タイトル:アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
著者:フィリップ・K・ディック
訳者:朝倉久志
発行:ハヤカワ文庫
発行日:1977年3月15日
あらすじ
第三次大戦後、放射能灰に汚された地球では、生きている動物を所有することが地位の象徴となっていた。
人工の電気羊しかもっていないリックは、本物の動物を手に入れるため、火星から逃亡してきた<奴隷>アンドロイド8人の首にかけられた莫大な懸賞金を狙って、決死の狩りをはじめた!
現代SFの旗手ディックが、斬新な着想と華麗な筆致をもちいて描きあげためくるめく白昼夢の世界!
1982年に公開されたSF映画、『ブレードランナー』の原作。
2007年には続編、『ブレードランナー ファイナルカット』も公開され、
現代においても変わらず根強い人気を見せる映画だ。
(と、紹介したものの、私は上記の映画を見れていないのですけれど・・・)
カウボーイビバップやサムライチャンプルーを手掛けた監督のショートアニメーションも作成されている。
(戦闘シーンのキャラクターの軽やかな身のこなしなど、とても素敵ですね~!)
(220) 【渡辺信一郎監督による前奏アニメ解禁!】「ブレードランナー ブラックアウト 2022」 - YouTube
原作が発表された1977年とは、
インターネットは、一般家庭に普及している物ではなく、
研究施設等の一部にしかなかった時代。
1961年に人類初の有人宇宙飛行が行われたから・・・
その16年後・・・
宇宙という新たな世界に人類がウキウキしてた時代・・・ですかね?
その時代に描かれた『未来像』―――
なかなか興味深く、今の時代に読んでもとても面白かった!
本作舞台設定では、地球上の多くの生物が死滅し、ほとんどの人間が火星に移住している。
『アンドロイド』は人間の下で働き、時々不満を持ち反逆や逃走を企てる。
そして反逆を起こしたアンドロイドを処分する人間の組織があり―――
今現在、このストーリーを聞いて「ありがちな王道SF」と思ったのは私だけではないはずだ。
そしてその『王道』を作ったのが、本作と言っても過言ではないだろう。
以下、ネタバレを含みます。
本作には人間と区別のつかないほど精巧な『アンドロイド』が登場し、車も空を飛ぶ。
『映話』という映像通話システムもある。
だけれど、車の運転は人力だし、多くの地球人がARやVRなどではなく現実世界で
映画のカットをちらっと見たのだけれど、
新聞紙で情報を得ている人間が描かれているのにはびっくりした!!
(この時代には『スマホ』なんて、ポケットサイズのコンピュータが生まれるなんて思ってもみなかったのだろう。たった半世紀前の話だけれど)
個人的なSF作品の楽しみポイントは、やはり作られた当時に描かれた『未来』が、
2022年の『いま』と一致しているところもあれば、
「そうはならんでしょ」という部分もある、というところだ。
(車なんて、人間そっくりのアンドロイド誕生より先に自動運転化されることだろう)
人間そっくりのアンドロイド。
自我があり、場合によっては自分がアンドロイドであるという自覚もない。
人間と同じように血と肉を持ち、銃で撃ち殺しても、
それが人間かアンドロイドなのかの判断はその場ではつけられない―――。
では、アンドロイドか本物の『人間』であるかの判断をする方法はないのか?
本作で人間とアンドロイドを識別する方法として登場した『フォークト=カンプラ検査法』という設定は、非常に面白かった。(P41詳細)
人間と異なり、アンドロイドには『感情移入』する能力がない、という設定を用いた検査方法で、鹿の剥製や牛革の財布、闘牛などの話を振った際の相手の反応で、検査するものだ。
地球で生き物死滅した、生き物は貴重だ、という舞台設定が活きている、良い検査方法だと思った。
とにかくこの作家、設定の使い方が上手い。
アンドロイドだという自覚がないアンドロイドが存在する、という設定も、
読者が主人公に対し、疑心暗鬼になるよう誘導しているようで、
読んでいて途中で「え、このタイトルって・・・?」ってなった。
結論は皆さま読んでからのお楽しみです。
果たして、主人公は本当に人間なんでしょうかね?
P163
フィル・レッシュは鮫を思わせる痩せた顔をしかめて、自分を納得させようとけんめいだった。
「それか―――でなければ、おれが偽の記憶を植え付けられたかだ。
ひょっとすると、ガーランドがずっとここにいたように思っているのは、おれだけかもしれない。しかし―――」
レッシュの顔はつのる苦痛にさいなまれてゆがみ、ひきつっていた。
「疑似記憶の移植がきくのはアンドロイドだけだ。人間には無効だと実証されている」
他にも、未来の道具として登場した
ダイヤルする数字によって、自分の感情を思いのままとコントロールすることができる『情調オルガン』や、
他人と感情を共有しあえるVR的な装置『
独創的な設定が素晴らしい。
不朽の名作SF小説だと思った。
TOP画は以下からお借りしました!
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来週投稿予定の読書記事で紹介する本、
こちらもSF的というか、ジャンルは異なるけれども、本作との親和性がとても良いので、
是非お楽しみに!
来週はビジネス書を取り扱います~