3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。


地球の選択 - 二つの未来 

では、「赤い部屋」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


都市伝説の中で「赤い部屋」と呼ばれる場所があった。その部屋に足を踏み入れると死ぬという噂が広まり、誰もが恐れて近づこうとはしなかった。しかし、好奇心旺盛な青年、健一はその噂の真相を確かめるために訪れる決意を固めた。彼は友人たちにその計画を話したが、皆は反対し、彼を止めようとした。しかし、健一の決意は固かった。


ある晩、健一はその「赤い部屋」があるという廃墟のマンションに向かった。薄暗い街灯の下で、古びた建物が不気味な影を落としていた。玄関のドアは錆びつき、まるで長い間誰も触れていないかのようだった。健一は深呼吸をし、心の中で覚悟を決めてドアを押し開けた。




廃墟の中は静まり返り、風の音すら聞こえなかった。健一は懐中電灯を片手に、廊下を進んでいった。廊下の壁には、かつての住民が残したと思われる落書きや破れたポスターが貼られており、その中に「赤い部屋」の所在を示す手がかりがあった。「最上階、東の端の部屋」と書かれているのを見つけ、健一は不安を感じながらも階段を上り始めた。


階段を上るたびに、足音が廃墟に響き渡る。暗闇に包まれた廊下を懐中電灯で照らしながら、彼は一歩一歩慎重に進んでいった。そして、ついに最上階にたどり着いた。東の端にある部屋のドアは、他の部屋とは違い、真っ赤に塗られていた。健一はそのドアを見つめ、胸の鼓動が高鳴るのを感じた。


ドアノブに手をかけた瞬間、冷たい感触が彼の手に伝わってきた。深呼吸をし、意を決してドアを開けた。中に足を踏み入れると、部屋全体が血のように赤く染まっていることに気づいた。壁、天井、床、すべてが赤く塗られていた。その異様な光景に、健一は一瞬息を呑んだ。


しかし、彼が一歩を踏み出すと同時に、不気味な感覚が彼を襲った。視界が揺れ、赤い壁が歪んで見えた。耳元で囁く声や、影の中から何かがこちらを見ているような視線を感じた。恐怖に駆られた健一は振り返ってドアに向かおうとしたが、ドアは閉ざされていて開かなかった。


その瞬間、彼の視界に不気味な幻覚が現れ始めた。血まみれの手が壁から伸びてくるのが見え、天井からは無数の目が彼を見下ろしていた。健一は必死に頭を振り、目を閉じたが、幻覚は消えることなく彼を取り囲んでいた。彼の心は恐怖でいっぱいになり、逃げ場のない部屋で次第に狂気に追い込まれていった。


健一は壁から伸びる血まみれの手や天井から見下ろす無数の目に囲まれ、完全にパニック状態に陥っていた。彼の心臓は激しく鼓動し、呼吸が浅くなり、視界はますます歪んでいった。幻覚が現実のように感じられ、彼は恐怖の中でどうすれば良いのか分からなくなっていた。




「ここから出なければならない」と健一は心の中で繰り返し、自分を落ち着かせようとした。しかし、どの方向を向いても赤い壁が彼を取り囲んでいるように見えた。彼はドアに向かって突進し、必死にノブを回したが、ドアはびくともしなかった。


「助けて!」と叫んだが、その声は廃墟の中で虚しく反響するだけだった。誰も彼の叫びを聞いてはくれない。健一はもう一度深呼吸し、何とか冷静さを取り戻そうとした。彼は懐中電灯を持ち直し、部屋の隅々を照らし始めた。何か出口の手がかりがないか探すためだった。


すると、部屋の一角に古びた机が置かれているのを見つけた。机の上には、埃まみれの古い日記が置かれていた。健一は震える手で日記を取り上げ、ページをめくった。日記には、この部屋に住んでいた人物の記録が綴られていた。その記録は次第に狂気に満ちていき、最終的には「赤い部屋」に取り憑かれたことが書かれていた。


「この部屋は呪われている…出ることはできない…」という最後の言葉が、健一の心に重くのしかかった。彼も同じ運命を辿るのだろうかという不安が押し寄せた。しかし、彼は諦めるわけにはいかなかった。何とかしてこの部屋から抜け出す方法を見つける必要があった。


日記を調べ続けると、その中に「唯一の逃げ道は、鏡を通ること」という記述があった。健一はその言葉に賭けることに決め、部屋の中に鏡がないか探し始めた。すると、壁の一部に大きな古びた鏡が取り付けられているのを見つけた。


彼は鏡の前に立ち、慎重にそれを覗き込んだ。鏡の中には、自分の姿が不気味に映し出されていた。しかし、じっと見つめていると、鏡の向こう側に異なる景色が見え始めた。それは暗い廊下のようであり、そこがこの部屋からの出口なのかもしれないという希望が湧いてきた。


健一は恐る恐る手を伸ばし、鏡に触れた。すると、手が鏡の表面を通り抜ける感覚があり、驚きとともに恐怖が彼を襲った。しかし、ここで引き返すわけにはいかなかった。彼は決意を固め、全身を鏡の中に押し込んでいった。


鏡の向こう側に足を踏み入れると、冷たい風が彼の体を包んだ。そこは、まるで別の世界のようだった。暗い廊下が続き、どこか遠くでかすかな囁き声が聞こえた。健一はその声を追いかけるように、廊下を進んでいった。しかし、背後には赤い部屋がまだ存在しているような気配を感じ、彼は一瞬たりとも油断できない状態だった。


冷たい風に吹かれながら、健一は暗い廊下を進んでいた。廊下は異様に長く、何度曲がっても同じような景色が続く。まるで迷路のように感じられ、彼の不安は増していった。囁き声は依然として遠くから聞こえ、何かが彼を誘っているようだった。


突然、彼の視界の先に微かな光が見えた。希望の光か、それとも新たな罠か。健一は慎重に進みながらも、その光に引き寄せられるように足を進めた。光の近くにたどり着くと、それは古びた扉から漏れ出しているものであることに気づいた。


扉をゆっくりと開けると、その向こうには広い部屋が広がっていた。中央には大きな祭壇があり、そこには古びた書物や奇妙な装飾品が並んでいた。健一は一瞬立ち止まり、部屋の中を観察した。どこか不気味な雰囲気が漂っていたが、これが彼にとっての最後の手がかりであることを確信した。


祭壇に近づくと、書物の中に「赤い部屋」の呪いを解く方法が記されていることを発見した。その方法は、赤い部屋に囚われた魂を解放することで呪いを解くというものだった。書物の指示に従い、健一は祭壇に置かれたろうそくに火を灯し、呪文を唱え始めた。




呪文を唱え終わると、部屋全体が激しく揺れ始めた。祭壇の上の書物や装飾品が宙に浮き、赤い光が部屋を包み込んだ。健一は必死に耐えながら、最後まで呪文を唱え続けた。その瞬間、激しい風が吹き荒れ、彼の周りに黒い霧が立ち込めた。


霧の中から、無数の影が現れた。それは赤い部屋に囚われていた魂たちであり、彼らは次々と解放され、光の中に消えていった。健一はその光景を見つめながら、自分の行いが正しかったのか確信を持つことができた。


霧が晴れると、彼は再び赤い部屋の中に戻っていた。しかし、部屋は以前のような恐怖を感じさせるものではなく、ただの古びた部屋に戻っていた。壁の赤い塗装も薄れ、かつての恐ろしい幻覚は消え去っていた。


健一は深い安堵の息を吐き、ドアに向かって歩き始めた。ドアは簡単に開き、彼は廃墟のマンションから無事に脱出することができた。外に出ると、夜明けの光が彼を迎えていた。健一は廃墟を振り返り、呪いが解かれたことを実感しながら、ゆっくりと家路についた。


その後、赤い部屋の噂は次第に消え、廃墟も忘れ去られていった。健一はこの体験を通じて、都市伝説の背後にある真実と向き合う勇気を得た。彼の心には、恐怖を乗り越えたことで得た新たな強さが宿っていた。