親子・兄弟間の殺人事件がテレビや新聞のニュースになることがあります。それらについて、先日のテレビで、男性タレントが「ちにくの争い」と言いました。「ちにく」は、多分「血肉」のことでしょう。「血肉」なら、読み方は「けつにく」です。
熟語において、音読み〔漢語〕の部分を訓読み〔和語〕に換えて表現することを、私は「和語への転換」と称して、過去にいくつかの例〔代替、肉汁、裏面など〕を取り上げています。「和語への転換」が起こるのは、その熟語の本来の読み方を知らない場合や、知っている場合でも、音読み〔漢語〕より、聞いて意味が分かり易い訓読み〔和語〕をしてしまう現象、と推測しています。「血肉(けつにく)」を「血肉(ちにく)」と言うのも、「和語への転換」と言えるでしょう。
念のため国語辞典を調べてみると、見出し語は「けつにく【血肉】」が主です。字義説明の中で、 ‟「ちにく」という言い方もある” ことを記述している辞典もあります。「けつにく【血肉】」という見出し語のほかに、「ちにく【血肉】」という見出し語を掲げている辞典もあります。この場合は、‟「血肉(けつにく)」の湯桶読み” とか、‟「けつにく(血肉)」に同じ” といった字義説明の後に、それぞれ見出し語「けつにく【血肉】」への誘導を図っています。
『言葉の作法辞典』には、以下のような部分があります。
「○ けつにく
× ちにく」
「「血」も「肉」も音読みして「けつにく」という。ちなみに「肉」には訓読みがない。」
〔以下、国語辞典を抜萃して引用させて頂きました。用例中の、見出し語を表す記号〔 ー 〕は文字表記に変えさせて頂きました。下線は引用者です。〕
『広辞苑』第七版〔2018〕
けつにく【血肉】
血と肉。転じて、親子兄弟。血族。骨肉。
『デジタル大辞泉』〔1995〕
けつにく【血肉】
1 血と肉。生身のからだ。ちにく。
2 血縁のごく近いもの。肉親。骨肉。ちにく。
『明鏡国語辞典』第二版〔2011-2016〕
けつにく【血肉】
〔名〕
1 血と肉。また、肉体。
2 親子・兄弟など、血のつながりの近い一族。肉親。骨
肉。
「血肉の争い」
『言葉の作法辞典』〔学研、2003〕
【血肉を分けた兄弟】
○ けつにく
× ちにく
「血肉」は、血と肉。転じて、親子兄弟など、血のつながった関係にある人のこと。「血」も「肉」も音読みして「けつにく」という。ちなみに「肉」には訓読みがない。
『デジタル大辞泉』
ちにく【血肉】
⦅「血肉(けつにく)」の湯桶読み⦆⇒ けつにく(血肉)
『明鏡国語辞典』第二版
ちにく【血肉】
〔名〕
「けつにく(血肉)」に同じ。⇒ けつにく
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三 月 の 春
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国営武蔵丘陵森林公園
2024/3/16
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