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希望が未来への力

どうしても自分を変えたい!

でも、変わらないんです……

どうしたらよいのか???

そんな方々にぴったりのブログです!!

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私は変わらぬ夜を過ごしていた。

店に来る殿方達にお酒を注ぎながら、母を殺した右手にアゲハ蝶のタトゥーをした男を見つけようとしていた。


しかし、こんな身の上話を上品なお酒の席で話すことが出来るわけなかった。そんな私を遠くから見つめている視線がある。


彼は私を手招きすると、私にこう言ったのだ。

貴女の瞳の奥に深い悲しみが見える。私に話してくれないか?

私は、その客の好意を受け止め、他の客から離れたところに誘い、今までのすべてを話した。

彼は何も言葉を返さず、何かを確信したように胸のポケットから一枚の写真を取り出すと、彼女に渡し、店を出ていった。


そこに映っていたのは、一人の大きな瞳の髪の長い女性。

あとで、その女性が紫牡丹であることを知る。


そして、この一人が見ていた運命の重さを知る時が、やがて訪れるのだ…


「闇に咲く黒百合」より

亡き父の手紙と共に歩んでいた私は、25歳で結婚して、娘を授かった。夫には彼女に話せない秘密がある。実は、会社が不景気で借金が膨らんで、闇金にまで手を出していたのだ。


私は産まれたばかりの赤子を抱いて、夜の新宿を歩いていた。


その頃、夫は闇の組織と共にビルの屋上にいた。

もう、金を返せないなら、その銃で妻かガキかどちらかを撃て!

銃を持たされ、銃口を妻に向けられる。

夫に妻と子供を撃つことなんて出来るわけがない。

では、手を貸してやろう。

アゲハ蝶のタトゥーがある右手を伸ばして、震える夫の指に重ねた。サイレンサーがあるので銃声は聞こえないが、妻の胸を撃ち抜いた。


たまたま、別のビルの窓からその光景を見ていた51歳の紫牡丹は、倒れた彼女を見て、これを伝えなければ。

倒れた彼女を見て、紫牡丹の顔が青くなる。

何てこと!あの人の娘がこんなことになるなんて!

紫牡丹は彼女を撃った犯人の特徴を覚えている限り手紙に書きとめ、赤子と若い友人に預けた。


しかし、実の子でもない黒百合を愛せるはずがない。黒百合は家を飛び出し、夜の世界で働く夜の花になっていた。彼女の背中を押していたのは手紙の文字だけだった。


亡き母への復讐。それだけが黒百合の背中を押していたのだ。


「残された黒百合」より

刑務所で亡くなったあの人の娘は、施設の中で育てられたが、犯罪者の娘という刻印を背負った彼女に味方する者はなく、施設を抜け出し、いつの間にか、夜の世界で働いていた。


彼女が23歳の頃、仕事を終えて、もうすぐ夜明けになる新宿を歩いていると、私を呼び止める女性がいた。


かつて、夜の世界で紫牡丹と呼ばれ、有名だった女性である。彼女は、あの人と一緒にいた頃の幼い頃に見た面影を覚えていたのだ。


実は、貴女の父から預かっていたものがあるの。これは、貴女に渡すべきものだと思うの。受け取って下さるかしら?


色あせた封筒を受け取ると、建物の影で紫牡丹に見守られながら、手紙を読んでみた。

読んでいるうちに、指先が震えてきた。

犯罪者になったのは、女性を助けたときにひとりを殺してしまったこと。娘のことを真剣に考えていたこと。犯罪者になっても、一緒に暮らしていた彼女を愛し続けていたこと。


五歳の頃のパパの笑顔しか知らないけど、

パパは人殺しなんかじゃない、誰かの為に自分の人生を捨てた馬鹿な人よ。

流れる涙を止めることが出来なかった。


「あんたは…  本当に馬鹿よ…」


認めたわけでも、許したわけでもない。

でも、この重い一言がすべて愛の物語に終止符を打ったような気がした。

紫牡丹と別れた後、手紙をバッグの底にしまい、私はもうひとりじゃない。ここにパパがいる…


「残されたピエロ」より