狭庭への径を千両径と為す
「雲の峰」2024年1月号青葉集掲載。
千両は山地に自生するが、その実の可憐さから鉢植えとしても好まれる。似たような名前の植物に万両があるが、千両は上向きに、万両は低いところに下向きに実を付けるという違いがある。我が家と隣家のちょうど境目に千両が生えていて、この時期になると赤や黄色の実を付ける。それが裏庭に向けて列を為している姿が毎年見られる。裏庭への細い通路が千両の実で満たされている姿を「径」に見立てて詠んだ句。
今回紹介した「径」の他に、「みち」を表す漢字は数種類ある。「現代俳句表記辞典」によると、それぞれちゃんと意味の違いがあるという。
道:広く人の往来するところ。大小を問わない。または人の踏み行うべき「みち」の意。
路:歩くみち。大小を問わない。「道」と違って抽象的な事には用いない。
径:こみち、ほそみち
途:小さいみち。または目的に行きつく過程にも用いられる。
これを知っているだけで、確かに表現の幅は大きく広がる。それと同時に、日本語の表現の多様性、難しさを改めて感じる。果たしてこの句で謳われている「みち」は「径」でいいのか。私としては「細いみち」のイメージで詠んだので、恐らくこの字だろうと思って用いたが、読む人によっては違うイメージを持つかもしれない。自分が表現するだけではなく、人がどう感じるかを考えて、言葉を選ぶ必要がありそうだ。
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