子どもが問題行動を起こしたら、怒鳴ってでもしつけないといけないと思っている親御さんは多いかもしれません。

 

でも、まず、大人から見て問題に見える行動も、子どもにとっては好奇心から来る学びの機会である場合があります。そういう場合には、その好奇心を満たす、より好ましい方法を提案することで、問題行動はなくせますし、学びの機会を無駄にしません。

 

たとえば、壁に落書きしてしまうとき、「ああ、おっきな絵が描きたいんだね。でも壁に直接描くと消せないから困っちゃうんだ」と言って壁中に模造紙を貼って、「ここなら好きに描いていいよ」と環境設定してあげればいいのです。

 

もちろん、普段の生活のなかでいきなりやられたら、こんな穏やかに言えるわけがありません。ここではあくまでも理想論を言っています。

 

言葉にできないストレスや不快感の表現として問題行動を起こすこともあります。そんなときに、厳しく𠮟ったり怒鳴ったりすれば、子どものストレスは増し、問題行動もますます派手になります。そんなときはむしろ自由を与えることで、子どもの問題行動は低減します。

 

子どもをできるだけ自由にするには、事前の環境設定が重要です。たとえば、子どもに触ってほしくないものは子どもの手の届くところに置かないようにするなど、環境設定に配慮してあげることで、怒る回数を減らせます。

 

ちょっと前までは「子どもが悪いことをしたら叩いてでもしつけなければ。それが親の責任」みたいな思想が世の中に蔓延していました。でも、2019年6月に児童福祉法等改正法が成立し、親権者等は、児童のしつけに際して、体罰を加えてはならないことが法定化され、翌年年4月に施行されました。

 

悪いことをしたのでお尻を叩いたというのはもちろん、おしおきのために長時間正座をさせるとか、宿題をやっていなかったから夕食を与えなかったみたいなことも体罰です。子どもにも人権がありますから、尊厳を傷つけるような暴言をぶつけることも許されません。

 

そんな認知が広がったからでしょうか。昔は町中で、結構な勢いで子どもを叱りつける親御さんをみたものですが、最近はずいぶんと減った印象があります。子どもがぐずってもいまの若い親御さんたちはとっても上手に対応しているなと感心してしまいます。

 

最高のしつけは、親が手本を示すことです。あいさつをする、だらしないことをしない、噓をつかない……。親が当たり前のようにそうしていれば、子どもにとってもそれが当たり前になります。子どもが好ましくない言動をするときは、たいがい、親が同じことをしているのです。子どもの振り見て我が振り直せということです。

 

日常的に親が手本を示したうえで、子どもの好ましい言動には「ありがとう」「うれしいよ」、好ましくない言動には「残念だな」「悲しいよ」と落ち着いて伝えていれば、ほとんど𠮟ったり怒鳴ったりすることなくしつけはできるのではないかと私は考えてます。

 

あくまでも理想論であり、私だって怒鳴っちゃうことはしょっちゅうありましたけど……。人間だから。

 

 

※2024年8月8日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。