タイトル:彼女は一人で歩くのか?

著者:森博嗣

発行:講談社

発行日:2015年10月20日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あらすじ 

ウォーカロンwalk-alone

「単独歩行者」と呼ばれる、人工細胞で作られた生命体。

人間との差はほとんどなく、容易に違いは識別できない。

研究者のハギリは、何者かに命を狙われた。心当たりはなかった。

彼を保護しに来たウグイによると、ウォーカロンと人間を識別するためのハギリの研究成果が襲撃の理由ではないかとのことだが。

人間性とは命とは何か問いかける、知性が予見する未来の物語。

 

 

 

私はですね、結構タイトルに惹かれて、

あらすじとかあまり読まずに本を買う人間なんですよね。

 

見事にシリーズの中ほどから読んでしまうミスをしました。

 

 

 

本作、森博嗣氏のWシリーズと呼ばれるものらしいのですが、

そんなことを知らずに6冊目にあたる『青白く輝く月を見たか?』から読みました。

だってすごい素敵なタイトルだったんだもの。

 

まぁ……どのみち、本には帯も含めて『シリーズ』って表記なかったし…。

わざわざ捲って奥付側に織り込まれてるカバーとか見ないよね……。

 

というわけで、シリーズ6冊目から読んでしまいましたが、

面白かったのでシリーズ1冊目も買いました。

当記事はシリーズ1冊目の紹介です。

 

 

 

 

 

P67

歴史には詳しくないが、人工細胞が広く実用化されたのはまだ半世紀ほどまえのことだ。

それ以前には、人間に似た機械はいわゆるロボットだった。

自律型のものがウォーカロンと呼ばれて大量に生産された。

それは、自動車が世界中を走ったように、世界中の道を歩いたのだ。

この時、人工知能が飛躍的に進歩した。

僕の研究はその延長線上にある。工学の花形と言っても良い分野だ。

一方で、生物科学分野から登場したのが、人工細胞の技術だった。

 

人工細胞のおかげで、病気や怪我で移植は必要なくなった。

老化や病気で不調になってきた部分は、人工細胞でどんどん取り換えていく。

『ほとんど死なない』というのを達成した世界。

脳の人工細胞に、人工知能がインストールされ、

ウォーカロンは生きた肉体を手に入れた。

……もう、ほとんど人間と変わらない。

 

という世界で、人間か、ウォーカロンかを見分けるための研究をしていたのが、

本作主人公のハギリ博士。

 

彼の命を狙う敵の目的は一体なにか?

次々と狙われる研究者たちの関連性は?

敵は『人間になりすましている、判別されたら困るウォーカロン』の組織か?

はたまた『ウォーカロンを製造販売して利益を上げている人間』か?

辿りつく先には、今の人類が抱える問題への糸口が――――

 

 

 

みたいな感じの近未来的お話しで、

『人工細胞に入れ替えていくおかげで死ににくくなったけれど、

代わりに子供が生まれなくなっちゃった!』というのが、この世界の抱える大問題である。

 

直接的にはハギリ博士の研究している内容は、命を狙われるほどのものではなく、

何故だろう?という自問自答と捜査を繰り返しているうちに

この大問題に関係していそう…というのがわかってきた、というのが本作。

解決はしていない。

 

 

 

こういう系のシリーズって、

1冊完結型で、次は別の組織に命を狙われる、みたいなのが

割と王道パターンだと思っていたんだけど、

このシリーズは謎をシリーズで持ち越すらしい。

続きが気になりすぎて2冊目と3冊目買ってきてしまいました。

まだ読めてないけれど楽しみ。

 

 

 

 

P152

それに、新しい命が誕生しない現実を前に、殺合いの無意味さはさらに大きくなった。

エネルギィや食料の問題よりも、人類存続の方が優先となった。

殺し合っている場合ではない。

生きている者は、人間であっても、ウォーカロンであっても、協力し合う以外にない。

 

P108あたりに、ウォーカロンは人間の品種改良版なので、

血統的に穏やかである、と説明があった。

人口の半分がウォーカロンらしいが、

争いもなく長寿で平和で、それはそれで理想の世界と言える。

結局のところ、生物が子孫を残すのは

『自分の遺伝子を残すため』なので、次世代が誕生しなくともまぁ……と思ってしまったね。

 

ただ、どこかのページ(どこだっけ…)に記載があったけれど、

『ある程度歳をとったらリタイアして次世代にお任せしたい』らしい。

確かに、永久に終わりのない物事は退屈だし、

ずっと生き続けなければならないっていう状況は死ぬより怖い。

 

 

 

 

 

 

P129

国会議事堂の前に警官ならばいくらでもいるだろう、と思った。

三百メートルほどしか離れていない。

ウグイが少し早足になり、僕もそれに従った。

「走って下さい」彼女がそう言った。

振り返ると、三人がこちらへ向かってもう然と走りだしたところだった。

とにかく、必死に走った。

もう一度振り返ると、ウグイは走っていない。

そこに立ったまま、相手を迎えようとしている。

「ウグイ!」と叫ぶ。

「走って!」と振り返って答える。

 

ハギリ博士は八十才たる落ち着きっぷりだし、

その護衛のウグイも『笑うのはコストパフォーマンスが悪い』(P60)と言ってしまうくらい感情が希薄なので、ここのシーンは作品の中では結構インパクトがあった。

 

 

年齢について言及はなかったけれど、

ウグイは『人形のよう』に整った顔立ちで、

機能性の高い服装をしているらしいから当然パンツ姿なわけで、

無表情で美人の女の護衛……

 

ラノベだったら色々大盛り上がりな設定だな。

 

 

 

 

 

 

 

最後に重要な伏線だと思われる文を。

ハギリ博士の前に突然現れた謎の物語。

(他のシリーズ読んだらわかるのかなぁ)

 

P140

熊さんが襲ってくる。

恐ろしい声を上げて迫ってくる。

もう駄目だ。

でも、少女は言いました。

「黒い魔法を知っている?」

「そんなものは恐くないさ」と熊は言いました。

「白い魔法を知っている?」少女は続けて尋ねました。

「そんなものはなんでもないさ」と熊は笑います。

「じゃあ、赤い魔法を知っている?」

それを聞いた熊は、そのまま動かなくなりました。

そして、砂が崩れるように、地面に落ち、散ってしまったのです。

 

 

 

 

 

 

このシリーズの世界に登場する『単独歩行者ウォーカロン』は、

森さんの別のシリーズで登場した物らしい。

すべてがFになるに登場したマガタ博士も、本作に登場していたし、

同一キャラクターかどうかの言及は今のところないけれど、

巡り巡って世界は繋がっていそうだ。

 

 

 

本書冒頭、章冒頭の引用はアンドロイドは電気羊の夢を見るか?でした。

 

 

続きを読むのが楽しみだ~~~!!!

 

 

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本書を気に入った方には下記もおすすめ!

 

同一作者の作品。

【64】すべてがFになる(森博嗣) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

本書に引用されていた作品。

【118】アンドロイドは電気羊の夢を見るか?(フィリップ・K・ディック) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

こちらもアンドロイドの話。

【146】僕はロボットごしの君に恋をする(山田悠介) | 秋風の読書ブログ (ameblo.jp)

 

 

 

他にもおすすめの本があれば教えてくださいね!

それでは素敵な読書ライフを!!