG線上のアリア。

その、たとえば最後の部分。

 

 

赤い○が、係留音ですよね。

その部分を取り出してみました。

左が、係留音なし。右の係留音ありとくらべてどうでしょうか。

楽譜の下の♪のリンクから音を聴けます。

 

♪係留音なし  ♪係留音あり

 

係留音は拍の裏から始まって、次の拍の頭、ハーモニーが変わったところで非和声音になる。

赤丸のところが、緊張ポイント。それが、次の拍で解決する。

その緊張感→解決を感じること。 

だから、係留音は抜いてしまってはダメです。緊張感が高まるのですから。

その緊張が、解決して緩む。

緊張→弛緩→緊張→弛緩。
音楽は、緊張と弛緩の繰り返し。エネルギーの出し入れ。
それが、表現、音楽的な演奏への手がかりになります。

 

 

  倚音

 

次に倚音を見てみましょう。
どんな曲を使おうか迷ったのですが…

手前味噌で申し訳ないのですが、稚作『しおかぜのマーチ』で見てみますね。
ちなみに楽曲の音は、こちらにあります。

 

 

イントロが終わって、最初の部分…

 


♪しおかぜのマーチ

メロディの青い○は、経過音。

そして赤い○が、倚音です。
6小節目の内声に出てくるのは、ハーモニーの中の倚音といえると思います(B音)。

緊張感、それが和声音に解決する響きを感じること。

それが、音楽的な演奏をつくるヒントです。

ハーモニー的な側面からも少し書くと…

2小節目の倚音は♭9th。4小節目はsus4、6小節目はaug。

 

次の楽譜は、前半4小節を非和声音なしにしたもの(アウフタクトは省いてあります)。

元とくらべてみましょう。

 


♪しおかぜのマーチ非和声音なし

 

 

  エネルギー

 

さらに、しおかぜのマーチの音価、音符の長さに注目してみると…

*』の付いている音(2小節目と4小節目)。

付点音符になっていますよね。

この音は、次の拍(2拍目)の音符から音価を半拍分奪い取っていると言えると思うのです。
均等ではない分、それだけエネルギーを持っている音なのです。
この2ヶ所以外にも同様の個所がありますよね。倚音ではないですが…
そのエネルギーを感じることも、表現につながります。
 

 

  シンコペーション

 

次に、シンコペーションです。

楽譜に青でシンコペーションと書いてある箇所。6小節目から7小節目。
これ、もしシンコペーションではなかったら、こうなりますよね…




これが、元の楽譜のようにシンコペーションになるということはどういうことなのか…

シンコペーションとは、何なのか…

これは、その音符が前の音符から音価を半拍分奪い取っているとも言えると思うのです。

だから、やっぱりその分、エネルギーを持っている。

そのエネルギーが、アクセントになる。

(シンコペーションの音は原則アクセントで演奏しますよね)

あるいは、本来は次の拍のあたまにあるべきであった音が、半拍前に来ている。

前のめりになっているとも言えるのかもしれません。やっぱりエネルギー。

それとも、拍の頭にあるべき音が半拍間エネルギー充填されて裏で解放された?

それもやっぱりエネルギーですよね。

 

非和声音の話からは少し逸れましたが、なにしろ大切なのは、

音のエネルギーを感じることだと思うのです。

緊張と弛緩、エネルギーの出し入れ。

自分の曲で手前味噌でしたが…

ちなみに、書くときにこんなことを考えていたわけでは全然ありません(汗)。


さて、今取り組んでいる楽曲、どんなエネルギーの変化がありますか。