「プロヴァンスの風」の… | フクロウのひとりごと

フクロウのひとりごと

愛知県在住のトロンボーン吹き、作編曲家、吹奏楽指導者。
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マーチ、行進曲って、トリオで転調するのが一般的ですよね。
フラットが1つ増える(下属調に行く)曲が多いですが、
中には『ラデツキー行進曲』のように、シャープが1つ増える (属調に転調する) 曲もあります。

さて、ところが今年の吹奏楽コンクール課題曲4、
マーチ「プロヴァンスの風」のトリオは…
D-moll(ニ短調)から、As-dur(変イ長調)へ転調
フラット1つからフラット4つへ。
トリオの直前はニ短調ではなくニ長調になっているけれど(ちなみにこういうのを『ピカルディの三度』といいます)、
だとしても、シャープ2つからフラット4つへ…
とっても遠く(遠隔調)へ転調しているんですね。


ところで、和音ってだいたい3つに分類できるって、知ってますか?
トニック(T)サブドミナント(S)ドミナント(D)の、3つ。

トニックは、なんですね。安心安定
サブドミナントは、家から外に出て、解放感
ドミナントは、家に帰りたい!っていう和音。緊張感
これらが組み合わされて、旅に出かけて行ったり、また家に帰ってきたりをいろいろ繰り返すのが、和音(コード)進行。
家に帰ってこないことだってあります。別宅もあります。


さて、その中で、ドミナント。
いちばん緊張感が高まるところです。
どうしてドミナントって、家(トニック)に帰りたいのでしょうか?

ハ長調でいったら、代表的なドミナントはG7。ソ・シ・レ・ファの和音。
この中で、シと、ファ。これ、ピアノとかで同時に鳴らしてみると…
なんだか不安定な感じがしませんか?
こういう音程を『減5度』(増4度)って言うんですが、
この不安定な音程が、シ→ド、ファ→ミってそれぞれ動いて、
安定な『ド・ミ』っていう音程(長3度)に行こうとする。
これが、ドミナントの、『家に帰りたい』っていう性質なんです。
ピアノで弾いてみましょう。『シ・ファ』→『ド・ミ』
こういう動きを『ドミナントモーション』といいます。
G7→C。『ソ・シ・レ・ファ』→『ド・ミ・ソ』。


さて、ここからちょっとだけ難しくなります。
G7の中には、不安定な音程シとファがありました。
でも、じつは、同じ『シとファ』っていう音を持っているドミナントが、世の中にもう1つあるんです。
わかりますか?

D♭7!
レ♭・ファ・ラ♭・シ(ド♭)です。
弾いてみましょう。ちゃんとセブンスコードでしょ。
このドミナント、普通ならG♭(ソ♭・シ♭・レ♭)に行くのですが…、
でも、ファとシ(ド♭)がありますよね。
ということは、 D♭7からC(ド・ミ・ソ)に行くのもアリなんです!
面白いでしょ!
弾いてみましょう。『レ♭・ファ・ラ♭・シ』→『ド・ミ・ソ』。
なんだかかっこよくないですか?
こういうのを、『裏コード』(Substitute Dominant)なんて言ったりします。


で、プロヴァンスの風に戻りますよ。
トリオの頭は、ニ短調のドミナントのAのコード(ここではA7ではなくAですが…)。
こいつは通常、DまたはDmに行くのです。が…
これが、次の[G]のあたまでA♭になる。変イ長調に行く
これって、上に書いた、 D♭7からCに行くのとおんなじですよね!
裏に行くわけです。

ここって、こういう転調なんですね。
「家に帰りたい」って言ってたら、異次元ポケットに行っちゃった感じでしょうか…