ペイ・フォワード [可能の王国](9点) | 日米映画批評 from Hollywood

ペイ・フォワード [可能の王国](9点)

採点:★★★★★★★★★☆
2000年2月16日(映画館)
主演:ハーレイ・ジョエル・オスメント、ケビン・スペイシー、ヘレン・ハント
監督:ミミ・レダー


 「Pay Back」(払い戻す、返報する)という意味の言葉はあるけど、「ペイ・フォワード」(原題はPay It Forward)。このような言葉は英語の辞書には載ってません。これは主人公のトレバーが作った造語で、映画の中では「善意の先送り」と訳されていた。

【一口コメント】
 2000年に見た中で今のところ最高の映画です!!


【感想】

 中学校の社会の授業で「もし世界を変えたいと思ったら、何をするか?」という問いに対して、トレバーはこの考えを思いつく。人から恩や思いやり、善意を受けたら、その人に返す代わりに他の3人に善意で報いるというもの。言われてみれば、ねずみ講の逆パターン(「リング」のビデオは逆に2人に見せれば、命が助かるという設定だった)。単純な発想だけど、これが実行するとなると、難しい。確かにこれを実行できれば、世界は変わるだろう。人から何かをしてもらって、嬉しくない人間などいないだろうから、他の人にも分けてあげようという理屈はわかる。が、ここが一番難しいところでもある。その人に恩を返すのならわかるけど、他の人に・・・となるとなぜか躊躇してしまうものである。映画の中では、雨の日に車をおじゃんにしてしまったTVレポーターのところに、たまたま通りかかった金持ちが「ペイ・フォワード」だからと車をくれる。(実際にこんなことがあったら、すごいと思うし、世の中そうなればいいとも思う。)それでこのレポーターがこの「ペイ・フォワード」の起源を調べ始めるところから映画は始まる。

 発案者のトレバー自身は、父親が出て行ってしまった一人身の母親と、これまた一人身の教師を結びつけようとしたり、ホームレスを家に泊めたりと努力するが、なかなか理想どおりにはいかない。しかし、トレバーの知らないところで、この運動は広がり、冒頭のシーンにつながっていく(この途中経過もなかなか面白い)。

 そしてラストシーンでは、・・・映画の世界に入っていたら、必ず泣ける。そして観終わった後、こう思うはずです。「自分もペイ・フォワードしよう!」と。

 最後のほうでレポーターがトレバーを発起人としてインタビューするシーンがある。その中で、印象に残っているトレバーの言葉を書いて、終わりにしたいと思う。

 「困難だから本物なんだ。勇気を出しさえすればできるんだ。でも中にはとても臆病な人達もいる。変化が怖いんだ。本当は世界は――思ったほど――クソじゃない。だけど日々の暮らしに慣れきった人たちは良くない事もなかなか変えられない。だから諦める。でも諦めたら――それは負けなんだ。すごく難しいことなんだ。もっと周りの人が、どういう状況か、よく見る努力をしなきゃ。守ってあげるために心の声を聞くんだ。直してあげるチャンスだ。自転車とかじゃなく・・・人を立ち直らせる。