知り合いのお母さんから最近聞いた話です。

 

ある日、児童館の館長から電話があったそうです。日中は息子さんを受け入れないことが決定しましたという内容。

 

この小学生は不登校の状態にあり、家庭以外では唯一児童館が居心地の良い場所であり、学校に行く代わりに、児童館に朝の九時から夕方までいることも多いそうです。

 

でも、小学校と教育委員会と児童館との話し合いで、児童館の存在が学校に行くことを阻んでいるのではないかということになり、日中その子を児童館には受け入れないことが「決定」されたそうです。

 

そのちょっと前に、その子の母親が校長先生と面談し、オンライン学習システムでの学習を出席扱いにしてもらう約束を取り付けました。そのときに、日中、児童館に楽しく通っていることも伝えたそうです。

 

児童館からの電話を受けて、お母さんは、小学校に言わなければよかったと後悔したと言います。当事者の話を聞かず、一方的に子どもの居場所を奪う、小学校、教育委員会のやり方に、お母さんは強く憤っていました。

 

すぐに教育委員会に抗議の電話したそうです。学校とも児童館とも話をして、結論からいえば、一時的な利用であるという前提で児童館の利用が認められたそうです。でも、あくまでも学校に戻すためのステップとしての「一時的」ということでした。

 

オンライン学習システムを出席扱いにすることについても、いろいろ条件が付けられており、そのなかには「あくまでも学校への足がかりになるように行うこと」とも書かれていたそうです。

 

でも、これは明らかにおかしいんです。学校に戻すことだけを目標にしてはいけないと、文部科学省も通知しているんです。

 

 二〇一七年三月三一日に文部科学省が発表した「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する基本指針」では次のように明記されています。

 

 不登校は、取り巻く環境によっては、どの児童生徒にも起こり得るものとして捉え、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮し、児童生徒の最善の利益を最優先に支援を行うことが重要である。

 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の不登校児童生徒の状況に応じた必要な支援が行われることが求められるが、支援に際しては、登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて、社会的に自立することを目指す必要がある。なお、これらの支援は、不登校児童生徒の意思を十分に尊重しつつ行うこととし、当該児童生徒や保護者を追い詰めることのないよう配慮しなければならない。

 

それを教育委員会も学校も知らないはずがないのに、なんでこんな話になるのか、驚きました。文科省の通知を頭では理解していても、長年の教員生活や教育委員会の職員としての生活でしみついてしまった思考の癖みたいなものがあるのかもしれないですね。でもそれを修正できないのはプロとして失格だと思います。

 

児童館にいることで学校に行けなくなるから児童館に行くなというのはまったくの暴論です。小学校に行けないなら、ずっと家にいなさいということなのでしょうか。「頑張れるようになってほしいから少しずつ負荷をかける必要がある」と学校の先生が言ったそうですが、居場所を奪うことは負荷とはいわないと思います。

 

このお母さんは私の本を読んで知識をもっていたから泣き寝入りしないですみましたが、一般的には教育委員会や小学校から言われたら、そういうものなのかなと思ってしまうと思います。でもそれではただでさえつらい思いをしている子どもを守ってあげられません。

 

小学校にも教育委員会にも、子どもの居場所を奪う権利なんてないんだということを、今日はみなさんにお伝えしたいと思いました。

 

※2024年12月12日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。