「9月入学 本当に今ですか?」署名キャンペーンサイト

 

長引く休校期間の学習の遅れを取り戻すために浮上した「9月入学」案について、前回の放送でも問題点を挙げました。現在、小1の学年開始時期について、政府が3つのプランを検討していると報道されているのですが、ちょっとわかりにくいので、解説したいと思います。

 

(1)学年の区切りを現状のまま(4〜3月生まれ)で、新小学1年生を9月に入学させる

→小学校入学時点でほぼ7歳半になっている子どもがいる。義務教育開始時期は6歳がグローバルなスタンダードであり、義務教育の遅れが生じる。

(2)2021年の小学校1年生の入学だけを、4〜8月生まれの17カ月間に拡大する

→来年入学の学年だけ人数が約1.4倍になり、教員増員や教室増設が必要。

(3)2021年の小学校1年生の入学者を4〜4月の13カ月間に拡大し、5年間をかけて1カ月ずつ拡大し、生徒数の増加を分散させる。

→複雑で混乱が生じる可能性が高い。

※学年の区切りには実際にはもっと厳密な決まりがあるが、ここでは割愛。

(参考)https://mainichi.jp/articles/20200518/k00/00m/040/066000c

 

いずれにしても、法律的にも現場的にも負荷が大きいことがわかるでしょう。単に入学時期を半年ずらすという話ではないのです。もちろん、小1の入学時期は、9月入学移行によって生じる多くの問題のごくごく一部でしかありません。

 

いま、子どもたちに対して必要なケアは学習面だけではありません。大切なことなので、もう一度言います。いま必要なケアは学習面だけではありません。

 

まずは学校に落ち着きを取り戻すことに全力を注がなければいけないはずなのに、先生たちや教育委員会や文部科学省が新しい仕組みづくりにエネルギーを割かなければいけないとなると、子どもたちへのケアがさらに手薄になる怖れがあります。

 

今回9月入学案がにわかに浮上した背景には、入学時期が欧米と違うことが留学生増加のボトルネックの1つになっているという考えがある。この場合の留学生は当然のことながら大学生を対象にしており、しかもアウトバウンドとインバウンドの両方を指す。しかしOECD(経済開発協力機構)のデータによると、海外で学ぶ日本人大学生の割合は1%にも満たない。だから増やしたいということなのですが、OECD平均でも5.9%です。

 

数%の留学生を増やすために、いま小学生までが巻き添えになる必要があるのでしょうか。もちろん留学生が増えない理由は入学時期だけではありませんから、そこまでしても留学生が増えるとは言い切れないんです。

 

では、いま慌てて9月入学を導入するメリットは何でしょう?

 

そもそも今回の「9月入学」検討の狙いは、休校期間中の学習の遅れを取り戻すこと。であれば、前回もお話ししたように、3年生の遅れを4年生としての授業の中で取り戻してもいいので、入学時期や進級時期を変える必要はないはず。

 

そうも言っていられないのは受験生。あとがありませんから。でも、それはそれで試験範囲や出題方式の調整を行いつつ、社会状況によっては入試時期や入学時期もずらすという処置を特別に講じればいいわけで、何もいまのこの社会混乱の中、突貫工事で恒久的なシステム変更を行う必要性は低いんじゃないでしょうか。

 

これも大事なのでもう一度言います。この状況に対する、特に受験生に対する特別処置は必要だと思います。しかしこの混乱の中で、突貫工事的に全く新しい学校システムを構築する必要性は低いと思います。現場の先生たちや教育委員会や文部科学省がいまの時期みーんな暇で、やることがないというのならこの時期についでにやっちゃおうかというのもありだと思いますが、いまはそんな状況じゃないんですから。

 

新型コロナによる混乱下における特別処置としての臨時的・部分的な「9月入学」はアリだと思います。しかしすべての学校システムをいま「9月入学」に変更する必要はありません。

 

5月19日から拙速な9月入学導入に反対する署名キャンペーンが始まっています。さまざまな立場から教育に関わるひとたちが大同団結して賛同人になっており、私もその末席に加えてもらっています。お子さんがいらっしゃるご家庭には他人事ではありません。キャンペーンページには9月入学に関する様々な情報や対案がまとめられていますので、ぜひご覧ください。

●9月入学 本当に今ですか?

https://peraichi.com/landing_pages/view/stopseptemberadmission

 

※2020年5月21日のFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容の書き起こしです。