タイトル:Steve Jobs スティーブ・ジョブスⅠ

著者:ウォルター・アイザックソン

訳者:井口耕二

発行:株式会社講談社

発行日:2012年11月15日

 

 

 

皆さんご存知、Apple Computeの創始者、スティーブ・ジョブス。その人の伝記である。

本書は2巻構成で、Ⅱもあるようだが、私にはⅠでお腹いっぱいだ。

 

今月記事にしたご冗談でしょう、ファインマンさん

カッコウはコンピュータに卵を産むがとても面白く、

初めてノンフィクションに興味が持てたので、今回も面白い人生ものがたりが読めるのではと思ったのだけど・・・

著者自身が書いていないからか、ちょっと期待と違ったなぁっていうのが正直な感想。

The ビジネス書って感じ。

 

 

スティーブ・ジョブスの生い立ちから入り、学生時代の話、Apple創業当時の様子などなど。

著者のウォルター・アイザックソンが、ジョブスの知人・友人・家族100名以上から話を聞き、それをまとめた、といった形式の物。

ジョブス自身がどう思ったのか、その時どう考えたのか、というのは、

ちょこちょこインタビューという形で出てくるが、詳細な部分はわからない。

それにしても―――

 

 

 

P7

ジョブスは上司としても人間としてもモデルになるような人間ではない。

 

 

 

本書の序章でそう記されているが、本当に、

本書を読み知ったスティーブ・ジョブスの人間性に関して、

私は反感を覚えずにはいられなかった。

 

部下を怒鳴る、煽る、暴言を浴びせる、屈辱を味合わせる、

自分の思い通りにならなければ泣く―――

感情のふり幅がすごい。

自分の意見に賛同しない者を『頭が悪い』と一蹴したり、

他人の提案をコケ下ろしておきながら、数日後にそのアイディアをまるで自分が思いついたかのように語ったり。

非常に薄情で、ともに頑張ってきた仲間に株の配当がない(そしてほかの見返りもない)、

ガールフレンドを妊娠させたのに、自分の子ではないと否定するなど・・・

 

 

 

昨年の秋まで、私は体育会系のイケイケベンチャー企業に勤めていたわけだが・・・

なるほど、納得。

あの社長、スティーブ・ジョブスのカリスマ性を真似ようとしたわけか・・・

(私の退職後に同期たちが次々とやめ、社長の知人と営業部を除けば、

5年以内の離職率100%という驚異的な数字を叩き出した)

 

 

 

ベンチャー企業やスタートアップ企業の社長、そして個人事業主の方。

間違ってもスティーブ・ジョブスの真似をしないように。

 

彼が成功したのは、その時代背景と業界と、優秀で理解ある仲間のサポートあってこそで、

彼の並外れた感性や知能・ひらめきだけではない。

現在の日本で、彼と同じことをしようものなら、あっという間に経営はうまくいかなくなるだろう。

 

 

 

ここまで彼について批判的な感じで書いてきたが、

本書からも彼の持つカリスマ性を感じ取れるのだから、

実際に会っていたら、彼の問題行動等目を瞑るくらい魅せられるのも無理ないことだろう。

 

 

P250

1月の研修会でジョブスが訴えたことがもうひとつある。

「海軍に入るより海賊になろう」だ。

どのようなものにも立ち向かう反逆者魂を持ってほしい、

むちゃくちゃをしながらどんどん先に進む冒険好きになってほしい、

自分たちがしていることに誇りを持ちながら、

まわりから次々と盗むチームになってほしい、と思ったからだ。

 

 

 

Appleの創始者となるくらい彼はテクノロジーやマーケティングで頭がきれるのに、

何故かスピリチュアルなことに傾倒しており、

ベジタリアンならシャワーは週に1度で十分だと思っていたり(P87)、

死因となったすい臓がんも、気合いで治ると信じていたりしたようだ(参照)。

特にこれといった信仰心を持たない私には、到底理解できない思考回路である。

 

 

 

うーん・・・

個人的には彼のこと好きになれないなぁ。

仲間は大切にしてほしいし、身近な人を傷つける言動もイヤかな・・・

偉大なことを成し遂げる人が、必ずしも"正しい"ことをしてるとは限らない。

(何を正しいと置くかは、個人の価値観に委ねられるが)

 

 

TOPの画像は以下からお借りしました!

りんご|シルエット イラストの無料ダウンロードサイト「シルエットAC」 (silhouette-ac.com)

さすがに齧ってあるのは(著作権的に)まずいかなと思って。