一度失ったら二度と取り戻せないもの | フクロウのひとりごと

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愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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昨年夏、特に6月~7月あたり、世界が、なにかをあきらめたように感じられたのです。
でも世の中には、一度失ったら二度と取り戻せないものだってあるのです。
 
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家、吹奏楽指導者の福見吉朗です。
 
 

小学校の吹奏楽部

以前、10年近く指導していた小学校の吹奏楽部がありました。
月に2回程度しか行ってなかったのですが、ぼくが行く日はもっぱら合奏です。
ほぼ合奏指導ばかり。
それが、とっても気持ちのいい、いい音を出すのですよ。
合奏では曲のことばかりで、技術的なアドバイスは、どうしても必要なものだけを時々伝える程度。
なのになぜ、あんなに鳴るのか…
顧問の先生は、管楽器や打楽器のことなんかわからない先生で、指揮もあまり振れない人…
「ぼくのほかに、誰か指導に来ていますか?」と訊いたら、「いいえ福見先生だけです」って…
 

あたりまえのように…

たとえば合奏していて、ぼくが楽譜を吹いて聞かせることもあったりするのですが、
次の時にはそれをトロンボーンの子が真似して吹いているのです。
それはでも、トロンボーンのパートではないのです。サックスとかクラリネットのパートだったりする…
けっこう難しいことを吹いているのに、それを…
また、ある時など、ホルンの子がhi-Fをパーンと…
それも素直ないい音で、ほんとうに、まるで当たり前のことのように…
 

気持ちいいサウンドで

子どもたちがパートで合わせているのを聞いたこともあるのですが、
ほんとうに素直な音で気持ちよくサウンドするのです。
『音程なんかどうだっていいじゃん』って思えるような音。もちろん、いい意味でね。
振っていても、合奏全体がまるでひとつの大きな大きな生きもののように感じられましたよ。
ほかのバンドの3倍は、振るのにエネルギーが必要でした。
なにしろ、そんなバンドでした。
 

ノウハウなんかない

どうしてあのバンドはあんな音が出たのか、あんな演奏が出来たのか…
ぼくは月に2回行くだけ。練習時間も1時間足らず。普段も毎日練習があるわけじゃない。
しかも、楽器の技術指導なんてほとんどしていません。
ほかに指導する人もいない。なのに、なぜ…
それは、いつでもパートで一緒に練習しているからです。
ノウハウや手順じゃない。ただ、4年生から6年生までいつもパートで一緒に練習する。
ただそれだけなんです。
でもそれって、こんなにも大きなことなのですね。
 

先生がいなくなって…

さて、このバンド、顧問の先生の移動かなにかの都合で、一時活動が休止になったことがありました。
1年間くらいでしょうか。
その後、保護者の希望などもあって活動再開。でも…
もう、見る影もなかったですね。それから1年経っても2年経っても…
初めて楽器にさわる、あるいは、1年ぶりに吹く。
なのに、一緒に練習してくれる先輩も上級者もいないのです。
それじゃあいつまでたっても吹けない。
「とにかくまずパートみんなで一緒に練習する習慣をつけなさい」と言ったのですが、
それすら出来なかったですね。バラバラです…
 

受け継がれて行くもの

ただ、一緒に練習するだけなのです。ただそれだけ…
でも、そこで連綿と受け継がれてきたものって、ほんとうに絶大なのです。
そしてそれは、一度途切れてしまったら、もう二度と取り戻せない、戻っては来ない…
それを、そのことの大きさを、ほんとうに痛感した出来事なのでした。
 

絶対に守っていかなければならないもの

今、自由に活動が出来ない状況が続いていますよね。
でも、ほんとうに大切なものは死守しなければならない。途切れさせてはいけないのです。
合奏は出来ないかもしれない。でも、パート練習は出来ますよね。
いちど失ったら二度と取り戻せないもの、それは、なんとしてでも守らなければならない、
そんなふうに思うのです。
 
さて、大切なもの、見えていますか。