内山興正著『正法眼蔵 仏性を味わう』を読みました。

$諸行無常-内山興正 正法眼蔵 仏性を味わう

道元禅師の著作『正法眼蔵』は87巻に及び、その内容を参究することは困難を極めていると言われている。

約800年前に書かれた書物であるから、ということもあるが、道元禅師は、南宋に渡るまでは比叡山で天台教学を本格的に修め、膨大な仏典の内容に慣れ親しんおり、その途方もない地盤の上に『正法眼蔵』は成立しているからであり、「仏性」という言葉ひとつにしても、一般的に認識されている意味内容は固定概念に囚われている場合が多く、道元禅師の語るそれと根本的に異なっている側面があるからだという。

さらに根本的な理由として、「日本仏教は、従来漢訳仏典に出てくる言葉をそのまま缶詰として、その缶詰をあっちへやったり、こっちへやったりしているだけで、ついにそれを開缶し、その中身を自分で食べてみることをしなかったように、私には思われてなりません。大切なことは何より仏典の言葉を開缶し、自分で食べて、自分の栄養にしなくてなならないのだと思います」と語る著者は、3月に読んだ『現代坐禅講義』を書いた禅僧藤田一照の師であり、昭和期を代表する禅僧澤木興道の弟子として坐禅を参究し尽した善知識であり、本書は、昭和53年、京都の宗仙寺で始まった『正法眼蔵』を読む会の中で、『仏性』という巻を「味わう」ことを意図して話した内容を収録している。

仏性は修行の果てに至ることのできる格別な本質であるかのように思われがちだが、物事がありのまま成立し存在しているその全てこそが仏性であり、仏性は新たに得るものではなく、自己をその全てから分離する執着を徹底的に手離すことによって、常にその中に生きていることが実感できるという。

実在は新たに獲得するものではなく、常にここに在り、その気付きを妨げている執着や無知を取り除くことが、全ての修練の目的であると語るインドのラマナ・マハルシの教えと一致しており、ヨーガを理論的に支えているインド哲学に関連した読書を幅広く続ける内に生じてきた混乱が解消し、すっきりと腑に落ちた。

坐禅の意義を魅力的に伝え、『正法眼蔵』のこころに触れることを助ける名著。

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