3分読書、読んで頂き、ありがとうございます。

これまで書いた作品も、読んで頂ければと思います。

地球の選択 - 二つの未来 

では、「傘と座敷わらし」を読んでみてください。

爆 笑爆笑爆笑


風の冷たいある雨の日、主人公・悠は、何となく重い足取りで街を歩いていた。最近の生活は思うようにいかず、仕事も恋愛も停滞気味。そんな彼の前に、雨に濡れながらも一人で遊ぶ子供が現れた。その子供は妙に古風な着物を着ており、まるで別の時代から来たようだった。


悠は迷うことなく、その子供に傘を差し出した。「大丈夫かい?」と声をかけると、子供は微笑んで頷いた。子供は何も言わず、悠の傘の下へと入ってきた。その日から、悠の運命は一変する。




仕事では突然、昇進の話が持ち上がり、恋愛面でも思いがけない幸運に恵まれた。友人からは「座敷わらしに恵まれたんだな」と笑われたが、悠はその子供のことを思い出し、心の中で感謝した。


しかし、次第に悠は欲深くなっていった。もっと良い仕事、もっと多くのお金、もっと魅力的なパートナーを求めるようになる。そして、再びその子供に出会った雨の日、悠は「もっと幸せにしてくれ」と子供に頼んだ。


悠の日常は、一変した幸運に彩られた光景で満ちていた。まるで、彼の周りには見えない力が働いているかのように、すべてが順風満帆に進んだ。その幸せは、まさに彼が長年夢見ていたものだった。


しかし、人間の心は変わりやすい。悠の内心には、満たされぬ渇望が静かに渦巻いていた。初めての幸運に酔いしれていた悠は、次第に現状に満足することができなくなり、さらなる欲求に目がくらんでいった。友人たちの忠告も、彼の心には届かなかった。彼らは悠が変わってしまったことに心を痛め、次第に距離を置くようになる。

「もっと幸せにしてくれ」という悠の願いは、確かに叶えられたが、その代償はあまりにも大きかった。愛する人との別れ、信頼を失った仕事、そして孤独感は、彼の心を重く圧迫する。最後には、彼はその子供を必死に探し求めたが、座敷わらしの姿はどこにも見つからなかった。

悠が最後に残されたのは、失ったものへの深い悔恨と、心の中に静かに積み重なった後悔の感情だけだった。彼は、かつて手に入れた幸せが、いかに脆く儚いものだったかを痛感し、真に大切なものが何かを理解した。



結局、悠は過去を振り返りながら、座敷わらしとの出会いが教えてくれた教訓を胸に、新たな人生を歩み始めることを決意する。彼は、人生の価値は外側から得られる幸運や物質的なものではなく、内側から湧き上がる満足感と、大切な人と過ごす時間にあることを深く実感した。そして、悠は過去の欲望を手放し、今この瞬間を大切に生きることの意味を、改めて見つけ出すのだった。