A . I .(7点) | 日米映画批評 from Hollywood

A . I .(7点)

採点:★★★★★★★☆☆☆
2001年7月2日(映画館)
主演:ハーレイ・ジョエル・オスメント、ジュード・ロウ
監督、脚本:スティーブン・スピルバーグ


 「この夏、新世紀のスピルバーグ、そして最大級のスピルバーグ」というキャッチ・コピーで宣伝していたこの作品。その通り、21世紀最初の「スピルバーグ」作品です。また本人自らが雑誌やテレビを通して、自分の集大成となる作品だと言っていたが、その通りだと感じました。確かに内容として、「E.T. 」や「未知との遭遇」などの初期の名作の香りがあちこちに漂いながらも、「ジュラシックパーク  」で確立した、CG技術も新たな一面を見せている。
 しかも彼自身が脚本を書いたのは1977年の「
未知との遭遇」以来、実に24年ぶり。
 公開前から何かと話題の大きかったこの作品ですが、その第一の要因はやはり、2人の巨匠が組んだ夢の企画ということでしょう。もともとこの企画は、鬼才として有名な
スタンリー・キューブリック
が温めていたもので、彼が死んでしまったあとを、友人であるスピルバーグが引き継いだという話は有名。それで大衆受けのしないキューブリックの難解な作品に、大衆受けする娯楽映画の作り手としてはおそらく世界最高のスピルバーグの色を添えた作品として、自分も期待してました。


【一口コメント】
 自分は好きですが、好みの分かれる作品です。でもスピルバーグの集大成と言えると思います。


【ストーリー】

 簡単に言うと、人間がロボットを生活の道具として使い、共存する時代に、ロボットに「愛」を入力させたらどうなるか?というのがテーマ。このテーマにそって、3部構成で話は進んでいく。最初は未来の家庭のドラマ。次が、主人公デイビットともう1人のロボット、ジゴロの2人の逃亡生活。そして最後は海底に沈んだ街の場面。


【感想】

 詳しい内容は避けるが、泣けそうな場面としては、最初の捨てられるシーンと、廃棄ロボットを破壊するお祭りで「まだ子供だろ」と司会者に物を投げつけるシーンがあったが、この2つは大丈夫。しかしラストシーン、デイビットの誕生日を祝うシーンで、誕生日ケーキの火を消す際に「叶えたい願いは何?」と聞かれて、次のように答えるデイビット。「もう叶ったよ。」この瞬間こらえていた涙がほほを伝わった。自分の周りにいた人たちも大半が泣いていた。
 ハーレイ少年は本当に演技がうまいなと、思った瞬間でもある。「
フォレスト・ガンプ 」でデビューし、「シックス・センス 」、「ペイ・フォワード 」、そして今回の「A.I.」とヒット作に立て続けに出演しているだけのことはあるなと感じました。多くの人も同じことを考えていると思いますが、あの「ホーム・アローン」で有名なカルキン君と同じようにグレてしまわないで欲しいです。

 3部構成になっていると書いたが、そのうち最初と最後はスピルバーグの色、真ん中の部分はおもいっきりキューブリックの色が出ていたように思う。おそらく、スピルバーグだけの色を求めて見に行くと途中のシーンは少し理解し難いかもしれない。逆にキューブリック色を求めていくと、最後は物足りないかもしれない。
 もともとこの2人はタイプが異なる。キューブリックは完璧主義者で、何度も何度も自分の納得のいくまで同じシーンを何度も撮りなおす。それがあまりにもひどいため、途中でボツになった企画も数知れないし、1つの作品が完成するまでにかなりの時間を費やす。逆にスピルバーグはかなりの短期間で撮影を終えてしまう。今回の作品もこの規模の映画としては異例の68日で撮影終了。神様スピルバーグだからこそ成せる業だ。
 また作品の傾向も、キューブリックの作品は、自分の芸術性というか、世界をとことんまで追及しており、1回観ただけで理解するのは困難な内容のものが多い。一方、スピルバーグの作品はまず娯楽性のあるエンタテイメント性の高い作品が多い。(もちろん例外もあるが・・・)
 そんな2人の個性をどうまとめていくのだろうか、というのもこの作品の見所だったが、序盤と終盤はスピルバーグ、中盤はキューブリックという流れで実現させた。まったくタイプの異なる2人の監督の色をどちらも殺さずに共存させる、おそらくこんなことができるのはスピルバーグしかいないだろう。
 結論としては、これは賛否両論分かれる映画だと思う。自分はかなりお気に入りだが、自分の周りでは悪くもないけど、よくもないとか、メチャクチャ泣けたとか、いろんな意見が飛び交ってますが、でも悪かったという意見は聞かないので、おそらくヒットするでしょう。