あなたは楽器を演奏するとき,身体を動かす方ですか,それとも動かさない方ですか。
でも,動くといっても,なんだかいろいろあるようですね。
こんばんは。
トロンボーン吹きで作編曲家,吹奏楽指導者の福見吉朗です。
動きが気持ち悪い?
ツイッターで山下篤氏が,こんなことを書いてみえました。
山下篤/小澤篤@Red_Tuxedo某コンクールで某審査員氏が某団体に対して「動きが気持ち悪い」と書いているのを見たことがあるが拍手を送りたい。かなりの審査員たちがいろんな団体にこれ書くの我慢してるんじゃないかな?。
2018年05月18日 00:51
ぼくもコンクールで見たことがあります。
まるで踊っているみたいにウネウネ動きながら演奏する団体。
とても違和感があります。
あれって,先生がああいうことをやらせるのでしょうか。誰の指示?
ツイッターで訊いてみた
そう思って,ツイッターで訊いてみました。
有効投票数349票。
『もっと動いて!』,『身体を動かして!』という指導を受けたことがある人の割合,予想外に多い!
なんと4割以上の人が,そういう指導を受けたことがあるんです。驚きました。
そして,その指示の過半数は顧問の先生からの指導なのです。
全体の2割強。
5人に1人は顧問の先生から『もっと動いて!』という指導を受けるのですね!
動く人,動かない人
演奏しながら身体を動かすこと,これ,いいことなの? 悪いことなの?
実際,よく動く人もいれば,動かない人もいます。
たとえばフランク・ロソリーノなどは,超絶フレーズを吹きながら,でもほとんど動きませんよね。
こんなにダンサブルな音楽を演奏しているのに,
カメラがどのアングルからアップで撮ってもほとんど動きません。
逆に,たとえばライエンは…
けっこうよく動いていますね。
これはもちろんジャンルの違いではなくて,クラシックにもジャズにも,
よく動く人もあまり動かない人もいます。
動きはどこから来るのか…
では,動く人はどうして動いているのでしょう。それは…
音楽した,音で表現した結果として,自然に身体が動く。
だから,動きを見れば,どんな音楽を感じているのかが垣間見えるとも言えます。
拍に合わせて動いている人は,拍しか感じてないんだな,と知れてしまう。
なにしろ動きって,表現の副産物なのですよね。
動かない人は,副産物をあまり生成しない? 効率がいい? のかもしれません。
『動き=表現』ではない
動きって,表現の副産物,表現するときに,自然発生したもの。
でも,動き自体は表現ではないのです。
(もちろん演出で動きをつける場合は別です。でも,それも音楽とは別のものですね)
表現したから結果的に動くのであって,動いたら表現できる,では決してないのです。
動きは音楽から出て来るもので,動くこと自体は,表現することではないのです。
コンクールなどでたまに見る,座奏なのに異様に動きが多い団体って,
失礼ながら,音楽的には陳腐な場合がほとんどです。
音で表現できないから動きでアピールするのでしょうが,むしろ逆効果で,
残念ながら悪印象しかありません。
『もっと真摯に音楽と向き合いましょう』と言いたくなってしまいます。
動きから見えるもの
動きを見ていると,いろいろなことがわかります。言い換えれば,バレてしまいます。
音楽と関係のない動きをしていると,見ただけで,『音楽ができてないんだな』とバレてしまいます。
拍に合わせて動いていると,『あぁテンポに自信がないんだな』とバレてしまいます。
また,表現した結果として動く人も,どんなふうにその音楽を感じているのかがバレてしまいます。
だからといって,動かない人=音楽を感じていない人,ではありません。
見えない内側で,すごい音楽を感じているのかもしれません。それは演奏でわかりますね。
打楽器などは,音を出す,ビートやテンポを感じるプロセスが,動きからもわかってしまいます。
管楽器でいちばん動きが大きい楽器は,きっとトロンボーンでしょう。
なにしろ四六時中,右手を動かしているのです。時には数十センチも。
原始的な楽器だなぁ,と思いますが,ここからも技量の一端が見えてしまいますね。
動きがマイナスになる場合も
あるバンドで合奏していて,どうもリズムやピッチの乱れが気になる。
見ていると,特にピッチは,身体の動きが影響しているように思われました。案の定,
「動くのをやめてごらん」と言ったら,安定した演奏になりました。
また,動きの中でも,拍に合わせて動く動きは,かえってテンポが乱れる原因になりますね。
マーチのあとうちなどでこれをやる子をよく見ますが,必ず,重たくなってしまいます。
動きが演奏にマイナスになっている場合も,けっこうあるのです。
『動かない=固定』ではない
上に書いたように,「動くのをやめてごらん」という指示をすることは,あります。
でもそれは,『動かないように固定する』ということではありません。
固定なんかしないで! ただ,動く必要がないだけなのです。
そして…
動くことが,いいわけでもない。
動かないことが,いいわけでもない。
動くこと自体は,表現ではない。
動きは,音楽したことによって副産物的に出てくることもあるもの,です。
あなたは動く人ですか? 動かない人ですか?