ショッピングセンターの幼児用遊具の安全ガイドラインをなぜ国交省ではなく経産省が策定したのか? | 堺 だいすき ブログ(blog)

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【経済インサイド】ショッピングセンターの幼児用遊具の安全ガイドラインをなぜ国交省ではなく経産省が策定したのか?

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 霞が関の縦割り行政-。行政改革の議論では必ずやり玉に挙げられるフレーズだ。縦割り行政の弊害はいろいろ指摘されるが、その一つが商業施設内に設置されている遊戯施設の安全基準。基準がないがゆえに子供の重傷事故が発生しているのだ。抜け落ちていたこの穴を埋めるべく、経済産業省がこのほどガイドラインを策定した。経済成長の牽引役として幅広い権限を持つ一方で、他省庁に比べて許認可行政ができないといわれる経産省のガイドライン、その効果はいかほどなのか…。

                 ◇

 経済産業省は3日、ショッピングセンターなどの商業施設事業者が取り組む安全基準「商業施設内に設置された遊技施設の安全に関するガイドライン(Ver.1.0)」をとりまとめた。ガイドラインは、設備の設計、設置方法や、テナントの提携先の選定、保守点検、事故対応、再発防止の基準、マニュアルの整備について定めてある。

 ガイドラインによると、遊戯施設のメンテナンスや事故発生時の救急、警察への連絡などについては「必要がある」と規制したものの、事故データの記録や再発防止策など大半の部分については「望ましい」と自主規制を促すにとどめた。

 担当者は「比較的新しいサービスで事業者も安全基準は手探り。サービスの拡充に合わせてガイドラインを進化させていく」という。コンピューターのプログラムなど、更新を前提とするものを指すIT用語の「Ver.1.0」を使うあたりが経産省らしい。

 そもそも階段などの供用部、テナント部分、催事会場など、安全責任者が異なるエリアが点在する商業施設では、それぞれの責任者が事故対応にあたる。事故対応に不満があっても、泣き寝入りせざるを得ないケースもあり、商業施設の責任を明らかにするため、商業施設を管轄する経産省に、出番が回ってきた。経産省は昨年8月の内閣府の消費者委員会の建議で、「これまで、商業施設内の遊戯施設における消費者事故等の防止に向けて指導監督が行われてこなかったのが実態である」と名指しで批判を受けた経緯もある。

 商業施設の遊具は、商業施設所管する経産省と遊具を規制する国土交通省の間に生まれたエアポケットでもある。似たようなガイドラインとして、平成26年に改訂された国交省の「都市公園の遊具に関する指針」がある。許認可行政が得意な国交省の指針らしくこちらは遊具の構造や材質などが細かく規定されている。

 都市公園では監視員のいない環境を前提に子供たちの安全を確保するため、厳しい規制が必要となるからだ。回転遊具など、一昔前に子供たちが列を作って遊んだ公園の人気者が次々と撤去されているのは、こうした事情もある。今回、商業施設の遊戯施設は、産業振興が妨げられないように、国交省のような厳しい規制は免れた。

 では、今回のガイドラインで実際に子供たちの事故は減るのか。日本エア遊具安全普及協会の担当者は「ガイドラインが定義している商業施設が非常に適用範囲が広く、周知だけでもかなり難易度が高い。実効性のあるガイドラインにしていくかが次のステップ」と指摘する。経産省とともに消費者安全に取り組むよう建議を受けた消費者庁は「事業者に明らかに問題があった場合、消費者庁が勧告などを行う余地はある。しかし、経産省の対応を注視していく」としている。

 縦割り行政は省益を最優先し、過剰な管轄意識によるものとして、批判の的となり、解消が進められてきた。ただ、各省庁の性格や目指す目的が異なる以上、穴は生まれてしまう。幼稚園に通う子供を持つ30代の母親はこうため息をついた。「結局、自分の子供は自分で守るしかないのね。当たり前だけど」。(高木克聡)