3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。


地球の選択 - 二つの未来 

では、「星空の約束」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


小さな田舎町の夜空は、都会では見ることのできない美しい星々で埋め尽くされていた。天文学に夢中な高校生、杏奈と翔太は、毎晩のように町外れの丘に登り、天体観測を楽しんでいた。二人は星空を見上げながら、未来の夢や希望を語り合うことが習慣となっていた。




「翔太、あの星座見える?あれはオリオン座だよ」と杏奈が指を差しながら言うと、翔太は微笑みながら頷いた。「うん、綺麗だね。でも、僕たちの未来もあの星みたいに輝いているといいな。」


そんなある夜、二人はいつものように天体観測をしていた。星々が煌めく中、杏奈はふと真剣な表情になり、翔太に話しかけた。「翔太、私たちが将来離れ離れになっても、毎年この日、この場所で星空を見上げていようよ。そうすれば、どんなに遠くにいてもお互いのことを感じられると思うの。」


翔太もまた、真剣な表情で頷いた。「約束するよ、杏奈。毎年同じ日に、この場所で星空を見上げる。そして、いつか再会するまでお互いを思い続ける。」


二人は固く手を握り合い、未来への誓いを立てた。しかし、その約束はすぐに試されることになる。杏奈は大学進学のために東京へ、翔太は家業を継ぐために地元に残ることになった。彼らの間に広がる距離は、次第に二人の心に重くのしかかっていった。


東京での新しい生活は忙しく、杏奈は勉強やアルバイトに追われる日々が続いた。一方、翔太も地元で家業を支えながら、自分の夢を追い続けていた。しかし、どれだけ忙しくても、毎年同じ日には必ず星空を見上げることを忘れなかった。


時間が経つにつれ、二人の連絡は次第に途絶えがちになったが、星空を見上げる約束だけは守り続けた。星空を見上げるたびに、彼らはお互いの存在を感じ、心の中で再会の時を待ち続けた。


しかし、ある年のその日、杏奈が星空を見上げると、ふと背後に冷たい視線を感じた。振り返っても誰もいないが、その不気味な感覚は消えなかった。彼女はその夜、何度もその視線を感じながらも、何事もないかのように振る舞うことにした。


翌朝、杏奈は大学のキャンパスで友人たちと話しているときに、ふと前夜の不安を打ち明けた。「昨日、星を見ていたら、なんだか誰かに見られているような気がして…」


友人たちは笑い飛ばすように「それはきっと、都会の喧騒に慣れてないからだよ。気にしないで」と言ったが、杏奈の胸に広がる不安は消えることはなかった。彼女の頭の中には、翔太との約束とともに、昨夜の不気味な感覚が強く残っていたのだった。


杏奈は心の中の不安を拭い去ることができないまま、日常の忙しさに追われていた。授業やアルバイト、友人との時間が彼女の心を一時的に和らげたが、夜になると再びその不安が顔を出した。特に星空を見上げる時、その感覚はますます強くなった。


一方、地元に残った翔太もまた、杏奈との約束を守り続けていた。しかし、翔太の心には次第に別の恐れが芽生えていた。それは、杏奈との距離が物理的なものだけでなく、心の距離も広がっているのではないかという不安だった。彼は頻繁にメールを送り、電話をかけるが、忙しい彼女からの返事は遅れることが多くなっていた。


ある晩、翔太はとうとう決意を固め、直接東京に行くことにした。彼は突然の訪問を計画し、杏奈にサプライズを届けることを決めた。しかし、その決意の背景には、彼女の安全を確かめたいという強い気持ちもあった。


東京に到着した翔太は、杏奈のアパートを訪ねた。予告なしの訪問に驚いた彼女は、最初は困惑したが、翔太の熱意に心を打たれた。二人は久しぶりに再会し、抱き合いながら涙を流した。


「翔太、来てくれてありがとう。本当に嬉しい。でも、どうして急に?」杏奈は問いかけた。


「最近、なんだか心配でさ。君が何かに悩んでいるような気がして…」と翔太が答えると、杏奈は深いため息をついた。


「実は、最近夜になると誰かに見られている気がして怖いの。特に星空を見上げているとき、その感覚が強くなるの」杏奈の言葉に翔太は真剣な表情を浮かべた。


「それなら、今夜一緒に星を見よう。君が感じているものを確かめよう」と翔太は提案した。杏奈もその提案に同意し、その夜二人は一緒に星空を見上げることにした。


夜が更け、二人は杏奈のアパートの屋上に上がった。都会の光が星空を少し隠しているが、それでも美しい星々が輝いていた。二人は手を繋ぎながら、静かに星を見上げた。




その瞬間、再び杏奈は背後に冷たい視線を感じた。「翔太、あれ…」と彼女が指差した方向には、暗闇の中に微かに動く影が見えた。翔太はすぐにその方向に駆け寄り、誰かを捕まえようとしたが、影はすばやく逃げ去っていった。


「誰かが確かにいた…」翔太は戻ってきて、息を切らしながら言った。「でも、すぐに逃げられた。」


杏奈は翔太の腕にしがみつきながら、「怖いよ、翔太。何が起きているの?」と震え声で尋ねた。


「大丈夫、杏奈。僕がいるから心配しないで。絶対に守るから」翔太は力強く言い、彼女を抱きしめた。しかし、その夜以降も杏奈は不安を感じ続け、翔太もまた、その影の正体を突き止める決意を新たにした。


次の日、二人は警察に相談することを決めた。警察は杏奈の不安を真剣に受け止め、調査を開始した。しかし、何の手がかりも見つからず、調査は難航した。翔太と杏奈はますます不安になりながらも、お互いの支えとなり続けた。


そんな中、ある夜、再び影が現れた。今回は明らかに彼らを見つめている。翔太は再び影に向かって駆け出し、捕まえようとしたが、影は再び消え去った。その影の正体が明らかになる日が近いことを、二人は感じていた。


恐怖と不安が募る中、翔太と杏奈は互いに支え合い、真実を突き止めるための決意を固めた。彼らの星空の約束は、ますます強い絆となり、二人を結びつけていた。しかし、影の正体とその目的が明らかになる日が、ますます近づいていた。


翔太と杏奈は影の正体を突き止めるため、さらに深く調査を続けた。警察からの協力は得られなかったものの、二人は諦めず、自分たちで手がかりを探すことを決意した。翔太は、影が現れた場所や時間帯に注目し、パターンを見つけ出すためのノートを作成した。杏奈もまた、自分の感覚に頼りながら、影が現れる瞬間を見逃さないように注意を払っていた。


ある晩、二人は再び屋上に上がり、星空を見上げながら影の出現を待っていた。深夜になり、冷たい風が吹き始めると、翔太はノートを取り出し、過去のデータと照らし合わせながら今夜の状況を確認した。「杏奈、今夜もあの影が現れるはずだ。ここにいれば、きっと正体がわかる」と翔太は決意を込めて言った。


その瞬間、杏奈は再び背後に冷たい視線を感じた。「翔太、あれを見て!」と彼女が指差した先には、再び暗闇の中に影が現れていた。翔太はすぐに動き出し、影に向かって駆け出した。今回は逃げられないように、二人で作戦を練っていたのだ。


翔太が影に近づくと、その正体が明らかになった。それは、杏奈の大学の教授である大橋だった。大橋は暗い表情を浮かべ、何かに取り憑かれたかのように呟いていた。「星空の下で誓いを立てるなんて、許されるものか…」


「大橋先生、なぜこんなことを?」と翔太が問い詰めると、大橋は狂気じみた目で答えた。「私はかつて、同じように星空の下で愛を誓った。しかし、その愛は叶わず、全てを失ったのだ。だから、お前たちにも同じ運命を辿らせてやろうと…」


大橋の言葉に翔太は衝撃を受けながらも、冷静さを保とうと努めた。「先生、それは過去の話です。僕たちはあなたのようにはならない。僕たちの愛は強いんです。あなたもその悲しみを乗り越えるべきです。」


その時、杏奈も駆け寄り、大橋に向かって言った。「先生、あなたもかつては星空に希望を見出していたはずです。私たちはあなたの過去を繰り返すつもりはありません。私たちの愛は、あなたの悲しみを乗り越える力となるはずです。」


大橋は一瞬戸惑いの表情を見せたが、次第に冷静さを取り戻し始めた。「お前たちの言う通りかもしれない…私は自分の悲しみに囚われすぎていたようだ」と呟くと、その場に崩れ落ちた。翔太と杏奈は彼を支え、警察に連絡して助けを呼んだ。


その後、大橋は治療を受け、徐々に回復していった。翔太と杏奈もまた、彼を支え続けることで自らの絆をさらに強めた。彼らの星空の約束は、ただの愛の誓いではなく、困難を乗り越える力となったのだった。


数ヶ月後、杏奈と翔太は再び町外れの丘に登り、星空を見上げた。「翔太、あの星見える?あれは私たちの約束の証だね」と杏奈が微笑みながら言うと、翔太も微笑んで答えた。「うん、これからもずっと一緒に星を見上げていこう。」




二人は手を握り合い、未来への新たな誓いを立てた。星空の下で交わされた約束は、彼らの心に永遠に輝き続けることだろう。