永遠の唄 -3ページ目

理性


もし何かを口にすればその瞬間に

周りにある全てが音を立てて

砂のように崩れ去るような

そんな恐怖を感じることがある。



積み上げるのも崩すのも簡単で

難しいのはそれを保つということ。

一度崩れてしまったものを、同じ形に再び

積み上げることなんて不可能に等しいから。

…だから

言葉を選んでは飲み込んで

言葉を選んでは飲み込んで

本能と理性とが壁の中で

終わらない争いを続ける。



素直になれだなんて簡単に言えないのは

きっと崩れゆく痛みに、他の誰でもない自分自身が

耐えられないと思うからなのでしょう。

心の壁


「例え何があっても傷付いていないふりは出来る。

 そしてそれは誰にも見せないでいられる。

 …私の心には壁があるから。」

そんな言葉が痛々しくも感じられるのは

きっと私と彼女が近いところにいるせいだろう。

壁を作り出す理由も、そしてその辛さも分かる

私自身も同類で、自分に嘘をつくのが得意だから。







心に壁を張り、自分の内側と外とを隔てれば

周りに合わせて波風を立たなくすることも可能で

自分を押し殺すことが全く苦じゃなくなるし

そして何より自分自身が傷付きにくくなる。

時々「強い人だね」とか「悩みなさそうだね」なんて

勘違いされても、まったく動じない程に。



ただ、偽りの自分を演じるには勿論限度があって

取り繕えば取り繕う程に、自分一人になったときに

その虚しさが一気に押し寄せてきて

そんなどうしようもない自分に嫌気がさしてしまう。

それでも壁を張り続けてしまうのは、一人で嘆く方が

心をさらけ出すより楽なのだと悟ってしまっているから。

気持ちを偽ることが楽だと思えているのだから

心底病んでいるとしか言いようがない気がする。



もっとも、壁は自身の経験とトラウマとが作り上げたもの

だから簡単に変われるものじゃないのだと思う

もう性格の一部として自分の中で固まってしまったのだ。

蝋燭やガラスと同じで、一度固まってしまったものは

壊さない限り、ずっとそのままなのだから。



人が忘れることで自分を保とうとするのと同じで

自身を偽ることで自分を保とうとする、

言ってみれば自然の摂理に近いのかもしれない。







『ただ、そういう風に心に壁を作る人って

 いつか心許せる人が現れたときに

 本当に弱く、素直になりそうだなって

 …そんな風に思うんだよね。』

そんな傷付いた彼女に向けたはずの言葉が

自分自身に言っているように感じるほど

このときから自分を重ねていたのかもしれない。

壁

貪欲


どうしようもないどん底にいるときこそ

他人の温かさに触れることが出来る。



もっともその温かみなんてものは

いつも自分のすぐ傍にあるのに

日々の忙しさに追われているせいで

気付かないだけなのだけれども。



優しさでからだを満たしては

また慌しい世界に身を投じる。

まったく人間という生き物は

実によく出来ているものだ。

青空


空が青かった。

その青さに吸い込まれてしまいそうなほど

とてもとても青かった。



確かに何かが今変わろうとしている

・・・いや、正確には変えようとしているのか。

そこにあるのは流れ着いた転機ではなく

自分で選んだそれだからきっと

この先も大丈夫だろうって微かに思っていたりする。



こうして原点に返ってみると

思った以上にいろいろなものが見えてくる。

自分の"いる場所"と"望む場所"の違いに

どうして今まで気付かなかったのだろう。

自身を押し殺してまで、そこに留まる理由なんてないのに。



穏やか過ぎる午後の陽射し

それはこれから起ころうとする何かを

遠くから暗示しているかのようだった。

sora

期待


期待されることをこんなにも苦しいと

感じたことはなかった。



目には写らないそれに縛られて

身動きが取れなくなってしまう。

たった一言伝えてしまえばいいのに

なかなかそれが言い出せずに。



言えば傷付けると思った。

言えば裏切ると思った。

…今こうしていることが

一番の裏切りなのにね。

混沌


混沌

迷うことはない

確かなものなんて

この混沌とした世界には

存在しないのだから

暁


歳を重ねるごとに「もし…なら」

なんて言葉を口にすることが減った気がする。

簡単に言えば、現実主義になった

大人になった、とでも言うのだろうか。



ずっとその道の先にあるものだと思った夢が

いざ辿り着いてみれば深い崖に阻まれていました

…なんて、何とも酷な話だ。

その境界線に気づくこともまた

大人になるという事なんだろうけれども。



「選ばなかった未来なんて無かったのと同じ」

いつの日か、アイツに言われた言葉をふと思い出した。

暁

妥協


追いつめられる程に

「やはり私と君は別のものなんだ」

と再確認させられる。

分かりきっていた事なのに

それに直面すると何とも虚しい。



互いの欲求を満たすのは難しい。

意思を主張しあえば反発するし

意思を譲り合えば何も変わらない。

企業だとか政治だとか経済だとか

ある程度同じ向きのベクトルとは違い

人間関係のそれに置いては

話し合いという名の妥協点探し。



それぞれの表と裏とが入り混じって

混沌とした音を奏でる。

仮面


想ってくれる人の元へ行くのは

確かに楽なのかもしれない。

例え自分の心がそこには無くとも

少なくてもその瞬間だけは

自身を委ねることが出来るから。



「自分の気持ちを押し殺してしまうのが

 歳をとるっていうことだよ…」

なんて寂しそうに呟く彼女の肩が

何とも弱々しく見えたものだった。

泡のように


終わって失えばその代わりを作りだし

その胸に開いた隙間を塞ごうとする。

それは目の前の水溜りを咄嗟に避けるのと

何ら変わらないことなのかもしれない。



忘れるために傷を重ね

重ねることで痛みに慣れ

それが当たり前なんだと

そう思い込ませる。



生きることは傷を負うこと

生きることは傷を塞ぐこと

生まれては消え、消えては生まれゆく

傷も…愛も…夢も………人でさえも。

鎖