清音「まぬかれる」と 濁音「まぬがれる」 |  ときしらずのブログ◎迂闊な話         

 ときしらずのブログ◎迂闊な話         

  「言葉」につての雑感。花や風景の写真。  



   
  

動詞「免れる」のことです。「災難を免れる」「不謹慎の誹りを免れない」などの用例があります。


ところで、この「免れる」の読み方は清音の「まぬれる」か、濁音の「まぬれる」か。迂闊な話ですがずっと疑問のままでした。思い立って国語辞典を開いてみました。

 

見出し語として、『新編 大言海』は文語体で清音「まぬる」、『角川国語辞典』『広辞苑』も清音「まぬれる」、『デジタル大辞泉』などは濁音「まぬれる」になっていました。しかしながら語義の説明によれば、清音「まぬれる」、濁音「まぬれる」のどちらでもよい、というのが結論のようです。

 

ただ、発行年の古い『新編 大言海』の見出し語が濁音「まぬる〔文語体〕」ではなく清音「まぬる〔文語体〕」であるということは特記しておきたい、と思いました。清音「まぬれる」から濁音「まぬれる」への変化は何故か。それは不明です。

 

辞典により、品詞の記述がまちまちですが、ここでは不問とします。

 

………………………………………………………………………………

 

〔以下、国語辞典を抜萃して引用させて頂きました。用例中の、見出し語を表す記号〔 ー 〕は文字表記に変えさせて頂きました。下線は引用者です。〕

 

以下の辞典は、清音「まぬる〔文語体〕」、「まぬれる」が見出し語です。『広辞苑』の字義説明の中では ‟「マヌレル」ともいう” ことが記述されています。

 

『明鏡国語辞典』は、清音「まぬれる」の見出し語を設けてはいますが、「⇒ まぬがれる」という記述で濁音「まぬれる」への誘導を図っています。『新編 大言海』は、‟「マノガル」という言い方もある” ことを記述しており「まのがる」の見出し語も設けています。

 

興味深いのは、二番目の『明解国語辞典』です。すなわち、清音「まぬれる」、濁音「まぬれる」の両方が見出し語になっていて、清音「まぬれる」の語義説明として ‟まぬれる” とだけ記述されています。つまり濁音「まぬれる」へ誘導する表記になっているのです。そこで、濁音「まぬれる」を見るといきなり ‟〔正しくは「まぬれる」〕" とあります。‟正しいのは清音「まぬれる」だけれども、現在の基本的表現は濁音「まぬれる」である” という意味を表していると思われます。

『新編 大言海』〔冨山房、昭和57年4月。『大言海』初版は昭和10年8月〕

まぬかる(他動、下二)

|免| 〔眼逃(マノガ)る、又、閒逃る、ノ轉ト云フ、或ハ、閒脱(マヌカ)ル、ノ義か〕 逃る、中ラヌヤウニ避ク。マノガル

 

『明解国語辞典』〔三省堂、昭和42年3月

まぬかれる【免(か)れる】(他下一)まぬがれる

 

『角川国語辞典』〔角川書店、昭和54年1月〕

まぬかれる【免れる】他下一

1 のがれる。「災害を免れる」 2 避けて事にあずからない。「当番を免れる」「責任を免れる」

 

『明鏡国語辞典』第二版〔大修館書店、2011-2016〕

まぬかれる【免れる】

〔自下一〕

⇒ まぬがれる

 

『広辞苑』第七版〔岩波書店、2018〕

まぬかれる【免れる】

〔自他下一〕

(古くは自動詞、今は他動詞にも用いる。マヌガレルとも) 好ましくない事柄や災いなどを、こうむらずに済む。のがれる。「災難を免れる」「零敗を免れる」

 

以下の辞典は、濁音「まぬれる」が見出し語です。字義説明の中で ‟「まぬれる」ともいう” ことが記述されています。用例は末尾に引用させていだだきました。

『新編 大言海』〔冨山房、昭和57年4月。『大言海』初版は昭和10年8月〕

まのがる(動)|免| まぬかる(免)ニ同ジ。

 

『明解国語辞典』〔三省堂、昭和42年3月

まぬがれる【免(が)れる】(他下一)正しくは「まぬかれる」一 のがれる。  にげる。 三 その場をはずす。

 

『デジタル大辞泉』〔小学館、1995〕

まぬがれる【免れる】〔ラ下二〕「まぬかれる」とも⦆ 身に受けては好ましくないことから逃れる。また、避けてそれにかかわらない。

 

『明鏡国語辞典』第二版〔大修館書店、2011-2016〕

まぬがれる【免れる】

〔自下一〕

好ましくない事態や災難からのがれられる。まぬかれる

 

『新明解国語辞典』第七版〔2012〕

まぬがれる【免れる】

(他下一)

好ましくない物事に出あわないですむ(ようにする)。

まぬかれる

 

以下は、各辞典における「免れる」の用例です。

『デジタル大辞泉』

「戦火を免れる」「責任を免れる」

 

『明鏡国語辞典』第二版

「戦火[延焼]を免れる」「責任を免れる」「すんでのところで死を免れる」「放置すれば非常識のそしりを免れない」

 

『新明解国語辞典』第七版

「死(責任)を免れる / 軽率のそしりを免れない〔=受けないわけにはいかない〕」

 

 ■ … ■ … ■ … ■ … ■ … ■ … ■ … ■ 

 

 

三月の空、早咲きチューリップ など

+++++++++++++++++++++++

〔国営武蔵丘陵森林公園、2024/3/16〕

 

 

 

 

◎アセビ【馬酔木】(ツツジ科)。

 

 

 

◎ミスミソウ【三角草】キンポウゲ科。???

 

 

◎カタクリ【片栗】(ユリ科)。

 

 

大園路から公園庭園樹園へ。こもれび花畑の坂道を上ると、早咲きチューリップの花畑です。

 

チューリップ【tulip】(ユリ科)。冷蔵処理した球根を植えることで春に咲きます。早咲きチューリップです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

===========================================

 

◆当ブログにおける文章・画像の無断転載はご遠慮ください。

===========================================


「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない  宮沢賢治」

 

===========================================