千葉ロッテマリーンズが育成契約の和田康士朗を支配下選手として登録した。50m5秒8という俊足で長打力もあるという和田は埼玉٠小川高校では野球部ではなく陸上部に属し、在学中に地元の都幾川倶楽部公式野球団に入って硬球を初めて握ったという。本人は陸上部を辞して野球部に入ろうと思ったが、人数が少なかった事からクラブチームを選び、全日本クラブチーム選手権にも出場を果たす。そこから独立リーグのベースボール٠チャレンジリーグ(BCリーグ)の富山GRNサンダーバーズを経て新人選択会議の育成部門=育成ドラフトでマリーンズ入りし、3年目で冒頭に書いたように支配下を勝ち取った。

 ファンからは「和田の活躍次第では、高校の野球部を経ずにプロ入りする選手が増えるかも知れない」という声もあるが、実際に高校野球で阪神甲子園球場という大舞台を目指さずにクラブチームに入り、社会人選手の扱いで東京ドームや京セラドーム大阪などの大舞台を目指すという高校生もいる。たとえば蝦夷地の札幌市を拠点とし、少年硬式野球チームを運営する札幌白石イーグルスは高校生世代を練習生として受け入れているが、入学した高校の野球部のレベルが合わなかったり、諸事情で野球部での活動を続けられずに野球から離れた高校生を対象に、純粋に野球を楽しめる環境を提供すべく高校生の受け入れを始めた。将来的には年齢層を拡大化してクラブチーム化し、社会人野球を統括する日本野球連盟(JABA)に登録して公式戦に参加する方向でいるという。

 札幌白石イーグルス以外にも、社会人野球のクラブチームで将来的にプロ化を目指す熊本ゴールデンラークスも昨季U-18とU-15の野球アカデミーを設立し、U-18はチームとして確立すれば、こちらもJABAに加盟するという。また、芦屋大学やその付属高校を運営する芦屋学園の野球部は関西独立リーグの兵庫ブルーサンダースと組み、大学はブルーサンダースの二軍、高校は三軍としてそれぞれ機能しているが、三軍の選手でも試合が出場できるレベルに達すれば、ブルーサンダースの練習に参加したり、試合の出場も可能である。こちらは芦屋学園高校に進学という前提になるが、プロ契約している選手の中にアマチュア契約の選手が出るというような形と言っても良い。

 いわゆる日本高校野球連盟に属する学校の野球部に属さなくとも、野球はできる。野球部の練習についていけずに1度はあきらめた高校生も、こういう道がある事を知ってほしいと思う。甲子園だけが野球ではないのである。