参考演奏は多い方がいい? | フクロウのひとりごと

フクロウのひとりごと

愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
おもに吹奏楽の活動に役立つ情報を発信中!
バンド指導をご希望の方はお気軽にご連絡ください。

たとえば吹奏楽コンクール課題曲、近年では色々な団体が演奏したり動画を出したりしています。そうなるとそれらの真似をするばかりで、一般の演奏に個性がなくなったという声がありました。さてどうなのでしょうか。

こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。

 


 

 

  参考演奏が多いから?

 

参考演奏がたくさんある、そして簡単に聴ける、と、
安易にその真似をするばかりで個性がなくなった…
みなさんは、そう思われますか。
たしかに、参考演奏の猿真似、誰かの言いなり、鵜呑み演奏もあると思います。
でも、そういう『表面だけを真似た演奏』って、どこか不自然な気がするのですよね…
そして、もしそういう演奏が増えているのだとするなら、その原因は、
参考演奏が多すぎるからではないように思うのです。
美味しい料理が世の中に増えたら、肥満や成人病の人が増えるのでしょうか。料理のせい?
そう言っているのと同じですよね!
 

 

  むしろたくさん聴くことで

 

いろいろな演奏をたくさん聴くことは、むしろいいことだと思うのです。
これはもちろん、課題曲に限らずね。
自分の中にないものは、決して出てはきません。
演奏って、理屈や仕向けることで出来るものではないと思うのです。
自分の中にあるから、その表現や音、流れや個性が出てくるのです。
そうでなければ、生きた演奏にはなりなせん。
生きた演奏だからこそ、魅力的に響くしコンクールでも勝てるのです。そして、
いろいろな『音楽の引き出し』を自分の中につくるためには、まずは聴くことが不可欠です。
そういう意味では、いろいろな演奏が増えたことはむしろいいことだと思うのです。
 

 

  表面ではなく

 

いろいろな演奏を聴くときに大切なことは…
その表面を真似るのではなくて、音楽の語法や流れ、そういうものを聴くのです。
ここでこのぐらい rit. して、ここはアクセントでこの音にビブラート…
そんな些末なことをそのまま真似るのではなく(それでは取ってつけたようになるだけです)、
その表現をしたいのであれば、それが自分の中から自然に出てくるようにすることです。
そのためには、ひとつの演奏だけを聴いていたのでは出来ないものだと思うのです。
表現は、こう言われたから、とか、理屈や作為で出てくるものではないと思うのですよね。
やっぱり、いかに引き出しを持っているか、だと思うのです。
 

 

  自分で読み込み

 

楽譜は、自分で読み込む。
音符以外にもいろいろな情報が書いてありますよね。
アーティキュレーションや楽語、速度標語など…
それらをただ表面的に、『こう書いてあったから』そうするのではなく、
それはどういう意味があるのか、作曲者はなぜそう書いたのかを考えるのです。
楽譜を読み取るとはそういうことです。
もちろんそのためには、ある程度の音楽的な知識も必要です。
中高生のみなさんにはちょっとハードルが高いかもしれませんね。
もしわからなければ、先生やいろいろな人に聞きましょう。
とはいえ、すべてをわかるなんていう人はきっといないと思います。
もちろんぼくにも、わからないことは少なくないです。
 

 

  どれとも違う

 

合奏から出てくる音楽は、最終的には指揮者の音楽です。
楽譜から読み取り、その意味を汲み取り、イメージをふくらませてつくった音楽は、
数あるほかの演奏のどれとも、少しづつ違うものになるのだと思います。
どの演奏を聴いても、どれもどこか違う、そういう音楽が、自分の中に出来る。
そうなるものだし、そうあるべきだし、そうでなければいけないように思うのです。
曲のイメージをつかむ段階では参考演奏や他人の考え方や捉え方は参考になります。
でも、自分の音楽をつくっていく段階においては、
ただの真似ではなく楽譜から読み解いていくことが必要です。

食事でも偏食せずにいろいろ食べることが栄養バランス的に大切ですよね。
そういう意味では参考演奏がいろいろあることは、むしろいいことだと思うのです。

さて、参考演奏、どんなふうに聴きますか。