3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。


地球の選択 - 二つの未来 

では、「忘れられた道具」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


道長涼は、週末の暇つぶしに地元のフリーマーケットを訪れていた。古びた品物が雑然と並ぶ中で、一つの倉庫に目が留まった。倉庫の奥には、埃をかぶった箱や家具が山積みになっており、涼の探求心をくすぐった。


「何か面白いものが見つかるかもな」


そう呟きながら、涼は倉庫の中に足を踏み入れた。古い書物や壊れた家具を物色していると、一つの奇妙な道具が目に入った。それは見たこともない形状をしており、金属と木材が複雑に組み合わさっていた。


「これは一体…?」


涼はその道具を手に取り、じっくりと観察した。何に使うのか全く見当がつかなかったが、何か不思議な魅力を感じた。家に持ち帰り、インターネットで調べても、同じようなものは見つからなかった。どう使うのかも全く分からないまま、涼はその道具を机の上に置いた。




夜になり、涼はベッドに横たわりながらも、あの道具のことが頭から離れなかった。何度も手に取ってみたが、使い方が分からない。しばらく触っているうちに、ふと脳内に何かが閃いた。


「これをこうして…」


具体的な形は見えないが、言葉にできない形で使い方が理解できた気がした。恐る恐る道具の一部を回し、ボタンを押してみると、カチリと音がして装置が動き出した。何かが始まったのだ。


その瞬間、部屋の中に異様な空気が漂った。涼は何が起こるのかを見守ったが、何も起こらないように思えた。しかし、翌日、奇妙な出来事が続発し始めた。部屋の中の物が勝手に動き出し、棚の本が一人でに落ちたり、時計の針が逆回転したりした。


「これって…あの道具のせいか?」


涼は恐る恐る再び道具を手に取った。使うたびに部屋の中で奇妙な現象が起こり、その度に涼の脳内には新たな知識が流れ込んできた。その知識は具体的な形を持たず、感覚的に理解できるだけだった。


「一体これは何なんだ?」


涼はますます不安と興味に駆られ、その道具を使い続けた。奇妙な現象はエスカレートし、夜になると家中で異音が聞こえ、家具が勝手に動き回るようになった。涼は恐怖と興奮の狭間で過ごす日々が続いた。


ある日、ふとした瞬間に涼の脳内に新たな情報が流れ込んできた。その情報は、あの道具の作り方だった。


「これを作れってことか…」


涼は半信半疑ながらも、その情報に従って新しい道具を作り始めた。複雑な手順を経て、数日後には全く同じ形の道具がもう一つ完成した。


新たに完成した道具を見つめながら、涼の心は奇妙な達成感と不安で満たされていた。何のためにこの道具を作る必要があったのか、全く理解できないまま、涼はその道具を手に取った。


「これで何をすればいいんだ…?」


そう呟くと、再び脳内に新たな情報が流れ込んできた。今回の情報は、この新しい道具の最初の操作方法だった。涼はその手順に従い、道具の一部を回し、ボタンを押した。すると、再びカチリと音がして装置が動き出した。


「一体何が起こるんだ…?」


その瞬間、部屋の中に不思議な現象が起こり始めた。照明がチカチカと点滅し、空気がピリピリとした緊張感で満ちた。涼は部屋の中央に立ち、何が起こるのかを見守った。


突然、部屋の中の物が一斉に動き出し、家具が宙に浮かび始めた。涼は恐怖に駆られながらも、その現象をじっと見つめていた。家具が空中を舞う中、古い道具と新しく作った道具が互いに引き寄せられるように動き出した。


「どうして…?」


二つの道具が近づくと、その瞬間、強い光が部屋を包み込んだ。涼は目を覆い、光の中で何が起こっているのか見えなかった。しかし、光が消えた時、部屋は再び静寂に包まれ、目の前には何も残っていなかった。


「道具が…消えた?」


涼は目を凝らして部屋を見回したが、二つの道具は完全に消え去っていた。彼はその場に立ち尽くし、頭の中で起こった出来事を整理しようとした。しかし、脳内に流れ込んできたのは、ただ一つの事実だった。


「道具は…過去に移動した?」


涼の頭の中に、あの道具が消えた理由と行き先が一瞬だけ閃いた。道具は涼が最初に見つけた場所、そしてその時間に戻ったのだということだった。しかし、なぜそんなことが起こったのか、そしてなぜ自分がその役割を果たす必要があったのかは全く理解できなかった。


「どうして俺が…?」


その答えは誰にもわからず、涼自身も理解できなかった。彼はただ、無意識にその道具を作り、過去に送り返すという役割を果たしただけだった。これが何のためだったのか、誰がこの道具を作らせたのか、全ては謎のままだった。


涼は再び倉庫に戻り、あの場所を訪れた。そこには再び何も残っておらず、まるで何事もなかったかのように静かだった。彼はただ、あの奇妙な道具が再びこの場所に戻り、誰かがそれを見つけるのを待っているのだろうという考えに至った。


「これで本当に良かったのか…」


涼は自問自答を繰り返しながら、倉庫を後にした。彼の心には、答えの出ない問いが永遠に残ることとなった。


日常に戻った涼は、いつものように仕事をこなし、友人たちと過ごしていた。しかし、あの奇妙な道具のことが頭から離れず、心の奥底に深い疑問と不安が残っていた。夜になると、夢の中で再び道具と対峙することがあり、その度に目を覚ましては冷や汗をかいていた。


ある晩、涼はとうとう耐えきれずに、再びあの倉庫を訪れることに決めた。道具を見つけた場所に戻れば、何か新しい手がかりが得られるのではないかという期待があった。しかし、倉庫の中は変わらず静まり返っており、あの道具があった場所にはただの空きスペースが広がっていた。


「本当にあの道具は消えてしまったんだな…」


涼は呟きながら、倉庫の奥をさらに探索してみたが、新しい発見は何もなかった。心の中で、これ以上この場所に留まっても無駄だという感覚が次第に強まっていった。涼はため息をつき、倉庫を後にした。


しかし、家に帰る道すがら、涼はふと一つの考えに取り憑かれた。もし、あの道具が再びこの場所に戻ってきたのなら、それを見つけるのは次の誰かになるだろう。もしかすると、自分がその誰かになるかもしれない。そして、その時にはもっと多くの謎が解けるのではないかと。


数週間が過ぎ、涼は再び日常に戻ろうと努力した。しかし、脳内に入り込んできた知識の一部がまだ消えずに残っており、それが彼の生活に微妙な変化をもたらしていた。彼は以前よりも鋭い直感と洞察力を持つようになり、仕事や日常生活での些細な問題を解決するのが容易になった。


しかし、それでもあの道具の謎が解けたわけではなかった。ある日、涼は自分の記憶の中で不思議なパターンを見つけた。道具を使ったときに起こった現象や脳内に流れ込んできた知識が、全て一つの目的に向かって導かれているような気がしたのだ。


「この道具の作り方が頭に入り込んできたのは、何かの意図があるに違いない…」


涼はそう確信し、再びその謎を解くための努力を始めた。しかし、手がかりはほとんどなく、ただ一つ確かなことは、道具が過去に戻り、再び誰かの手に渡る運命にあるということだった。


彼は再び道具の作り方を思い出し、再現することを試みたが、どうしても同じ形にはならなかった。何かが欠けている、あるいは自分が理解できていない部分があるのだろうと感じた。その欠けた部分が何なのかを見つけるために、涼はさらに調査を続けた。


ある夜、涼は再び夢の中であの道具と対峙した。その夢の中で、彼は道具の中にある無限の知識と可能性に触れた気がした。そして、その瞬間、彼は一つの真実にたどり着いた。


「この道具は、過去と未来を繋ぐためのものだったんだ…」


その理解が涼の中に湧き上がったが、具体的な意味は依然として曖昧だった。彼がその理解に基づいて何をすべきかはわからなかった。ただ、道具を再び作り直すことができない以上、彼にできることは限られていた。


涼は再び日常に戻り、あの奇妙な道具のことを心の奥に封じ込めることにした。しかし、その影響は彼の人生に深く刻まれ、常にその存在を意識せずにはいられなかった。


彼はこれからもこの謎を解くために生き続けるのかもしれない。そして、いつかまた同じ道具が彼の手に渡る時が来るのかもしれない。その時こそ、涼は全ての謎を解き明かし、真実にたどり着くのだろう。


こうして、道長涼の奇妙な体験は終わりを迎えたが、その影響は彼の心に深く残り続けた。理解できないままの真実を抱え、彼は新たな日々を迎えることとなった。