ネルケ無方著『ただ坐る』を読みました。

$諸行無常-ネルケ無方 ただ坐る

車輪が回転するためには、しっかりと車軸に支えられる必要があり、軸がなければブレてしまう。

「カネ」、「社会的な成功」、「理想的な恋愛」。

現代人は常に、今ここに生きている自分には欠けている「幸せ」を必死に追い求め、自分のあり方を見失っている。

そのため、人生も社会全体もブレ続けているのではないか。

坐禅を生活の軸としている住職が坐禅の真髄を分かり易く伝えている本。

「坐禅をして何になりますか?」という問いに対し、筆者は、「何にもならない」と答える。

「悩みが解消する」、「これで幸せになれる」、「ストレスが軽減する」という風に、物事を損得勘定で判断しようとする態度は、中途半端で自信のない生き方を表している。

ただ坐り、何にもならないことを続け、際限なく何かを求め続けることからの解放が坐禅であるという。

生きることに一本のブレない芯を与える、坐禅を生活の中に取り入れる上での貴重で的確なアドバイスを自身の実体験に基づき、惜しみなく提供している。

坐り方や、姿勢の保ち方や呼吸をどうすればいいのか、分かり易く具体的に解説し、坐禅を続ける上での心構えを、道元禅師をはじめとする古人の言葉を引用しつつ、総合的に論じている。

実践的であり、仏教の思想をシンプルに噛み砕いた奥行きのある内容と極めて現代的な感覚が同居している一冊。