亡き父の手紙と共に歩んでいた私は、25歳で結婚して、娘を授かった。夫には彼女に話せない秘密がある。実は、会社が不景気で借金が膨らんで、闇金にまで手を出していたのだ。
私は産まれたばかりの赤子を抱いて、夜の新宿を歩いていた。
その頃、夫は闇の組織と共にビルの屋上にいた。
もう、金を返せないなら、その銃で妻かガキかどちらかを撃て!
銃を持たされ、銃口を妻に向けられる。
夫に妻と子供を撃つことなんて出来るわけがない。
では、手を貸してやろう。
アゲハ蝶のタトゥーがある右手を伸ばして、震える夫の指に重ねた。サイレンサーがあるので銃声は聞こえないが、妻の胸を撃ち抜いた。
たまたま、別のビルの窓からその光景を見ていた51歳の紫牡丹は、倒れた彼女を見て、これを伝えなければ。
倒れた彼女を見て、紫牡丹の顔が青くなる。
何てこと!あの人の娘がこんなことになるなんて!
紫牡丹は彼女を撃った犯人の特徴を覚えている限り手紙に書きとめ、赤子と若い友人に預けた。
しかし、実の子でもない黒百合を愛せるはずがない。黒百合は家を飛び出し、夜の世界で働く夜の花になっていた。彼女の背中を押していたのは手紙の文字だけだった。
亡き母への復讐。それだけが黒百合の背中を押していたのだ。
「残された黒百合」より