3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。


地球の選択 - 二つの未来 

では、「雨宿りの奇跡」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


梅雨の季節、空はいつも灰色に覆われ、しとしとと雨が降り続いていた。主人公の健一は、雨の日が嫌いだった。濡れた靴や服が不快で、街の賑やかさも雨音にかき消されてしまうからだ。しかし、彼が住む町には、雨宿りをするための古びた神社がいくつか点在していた。


ある日、健一は学校からの帰り道、突然の激しい雨に見舞われた。傘を持っていなかった彼は、急いで近くの神社に駆け込んだ。その神社は古く、苔むした石段や、長い年月を感じさせる木造の建物が特徴的だった。


健一が本殿の軒下に身を寄せると、突然、冷たい風が吹き抜けた。その風に混じって、どこからともなくかすかな囁き声が聞こえてきた。耳を澄ませてみると、その声はどうやら人の声ではないようだった。


「誰かいるのか?」健一は恐る恐る声をかけた。


すると、目の前に小さな影が現れた。影はゆらゆらと揺れながら、次第に形を持ち始めた。それは、小さな狐の妖怪だった。狐は健一を見つめ、にっこりと笑った。


「こんにちは、雨宿りをしているのかい?」狐は柔らかな声で問いかけてきた。


「え、ええ。急な雨でびしょ濡れになっちゃって…」健一は驚きながらも答えた。


「そうか、それは大変だね。ここは古い神社で、私の住処でもあるんだ。」狐は優しく話しかけてきた。


健一は狐の姿に目を奪われつつも、心のどこかで不安を感じていた。「君は…妖怪なのか?」


「そうだよ。でも、悪い妖怪じゃないから安心して。」狐は微笑みながら答えた。「実は、雨の日にこの神社に来ると、私のような妖怪たちと出会えるんだ。」


健一はその言葉に驚きつつも、興味を抱いた。「他にも妖怪がいるのか?」


「うん。ここにはたくさんの妖怪が住んでいるよ。もし興味があるなら、少し紹介しようか?」狐は楽しそうに尻尾を振った。


健一は少し考えた後、興味本位で頷いた。「いいよ、お願いするよ。」


狐は嬉しそうに笑い、健一を連れて神社の奥へと進んだ。古びた廊下を歩いていくと、次々と不思議な光景が目に飛び込んできた。そこには、さまざまな妖怪たちが住んでいたのだ。


まず最初に出会ったのは、天狗の妖怪だった。天狗は健一を見ると、興味深そうに鼻を鳴らしながら近づいてきた。「お前、人間だな。ここで何をしているんだ?」


「雨宿りをしていたんです。」健一は少し緊張しながら答えた。


「なるほど、雨の日はここが一番快適だからな。」天狗は大きな羽を広げて笑った。「まあ、ゆっくりしていけ。」


その後、健一は河童の妖怪とも出会った。河童は神社の池のほとりで、何やら独り言を言いながら水面を見つめていた。「やあ、君も雨宿りかい?」河童は振り返り、にこやかに話しかけてきた。


「そうです。ここにはたくさんの妖怪がいるんですね。」健一は驚きながら言った。


「そうさ。雨の日には特にたくさん集まるんだ。君は初めてかい?」河童は健一の反応を楽しむように微笑んだ。


「はい。こんな経験は初めてです。でも、みんな優しくて驚いています。」健一は素直に答えた。


「それはよかった。妖怪たちも君のような純粋な心を持つ人間に会うのは嬉しいんだよ。」河童はそう言って、再び水面に視線を戻した。


さらに奥へ進むと、健一は一反木綿の妖怪にも出会った。一反木綿は空中を漂いながら、健一に優しく声をかけた。「君も雨宿りをしているのかい?」


「はい。急な雨でここに避難しました。」健一は礼儀正しく答えた。


「そうか、ここは古くから妖怪たちの避難所でもあるんだ。安心して過ごしていってね。」一反木綿は柔らかい声で言った。


健一はその言葉に安堵し、妖怪たちと交流を深めていった。狐が再び現れ、健一に向かって「どうだい?楽しんでいるかい?」と尋ねた。


「はい、すごく楽しいです。こんな不思議な体験をするなんて思ってもみませんでした。」健一は笑顔で答えた。


「それはよかった。まだまだたくさんの妖怪がいるから、紹介するよ。」狐はそう言って健一を次の場所へと案内した。


次に訪れたのは、古びた神社の奥にある大きな木の下だった。そこには、妖怪の中でも特に珍しいと言われる天女の妖怪が住んでいた。天女は美しい羽衣を纏い、優雅に舞いながら健一を迎えた。


「ようこそ、ここは私の住処です。あなたも雨宿りに来たのですか?」天女は優しい笑顔で健一に尋ねた。




「はい。急な雨でここに避難しました。でも、こんなに素敵な場所に来られて、本当に嬉しいです。」健一は感激して答えた。


「それはよかった。ここでは時間を忘れて、心ゆくまで楽しんでください。」天女は健一に一緒に舞を踊るように誘った。


健一は最初は戸惑ったものの、天女の優雅な動きに引き込まれ、次第にその場の雰囲気に馴染んでいった。天女と共に踊ることで、彼の心は一層解放され、妖怪たちとの絆が深まっていった。


夕方になり、雨が小降りになってきた。狐が再び現れ、健一に「もうすぐ雨が止むみたいだね。でも、また雨が降ったらいつでもここに来ていいんだよ。」と告げた。


「ありがとう。今日は本当に楽しかったです。また来たいと思います。」健一は感謝の気持ちを込めて言った。


こうして、健一の不思議な雨宿りの冒険は続いていった。彼は雨の日が少し好きになり、次にどんな妖怪たちと出会えるのかを楽しみにするようになった。物語はまだまだ続く。