あきつ飛ぶ背ナに暴悪大笑面

(渡岸寺十一面観音)

 

「方円」2023年1月号円象集掲載。

滋賀県長浜市高月町にある古刹・渡岸寺。ここには国宝の十一面観音が安置されている。十一面観音は、その名の通り11の顔を持つ観音様で、本来の顔に加えて前3面が慈悲の顔、左3面が憤怒の顔、右3面が歯を見せてほほ笑む顔。頭頂部1面が仏面。そして後ろの1面が暴悪大笑面。大口を開けて歯を見せて大笑いしている。これは悪行を笑い飛ばして善行に導く面とされているが、その表情は異様そのものだ。外は実りの秋。田んぼに蜻蛉が飛ぶ、実に平和な風景が広がる。しかし今の世の中は何かと世知辛い。長閑な光景の中で、そんな世の中を笑い飛ばすこの顔。この対比が面白くて詠んだ句。

この顔が世間のあらゆる悪行を笑い飛ばすのだとしたら、ネット界隈で「笑ってごまかすつもりか」とか「歯を見せて笑うなど不謹慎」などと攻撃され、いわゆる「炎上」という事態になることも予想されるのが、今の世の中の恐ろしいところ。それを気にしすぎて、おちおち喋る事も出来ない。「物言へば唇寒し秋の風」を地で行くと言ったところか。この諺の本来の意味は「人の悪口を言うと後味が悪くなる」という事。今の世の中、気軽にSNSに挙げた言葉が、本人にそのつもりがなくても、人によっては悪口に思えてしまう。それを不特定多数が拾い上げて拡散し、悪口として定着してしまうという事だろう。口から発する言葉は、発する前に慎重であるべきだというのが大前提だが、必要以上に委縮するのは違うと思う。まずは己の確固たる考えを持つ事。これが大切ではないかと思う。自戒を込めて。

 

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