[0円随想小説] 七色の橋投げかけて稔るころ|としべえ@ぷち作家・ベンガル菩提樹の木陰にて インドの首都デリーから北方へ二百キロと少し、ヒンドゥー教の聖地ハリドワルの中心部に位置するマヤデヴィ寺に、ジローと妻のムーコは滞在していた。 九月に入って雨季のピークは過ぎているはずなのに雨が多い。が、それはむしろ暑くないからありがたいくらいの話だ。 問題は滞在している巡礼宿の部屋だった。 知り合いの行者のお陰で無料で貸し…note.com
[0円小説] 直球勝負のできない男|としべえ@ぷち作家ネパールでふた月と少しを過ごしたあと、ジローは妻と二人、また北インドのハリドワルに戻ってきた。 ハリドワルの中心部には、インド最大の行者の組織であるジュナ・アカラが管轄する二つのヒンズー寺がある。ベイロウ寺とマヤデヴィ寺である。 懇意にさせてもらっている行者の方が、今年の春からそのうちのマヤデヴィ寺の祭祀職(プジャリ)を担当することになったので、今回はそのプ…note.com
[0円随想小説] 八十年めの夏にヒマラヤの麓で|としべえ@ぷち作家今年は二千二十五年。極東の島国である我が国が、西欧の列強に無謀な戦いを挑んで、その当然の結果として、無惨な敗戦を受け入れてから八十年が経ったのか。 ジローはそんなことを思いながら、なぜ自分は今、ヒマラヤの山麓の国ネパールにいるのだろうとふと考えた。 妻のムーコとともに、ふた月ほど前に、過ごしなれた北インドのハリドワルを離れ、ビザの期限の関係でネパー…note.com
[0円小説] 世界の天井の麓にて|としべえ@ぷち作家生まれ育った極東の島国を初めて離れたのは、五年ほどかけて膨らみきった泡ぶく景気が一年をかけてしぼんでいった年の二月半ばのことであった。 そのときタイを経由して訪れたネパールでの三週間ほどの経験が、自分の人生の道行きを変えたのだとジローは確信している。 東京世田谷で生まれ育ったジローは、隣の目黒にある理科系大学に一浪したあとで引っ掛かって、そこで四年間の退屈…note.com
読書の友: ル=グウィン「オメラスを歩み去る人々」|としべえ@ぷち作家☆ル=グウィンの短編「オメラスを歩み去る人々」について、遠慮なくネタばらしをした上で紹介をしていますのでご注意ください。 合州国のsf作家アーシュラ・K・ル=グウィンの名は、ジブリがアニメ化した『ゲド戦記』の原作者として知っている人も多いかもしれません。 『ゲド戦記』のシリーズは魔法が支配する異世界を描いたファンタジーの物語ですが、一方、ル=グウィンの代…note.com
[0円独想] 只管打鍵のソラゴト経|としべえ@ぷち作家・悟りの三原則 ずいぶん昔に悟りの三原則というのを考えたんだ。 お釈迦さまは悟りを開いたっていうけど、そんなふうに言うほどの完全な悟りなんてあるもんかいな、と思ってね。 だからさ、第一原則は「完全な悟りはない」ってことになる。 ゴータマ・シッダルタという王子さまが二千五百年ほど前に出家して、悟りと言われるような、人間の意識が到達しうる限りの、とても高い極み…note.com
0円日記的散文三昧・ポカラ編|としべえ@ぷち作家2025/07/04 金 21:44 そろそろ寝たらよさそうな時間なのに、うっかりネット遊びをしそうになっちゃってさ、それなら何か書くかと思ったんだけどね。 頭はぼんやりしてるし、ちまちま親指二本で硝子面を撫でるのも面倒だから、やっぱりやめとくわ。 おやすみ、いい夢でも見たいところさ。 2025/07/07 月 10:11 今はそろそろ雨季だが、今日は朝か…note.com
[0円小説] 空き瓶の唄を歌おう|としべえ@ぷち作家何かを書きたいとはおもうのだけれど、何を書けばいいのやらと思いあぐねて、久しぶりに自動書記的に書いてみようかなと思った。 自動書記というのはフランス辺りのシュールレアリスムの人たちが考え出した手法で、論理的な思考に頼らずに、無意識的な心から自然に湧き出してくる言葉を書き留めるような綴り方のことだけれども、実例はあまり知らない。高等無形(正しくは荒唐無稽だが…note.com
[0円小説] 絶対低空飛行乃境|としべえ@ぷち作家新しく出発したいと思った。 さわやかに、はれやかに。 ところがそんな肯定的気分は、一瞬にしてつぶれるのが常だ。 となれば、新しくなどという思いは捨てて、また出発というような晴れがましさともおさらばをして、いつも通りの低空飛行を続ければいい。 そう、多少の浮き沈みはあるにせよ、低空飛行を続ける以外にはこの身の取りうる道などないのだと、はっきり目の前の現実を見れ…note.com
[0円随想] 振り返って過去を消す|としべえ@ぷち作家この間、聞かれたんですよ、昔はコンピュータのソフト屋だったのに、どうして今はインドでぶらぶらしてるんですか、みたいなことをね。 いや、本当はそんな聞かれ方をしたわけじゃなくて、ほら、今は瞑想なんかもそこそこしてるもんだから、そういう精神世界系の関心を持つことになったのは、どんないきさつがあったの? みたいな感じだったんですけど。 いきさつと言ってもねえ、…note.com