タイトル:すべてがFになる
著者:森博嗣
発行:講談社文庫
発行日:1998年12月15日
これまで読んできたミステリー小説のなかでも、これ以上ないというくらい、衝撃的で魅力的な作品だった。
これは、忘れられない作品になった・・・
本作は、森博嗣の小説家としてのデビュー作であり、シリーズとして考えられていた作品構成上の4作目にあたるものを1作目として改編したものだ。
第1回メフィスト賞、受賞作品。
ゲーム化、ドラマ化、アニメ化と、人気の高さを窺わせる本作だが、読んで納得。
これは森博嗣のファンになるわ。
なんて鮮やかで、恐怖を刺激する描写をするのだろう。
事件は日本の孤島、そのハイテクな研究所で起きた。
密室の殺人事件、外部と連絡が取れなくなった孤島、ありえないシステムエラー、不可思議なことの連続。
P100-103にかけての、最初の遺体発見シーン。
デボラの繰り返される抑揚のない「予期しないエラーです」。
2回描写されたデボラのアナウンス。
ぞっとした。
夜中、一人で本を読んでいて、こんなに怖くなったのは久々だった。
本作は500ページを超える長編だ。
読者を飽きさせないためか、緩急のついたストーリー展開が大きな特徴に思える。
P325-330、それからP414-417。
徐々に加速していくというより、急に何かに閃いたような、アクセルを踏み込むスピーディな展開が顕著なのが上記ページだ。
合わせて読者がページをめくる手も早くなること間違いない。
P430
「日本では、一緒に遊ぶとき、混ぜてくれって言いますよね」
犀川は突然話し出した。
「(省略)外国、特に欧米では、人間は、仲間に入れてほしいとき、ジョインするんです。
混ざるのではなくて、つながるだけ・・・。
つまり、日本は、液体の社会で、欧米は個体の社会なんですよ。(省略)」
P448
上を見ると、アメーバのような水泡が光っている。
近いものは吸い付いて一つになる。
生きているように変形して、消えていく。
アメーバは何を悟っているのだろう、と思う。
「私たちの時間はとても速い・・・」(省略)
「私たちが個体だと思っているものも、実は液体のように流れているのよ。私たちの時間が速すぎるだけ・・・」
最初は脈絡のないと思われる話も、どこかでつながっている。
それにしても美しい描写・・・。
P497
「自分の人生を他人に干渉してもらいたい、それが、愛されたい、という言葉の意味ではありませんか?
犀川先生・・・。
自分の意志で生まれてくる生命はありません。
他人の干渉によって死ぬというのは、自分の意志ではなく生まれたものの、本能的な欲求ではないでしょうか?」
P495からの話会話はとても興味深かった。
まぁ・・・私はどちらかというと最期くらい自分の意志で決めたいと思うけどね・・・
病気とか事故とかでは死にたくない。
私は、私の人生という舞台を、自分の意志とタイミングで下りたいと思ってる。
気分るんるんの天気の良い春の日に、崖から突き出した山桜の木で、首をくくって死ぬのが理想かな・・・。
すべてがFになる
私の人生の中で、最高のミステリー小説にランクインした。
・・・でも、本作を読んでいて、本当に怖かったのは、トリックとか殺害動機ではなく、
殺人事件真っ只中なのに、登場人物たちが笑ったりするのことよ・・・
誰が犯人かわからないのに、どうして誰も疑心暗鬼にならなかったのだろう・・・
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