患者と家族のために専門医・指導医が語るリウマチの話

患者と家族のために専門医・指導医が語るリウマチの話

リウマチ・膠原病で困っている患者様とそのご家族に、リウマチ専門医の吉田智彦が正確な情報を提供するブログです。

リウマチ・膠原病の診療をしている専門医です。困っている患者さんとその家族に正しい情報を届けたいという思いから、当院のリウマチ専門医、リウマチケア看護師、理学療法士などのメンバーと共にブログを書いています。
東京都世田谷区と長野県埴科郡坂城町の2施設でリウマチ膠原病の診療をしています。

東信会『絆』通信

がん予防

 

医療法人社団東信会

世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院 

新宿スカイビル健診テラス 

東信よしだ内科・リウマチ科 

世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷

吉田智彦

 

 

  「けんしん」とは

①健診:健康であることの確認
•将来の疾患のリスクを階層化してレベルに応じた保健指導を行うことで行動変容を促す


•労働安全衛生法:
職場における労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進する


•健診については第66条で規定
事業者の実施義務、労働者側の努力義務
 

②検診:特定の疾患を発見する目的で行われるもの。がん検診
対策型:集団全体の死亡率を下げるために行われる。市区町村が住民を対象に健康増進事業として行う。


任意型:個人が自分の死亡リスクを下げるために受ける。人間ドック健診。

 

 

  がんと生活習慣

•日本で生涯に一度はがんに罹患する人の割合は2人に1人


•高齢者ほどかかりやすいイメージではあるが、生活習慣病としての側面も大きい


•がん対策基本法(平成18年)
喫煙、食生活、運動その他の生活習慣及び生活環境についての正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うようにしましょう

 

 

  発がんに関わるリスク・予防要因①

•喫煙
固形がん(口腔、咽頭、鼻腔・副鼻腔、喉頭、肺、消化管、肝臓、すい臓、腎臓、膀胱、子宮頸部、卵巣)、骨髄性白血病
 

•受動喫煙


 

•アルコール摂取

口腔、咽頭、喉頭、消化管、肝臓、乳房

 

 

  発がんに関わるリスク・予防要因②食物

  がん予防法

•禁煙、受動喫煙の予防
非喫煙者に対して喫煙者のがん全体のリスクは1.5~2倍
受動喫煙について、夫が喫煙者である場合、妻の肺がんリスクは1.3倍(非喫煙女性3万人の対象研究)
心筋梗塞、肺炎の予防にもなる


•禁煙支援
禁煙補助薬:自力での禁煙に比べて禁煙率が3,4倍高い
バレニクリンが保険適用になった
ニコチンガムに続き、ニコチンパッチもOTCで購入できる
電子タバコには議論が残る

 

•節酒
一日当たりアルコール量23gまで
(日本酒一合、ビール中瓶一本、焼酎・泡盛2/3合、ウイスキーダブル一杯、ワインボトル1/3本)
男性で一日約46g以上の飲酒で発がんリスク1.4倍、69g以上で1.6倍に上昇
一方、ある程度の量の飲酒は心筋梗塞、脳梗塞のリスクを下げる

 

•塩蔵食品、食塩の接種は最小限
食塩の目安は一日当たり男性7.5g、女性6.5g
塩辛、練ウニなど高塩分食品は週に一日まで
2019年調査では20歳以上の平均として、男性10.9g、女性9.3g
目標値達成しているのは3割弱と推定


•野菜や果物を積極的に
一日400g以上を目標(小鉢で5皿、果物1皿くらい)
日本人20歳以上の平均値は約370g(2019)

 

•日常生活を活動的に
歩行・それと同等以上の強度の身体活動を一日60分
息がはずみ、汗をかく程度の運動は一週間に60分
65歳以上では仰臥位や座位以外ではどんな運動でもよいので一日40分以上

 

•体形は適正な範囲に(<BMI25)
肥満とがんの関係は日本ではそれほど強い関連はないとされる


•感染対策(肝炎ウイルス、ピロリ菌などの検診)


参考文献健診・人間ドックハンドブック

 

 

 

医療法人社団東信会

統括院長 吉田智彦著書🔻

🏆三省堂書店池袋本店売上ベストランキング1位獲得🏆

ご購入はこちらから▶︎

 

 

 

東信会『絆』通信

座りすぎとそのリスク

 

医療法人社団東信会

世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院 

新宿スカイビル健診テラス 

東信よしだ内科・リウマチ科 

世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷

吉田智彦

 

 

  座る時間が長いのは健康に悪い?

•「座り仕事健康」で検索・・・例Active Heath Lab
•エコノミー症候群?足がむくむ?静脈瘤?腰痛?

座りすぎは喫煙と同じ|福岡市天神の産婦人科|野崎ウイメンズクリニック【公式】

 

 

  日本は座っている時間が長い国

調査対象者の2割が昼食・トイレ以外で「休憩を取らない」
(H28雪印メグミルク
「今どきの仕事スタイル調査」)
コメント
お手洗いと昼休み以外デスクに張り付いている日がある・・
お昼もデスクでお弁当を食べることが多い・・
用がなければ座って仕事をしてないといけない雰囲気・・

 

  座位時間と死亡率

•京都府立医科大学の研究
•Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study(アメリカ心臓学会2021年6月掲載)
•6万人を超える日本人を平均7.7年間追跡した
•日中の座位時間と全死亡(全ての死因を含む)の関係を生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の有無と余暇時間の運動量に分けて検討した

 

  結果

•仕事中の時間および余暇時間を含む全ての日中の座位時間が長いほど死亡と関係する。日中の座位時間が2時間増えるごとに、死亡リスクは15%増加する。
•高血圧、脂質異常症、糖尿病の有無に関わらず、日中の座位時間の長さに伴い死亡リスクが高くなる。
•高血圧、脂質異常症、糖尿病を合併していれば、さらに死亡リスクが高くなる。(脂質異常症では18%、高血圧では20%、糖尿病では27%の死亡リスク増加)
•余暇の身体活動量を増やしても、日中の座位時間が長ければ死亡率は高いままである。

 

•日中座位時間が7時間を超えると死亡率が明らかに上昇

座りっぱなしは、将来の死亡リスクに直結! テレビ時間を減らし、こまめにからだを動かしましょう | 医療法人 澄心会 豊橋ハートセンター

 

  座りすぎると消化管にも悪影響

•中国浙江大学医学部のJie Chen氏らのゲノム研究(2024年4月掲載)
•胃食道逆流症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、憩室症、クローン病、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、胆管炎、胆嚢炎、胆石症、急性膵炎、慢性膵炎、急性虫垂炎
•運動すると8疾患のリスク低下と関係していた。
(★座位時間で調整すると相関関係は弱くなった)
胃食道逆流症、胃潰瘍、慢性胃炎、過敏性腸症候群、胆嚢炎、胆石症、急性膵炎、慢性膵炎

 

  職場の工夫に関する研究

•英国Leicester大学のCharlotte L Edwardson氏ら(2018年10月BMJ掲載)
•勤務時間中に座ったまま仕事をする時間が長い事務職の人々(18~70歳で、週に3日以上フルタイムの6割以上の時間を同じデスクを使って働いている。自己申告で勤務時間の75%以上を座って作業している)を対象とした。
•介入群と非介入群に分けて検討した。

 

  介入方法

•組織対策として、トラストのCEOと話し合い協力を取り付けた。CEOが定期的に送付する電子メールレターで、管理者グループにも介入に協力するように連絡してもらった
環境対策として、高さが調節できる机を提供し、座っていても立っていても作業できるようにした。PCのモニターやキーボードも机といっしょに高さを変更できるようにした。使い方を指導すると共に、人間工学的に適切なセットの仕方も指導した。
教育セミナーを行い、座り続けることがもたらす弊害と、規則的に立ち上がるメリットについて説明した。介入群の参加者には、勤務中に座っている時間を減らすための目標と行動プランを立ててもらった。さらに椅子の上にセットするDarma社の特殊なクッションを提供し、座り続けている時間をスマートフォンでモニターでき、あらかじめセットしておけば30分または45分毎に振動で知らせるようにした。
•介入継続中も参加者をサポートできるように、3カ月毎に直接面談または電話でコーチングセッションを行った。参加者の状況を話し合い、目標と行動プランを見直し、立っている時間を増やす妨げになる個人や職場の事情を改善するようにした。話し合いの後で、ベースラインとその後のデータを比較した結果を伝えて、プランの見直しに役立ててもらった
•非介入群は、健康評価時点で測定した体重や血圧などの計測結果のみが伝えられた。アドバイスやセミナーなしに、それまで通りの生活を続けてもらった。

 

  これだけ頑張った成果は・・

•12カ月後には、就業日1日当たりの座っていた時間は、ベースラインに比べ介入群では-72.0分減少しており、対照群では+9.2分増加していた。
•介入群では、職場で1日に30分以上連続して座っている時間と、立っている時間が6カ月時点と12カ月時点の両方で有意に改善していた。
•6カ月時点と12カ月時点の業績、仕事に対する主体性、疲労からの回復、不安、QOLは介入群で良好だった。

 

  身近な実践例

正しい座り方
少し浅めに腰掛けて背もたれに寄りかからない。
腰の骨を心持ち前に突き出す感じで腰を伸ばす。
肩の力を抜く。
軽く顎を引く。
脊柱のS字カーブにそった姿勢をイメージする。
足を組まない

 

ストレッチ
エコノミークラス症候群 予防のための足の運動

 

 

  環境づくり・組織づくり

•スポーツエールカンパニー(スポーツ庁認定。2018年度347社):机の高さを調節して立ちながらデスクワークができる昇降式デスクを導入している企業や、朝や昼休みなどに体操・ストレッチをするなどの運動機会の提供、階段の利用や徒歩・自転車通勤の推奨、あるいはスタンディングミーティングを実施する企業。
•職場のコミュニケーション活性化と健康への配慮をしている企業を表彰する。

•例)東京都江東区のサイショウ.エクスプレス株式会社
ドライバー向けにトラック運転席でもできるヨガを学ぶ機会を設ける
荷物搬入の待機時間に使えるヨガスタジオを倉庫の空きスペースに作る
•例)岡山県岡山市の株式会社両備システムソリューションズ
全従業員でのラジオ体操・おふぃえく(オフィスで行う簡易エクササイズ)の実施で、運動の習慣化とコミュニケーションの活性化を実現
「肩こり解消」の簡易手順書のリフレッシュコーナーへの掲示
社員提案でバランスボールでのデスクワークの導入

 

 

医療法人社団東信会

統括院長 吉田智彦著書🔻

🏆三省堂書店池袋本店売上ベストランキング1位獲得🏆

ご購入はこちらから▶︎

 

 

東信会『絆』通信

職場のメンタルヘルス

医療法人社団東信会

世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院 

新宿スカイビル健診テラス 

東信よしだ内科・リウマチ科 

世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷

吉田智彦

 

  メンタルヘルスに注意

• 新入社、転職、異動、転勤、昇進・・・ 

• 家庭でも子供の進学、家族の転勤・・・

• 環境の変化がめまぐるしくてついていけない・・・

• ラインケアは職場におけ る、一番最初の他者から の気づき

 

  ラインケアとは

• 労働者と日常的に接する管理監督者が、心の健康に関して職場 環境等の改善や労働者に対する相談対応を行うことをいいます。

• 管理監督者:部長、課長などの役職者 使用者である事業主から、労働者である従業員に対して、指揮・

命令を行うための権限が委譲されています。

この権限に基づい て、管理監督者は、部下に指揮命令をして業 務を遂行したり、部下の評価をしたりしています。

管理監督者には部下である従業員の健康を配慮する役割も求めら
れています。

 

  部下の様子がいつもと違う・・

 

あなたの部下には、こんな様子はありませんか?

勤怠に関して

1、遅刻、早退、欠勤が増える

2、残業、休日出勤が不釣り合いに増える

3、休みの連絡がない(無断欠勤がある)

仕事に関して

4、仕事の能率が悪くなる

5、業務の結果がなかなか出てこない

6、報告や相談、職場での会話が無くなる(あるいは多弁になる)

行動に関して

7、表情に活気が無く、動作にも元気がない

8、不自然な言動が目立つ

9、ミスや事故が目立つ

10、服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

・メンタルヘルスの不調について、 労働者本人が気づいていない場 合も多々あります。

・管理職を中心に周囲の人が早期 に変化に気づくことができれば、 メンタルヘルス不調に陥る前に 対処できます。

・管理監督者が部下の話を聞き、 産業医のところに行かせる、あ るいは管理監督者自身が産業医 のところに相談に行く仕組みを 職場内に作っておくことが望ま れます。

 

  まずは面談

 

1,相手を受け止める

相手に対して関心を持っていることを表情や態度で相手に伝える。

 

2,相手の立場に立つ

もしも自分が相手と同じような立場に置かれていたら、相手と同じようなことを言ったり、したりするんだろうなと考えながら、話を聞く。

下矢印

 

そうすることが、話の聞き方が批判的になることを防ぎ、相手に話を聞いてもらっているという気持ちを持たせる。

 

• 安心して話せる場をつくる
• 聞き届けられたという安堵感

• 気をつけたいのは、「わかります、辛いですね」のバーゲ ンセールは逆効果

→「そうやすやすとわかられてたまるか」反発のもと

★個人情報には気をつけて

 

  支持的傾聴

• 症状はその人が抱えられない部分が表出されたもの。なんとか環境に対応しようとした結果

→症状の裏には何かが隠れている。これまでのやり方では無理があったんではないか? 症状がある状態は悪いことではなく、今後を考える大切なきっかけ。

 

★話を聞くポイント

• 「何とかしてくれ」という訴えをいったん聞く側で保持する→支持的

「容器」をイメージする→支持的

例)×そういう性格がだめなんだ、もっとこうした方がいい!こうすべきだ!

・認証:「なるほどね、あなたの今の状況ならこういう症状があるのも無理はないのかもしれない」

・相手の言葉を繰り返して、わからないところをもっと詳しく質問してみる。なぞるような 気持ちで要点を繰り返す。

・話を聞く方の態度はコロコロ変わってはいけない→「話しても休まらない」不信感を招く

・焦点を「今」におく。例)×そんなやり方をしたからこういうことになったんだ 「今までのやり方も良かったけれども、今後のために、少しやり方を変えてみない?」

 

  そのほか面談のポイント

ゼロポジション
• 相手に対する先入観をなくす 

例)遅刻が多いらしいので、だらしない人だろう パワハラを疑われているから、威圧的な人だろう
• 「しかし、でも」は使わない。「それからどうなりましたか」 →否定しないで聞いてくれる安堵感

ペーシング
相手と同じ状態を意図的に作り出す。共感性が高まる。
声の調子やテンポ、雰囲気を合わせる。視線を合わせる。オウム返し

 

うなづきと相槌

 

  早めに産業医へ

• 憂鬱そう。休みや遅刻が続いている。服装が乱れている • 眠そう、食欲が落ちている

★元気だったころと比べて、日常生活や仕事が捗らなくなった状 況が2週間以上続く場合

 

  休職中のケア

• 極力仕事から離れて休養してもらう。面談のために会社に呼び 出す、電話するのはやめる

※休職者から自ら希望した場合には、事業所に来てもらって面談 するのは問題ない。ただし、往復の労災はおりない。

• 職場とのつながりが全くなくなると孤独感につながる。業務上 関係のないスタッフが月一回程度、連絡をとる。

 

  復帰後のケア

• 復職支援は事業所で様々な違いがある
• 試し出勤:休職中の身分のまま、事業所にきてもらって簡単な作業をする • 試し出勤が難しい場合もある

復職支援プログラムの一例
  • 午前中半日の時短勤務を2週間→ないところも多い

  • 残業禁止8時間労働を2か月(出張、外出、休日勤務、深夜業務は禁止)

  • 残業1日2時間まで、月計30時間までの残業制限を2か月(出張やシフト勤 務は本人と相談。海外出張や深夜業務は禁止)

    あらかじめ復職支援プログラムを設定しておくことが重要。慌てなくて済 む。フェアな対応ができる。

  •  体調も安定せず、ストレスにも過敏になっている。

  • 「職場では自分はどう思われてい るのだろうか」、「職場にう まく適応できる だろうか」、「病気がまた悪くなるのではない だろうか」など、様々な心配をしながら出社しています。

  • 本人とよく話して環境調整や業務調整をする。

  • 症状の再燃もありうる。勤怠の様子、業務態度をよくチェックして、復帰ステップを再考する。再休職もありうる。

★コミュニケーションがカギ
 

厚労省 メンタルヘルス対策のポイント

https://www.mhlw.go.jp/content/000615723.pdf

 

 

 

 

 

医療法人社団東信会

統括院長 吉田智彦著書🔻

🏆三省堂書店池袋本店売上ベストランキング1位獲得🏆

 

 

 

 

東信会『絆』通信

 

アレルギー性鼻炎

 

医療法人社団東信会

世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院 

新宿スカイビル健診テラス 

東信よしだ内科・リウマチ科 

世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷

吉田智彦

 

 

  アレルギー

「花粉症」ってなに?

アレルギーとは

抗原(アレルゲン)の再侵入による抗原抗体反応の結果として惹起 される、生体にとって好ましくない病的反応

要因

遺伝性要因:アトピー性皮膚炎、喘息

環境要因:ダニ、花粉(スギ、ヒノキ、イネ科、キク科など)、食 物、真菌(カビ)、ペット、その他(ラテックス、大気汚染など)

 

  アレルギー反応は4つ

I型 

アレルゲン(原因物質)と接触→IgE抗体(タンパク質)が過剰に作られる→IgE抗体はマスト細胞(白血球の種類)と結合してマスト細胞からヒスタミン(かゆみのもと)が放出される

II型 

アレルゲンが抗体に結合して、自己細胞がアレルゲンとなって細胞を傷つける

 • III型 

抗体が複合体を形成して、補体(タンパク質)を活性化。組織が傷害される
IV型

リンパ球(白血球の一種)がサイトカイン(炎症物質)を放出して組織が傷害される。 抗原接触から24~72時間後に発症する遅発型

 

  アレルギー性鼻炎

• I型アレルギー
• くしゃみ、水様性鼻漏、鼻閉
• 通年性と季節性
• 花粉症: 季節性アレルギー性鼻炎の一種。アレルギー性結膜炎を伴う。

 

  花粉症の疫学

• 1964年に日光地方で花粉症第一号21症例が報告された
• 1960年ごろからスギ植林の手入れが疎かになった。花粉生産能力の高い樹齢30歳頃、1990年代になって花粉飛散率が大幅に上昇した。

 • 有病率:

10%(1986年)→19%(1996年)→28%(2006年)→46%(2016 年)

 

  検査・診断

• アレルギー性か否か

問診(掻痒感があるか)

鼻腔内所見(粘膜が腫脹、水様性分泌増加)、血液検査(好酸 球)、血性総IgE抗体定量

• 抗原同定試験

皮膚テスト、血性特異的IgE検査、鼻誘発試験(くしゃみ、掻痒感、 粘膜の腫脹蒼白、水様性分泌)

 

  治療

自然治癒は少ない(スギ花粉の自然治癒率は10%)
• 抗原除去、回避:花粉は防ぎきれない
• 薬物療法
• アレルゲン免疫療法:唯一、治癒、長期寛解を期待できる

• 手術療法

 

  薬物療法

• マスト細胞安定薬
クロモグリク酸、リザベン®、ソルファ®
• 抗ヒスタミン薬:第一世代、第二世代
• 抗ロイコトリエン拮抗薬 プランルカスト(オノン®)、モンテルカスト(シングレア®)
• ステロイド 鼻噴霧ナゾネックス®、アラミスト®など。全身性副作用少なく常に使用を考慮していい 経口セレスタミン®
• 生物学的製剤:抗IgE抗体(ゾレア®):最重症に適応

• 治療は、まず第二世代抗ヒスタミン薬(市販薬)→鼻噴霧ステロイド→抗ロイコトリエン薬など

受診推奨目安
• 市販薬を一週間ほど服用しても症状が改善しない • 症状が改善しても2週間以上服用する場合

 

  抗ヒスタミン薬って?

第一世代:効果が強く、即効性が高い。 副作用眠気も強い

第二世代:市販薬。眠気が出にくい。 即効性には欠け、シーズンの2週間ほど 前から服用する必要がある

参考:ラククル

 

  代表的な薬の特徴

アレロック(一日一回)、ザジテン(一日2回):病院処方。効き目が強く、鼻閉に効果的

ザイザル:一日1回。効果はしっかり、眠気は少なめ。バランスが いい

ビラノア:病院処方。眠気が少ない。空腹時に内服する。一日1回 

アレグラ:眠気が一番少ない。車の運転にもおすすめ

 

  アレルゲン免疫療法

・ アレルゲン注射 週に1度の注射(通院)を4~6ヵ月。以降は1~2ヵ月に1度。 

・ 舌下免疫療法 薬を毎日服用。最初の1ヵ月以降は、月に1度の通院(処方)

持続性あり(15か月中止しても次の2~3シーズンは持ちこたえる) 治療した人の 80%が症状の軽減、または寛解

治療には2~5年の期間を要する。 どちらも花粉が飛散している時期は、治療を開始することができない アナフィラキシー(重症アレルギー反応。最悪の場合死亡)のリスク

 

  予防

<メガネやマスクの効果>

• 通常のマスクでも花粉をおよそ70%削減し、花粉症用のマスクではおよそ84%の花粉を減少させる

• メガネを 使用しない場合に比べて眼に入る花粉量は通常の眼鏡 でおよそ40%減少し、防御カバーのついた花粉症用のメガネではおよそ65%も減少

• 花粉の飛散している季節にコンタクトレンズを使用すると、コ ンタクトレンズによる刺激が 花粉によるアレルギー性結膜炎の 症状を悪化させる可能性があるため、メガネに替えた方がよい

 

  マスクは大事

box0

 

インナーマスクの作成方法 

 

材料:市販のガーゼと化粧用のコットン 

 

① ガーゼを縦横10cm程度に切り、2枚用意 

 

② 化粧用のコットンを丸めて、1枚のガーゼでくるむ(インナーマスク) 

 

③ 市販の不織布のマスクにもう1枚のガーゼを4つ折りにしてあてる 

 

④ 鼻の下にガーゼでくるんだコットン(インナーマスク)を置く 

 

⑤ ③のガーゼをあてたマスクを装着する ⑥ 息が苦しい場合にはコットンの厚さを半分にする

 

インナーマスク作成方法.jpg

参考:環境省「花粉症環境保健マニュアル2014」

 

 

 

医療法人社団東信会

統括院長 吉田智彦著書🔻

🏆三省堂書店池袋本店売上ベストランキング1位獲得🏆

 

 

東信会『絆』通信

 

睡眠について

 

医療法人社団東信会

世田谷リウマチ膠原病クリニック新宿本院 

新宿スカイビル健診テラス 

東信よしだ内科・リウマチ科 

世田谷リウマチ膠原病クリニック 祖師谷

吉田智彦

 

 

  冬はなかなか起きられない・・

  • 冬は日の出の時間が遅くなり、日照時間が短くなる
  • 光の刺激で覚醒しやすくなるので、日の出が遅くなれば目覚める時間も遅くなる
  • 明るい時間に覚醒、暗くなると眠る概日リズムは気分の調整に重要で認知能力にも関係している
寝ているの男性のイラスト(睡眠)

 

  概日リズム

  • 催眠作用のあるメラトニンが関係している
  • 脳内の視交叉上核が光刺激に反応してノルアドレナリンを分泌→松果体からメラトニン分泌が抑制される
  • 日中にはメラトニン分泌が低く、夜間に分泌量が十数倍に増加する
  • 昼夜の区別のない環境(窓のない密室内など)でも、体内時計によって日内変動がでる
  • 強い照明(1000ルクス、コンビニの店内など)を浴びれば、夜間であってもメラトニン分泌量は低下する
  • 体内時計と環境光の両方から調節を受けている
  • メラトニン関連睡眠薬も使用されている。
概日リズム睡眠障害イラスト
 

 

  正常な睡眠とは

  • 健康な成人では平均7.5~8.5時間(個人差がある)
  • REM睡眠、NonREM睡眠が70~120分おきに4~6サイクル繰り返される。
  • REM睡眠:急速に眼球が動き、筋緊張は消失している。→頭は起きていて、体は眠っている。記憶の整理をしている。金縛り。夢を見る。一晩のうちの15~25%
  • NonREM睡眠:急速眼球運動は消失。筋緊張みられる。→頭は休んでいて、体は起きている。寝返りができる。

 

  睡眠の機能

  • 活動に適さない時間帯に無駄なエネルギーを使わないようにする
  • 脳が活動しすぎないように積極的に脳を休ませる→睡眠不足では集中力、記憶力、思考力が低下する
  • 脳下垂体から成長ホルモンが分泌される→子供では身体の成長、大人では組織の損傷を回復する
  • 免疫物質が睡眠を促進、睡眠自体も免疫物質の分泌を促進する

 

  日本の睡眠時間

 

OECDの睡眠時間調査結果を基に厚生労働省が作成したグラフ(厚生労働省「良い目覚めは良い眠りから・解説書」から)(厚生労働省提供)

 

  睡眠にまつわるエピソード

 

 

  日本人の1/3が6-7時間未満

 

 

  睡眠時間6時間未満の心身への影響

・心身の不健康と有意に関連

 Ohtsu T et al; Acta Med Okayama.2012; 66(1):41-51)

・有意に風邪にかかりやすい

 (Prather AA, et al. Sleep.2015 Sep 1;38(9):1353-9)

・睡眠時間6~8時間では自覚的ストレスが低い

 (杉田ほか Prog Med 35;53~57.2015)

平日の残業時間3時間以上で睡眠時間6時間未満と関連がある

( Ohtsu T et al;J Occup Health.2013 ; 55(4):307-11 )

時間外労働が1日5時間を超えると睡眠時間は著明に短縮する

(平成20年度 厚生労働科学研究報告書)

 

 

  対策

睡眠時間1時間をどう捻出するか・・

・深夜残業をやめる

ノー残業デーだけでも早く帰る、昼休みに短時間の仮眠をとる(仮眠前にカフェインも摂取すると効果増大)

・寝る前のスマホ・PCをやめる

寝床でのスマホ・タブレット使用は睡眠不足、睡眠の質の低下、日中の過度の眠気を誘発する

(Carter B,et al: JAMA Pediatr, 2016Dec 1:170(12):1202-1208)

ブルーライトを浴びない

 

  治療対象となる不眠

・「寝つきが悪い、途中で起きる、熟眠感がない」週3回以上

・一か月以上続く

・生活に支障をきたす

 →精神科、心療内科を受診励行

 

いきなり受診するのはハードルが高い・・

いきなり薬をのむのは怖い・・・

→まずはワークブックもおすすめ

『自分でできる「不眠」克服ワークブック』

 

  不眠関連疾患

不眠症

原因はストレス、精神疾患、神経疾患、アルコール、薬剤の副作⽤など多岐。うつ病など精神疾患との関連も濃厚。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に10秒以上の呼吸停⽌を繰り返す。酸素飽和度が低下するため、⽇中の眠気や倦怠感などが⽣じる。また、酸素飽和度の低下は⼼臓や⾎管に負担がかかり、脳卒中、⼼筋梗塞など重⼤な病気のリスクになる。

ナルコレプシー

充分な睡眠をとったにも関わらず昼間に強い眠気が襲い、意思とは関係なく寝てしまう

周期性四肢運動障害

瞬間的な筋⾁の痙攣が起こり、寝付けない。鉄が不⾜する貧⾎や腎不全などの病気に伴って出現することが多く、 鉄不⾜によりドパミン産⽣が妨げられることが⼀因

 

  眠れない時の12の指針

・睡眠時間に縛られない、日中眠くなければ大丈夫

・刺激物は避ける、寝る前には自分なりのリラックス法を

(就寝前4時間のカフェイン、就寝前1時間の喫煙は避ける)

・眠くなってからベッドへ。就床時刻にこだわらない

・同じ時刻に毎日起床

・目が覚めたら光を浴びる

・3食規則正しく、規則的な運動

・昼寝は15時前に20-30分

・眠れない時は積極的に遅寝、早起きに

・激しいいびき、足のぴくつき、ムズムズ感は治療が必要

・十分寝てもまだ眠いときは治療が必要

・寝酒はむしろ睡眠を浅くする

・睡眠薬は医師の指示に従って使えば安全。ただしお酒との併用は禁止