9月1日に新刊『正解がない時代の親たちへ』が祥伝社から発刊されました。全国の名門校と呼ばれる中高の先生たちに、21世紀を生きる子どもたちを育てる親へのアドバイスを聞いて1冊にまとめた本です。子育てのテクニックというよりは親としての心構えみたいなものが伝わる本になっていると思います。

 

中高の先生たちにお話を聞いているので、思春期の子どもの親の心構えはもちろん、幼児期に気をつけてほしいことも聞いています。今回は、本の中から、幼児期の子どもの親御さん向けの言葉をいくつか紹介したいと思います。

 

武蔵・高野橋先生

「早期教育の幻想ってありますよね。幼いうちに少しでもリードしておこうと思うのでしょうけれど、幼児のころに多少他人より先に進んでいても、そのうちその差は消滅します。大人になって役立つスキルを早く身につけることよりも、何かに夢中になる感覚を経験することの意味のほうが大きいと思います」

 

幼児期に文字とか計算とか教えても、成長にともなってその差はなくなることが、多くの研究からわかっています。でも、高野橋先生だけではなく、多くの先生が、何かに夢中になれることは強力な能力の一つだと言います。夢中になる能力を育てるには、幼少期に夢中になっていることを大人たちが邪魔しないことが大切だといえます。

 

でも子どもって実際は、ろくでもないことに夢中になっていることも多いじゃないですか。そんなときどうしますか?

 

たとえばあるお母さんの話。2歳だか3歳だかの子どもが、ペットボトルのキャップを外してはつけてというのを1時間近くくり返していて、心配になって病院に連れて行ったんですって。お医者さんはもちろん、「夢中になっているだけですから心配ありません。むしろ素晴らしいことです」と言ってくれたそうですけど、このお母さんもすごいですよね。1時間近く、心配しながらもその子の夢中を邪魔しなかったわけですから。

 

このことからもわかるように、子どもの夢中を邪魔しないっていうのは、大人が勝手に「それには意味がない」とか「それに夢中になるのはいいことだ」とかジャッジするのではなく、子どもが自然に没頭してしまうものがあるのだとしたら、それがよほど危ないことでないかぎり、気が済むまでやらせてあげてくださいということなんです。そこでそのときにしか学べない何か大切なものが、その子のなかに刻まれているはずなんです。

 

 

そこで紹介したいのが次の言葉です。

 

栄光・井本先生

「そもそも子どもが『ふざけ』『いたずら』『ずる』『脱線』をしているときは、いちばん自分の頭で考えているときなんです。それをむやみにストップしてしまうのはもったいない。むしろそれを活かさないと。一般的には悪いとされることのなかにも、子どもの良いところを認めるようにすると、子どもはどんどん自分で考える子になっていきますよ」

 

『ふざけ』『いたずら』『ずる』『脱線』をしているときというのは、子どもの頭がフル回転しているときなんですよね。よほど危ないことや取り返しのつかないこと以外は、“常識的な”大人の基準からしたら好ましくないことであったとしても、その夢中さを邪魔しないほうが、長い目で見れば、子どもは自分の頭で考えるのが得意な子になっていくというのです。

 

自分の頭で考えるわけですから、屁理屈が増えて大人からしてみると面倒くさいことも増えるわけですが。それも成長の証しだということです。

 

逆にいうと、子どもが小さなうちに、かわいい『ふざけ』『いたずら』『ずる』『脱線』をしているときに、ぜひそのときの子どもの目の輝きを見てみてください。その目の輝きをしているときは、その子が自分の頭で考えて、自分の人生を生きているというサインなんです。子育てで迷ったときにもその目の輝きが正解を教えてくれるはずです。

 

※2021年9月9日にFMラジオJFN系列「OH! HAPPY MORNING」でお話しした内容です。