男性側から語られることの少ない
「不妊治療」。
男性目線の不妊治療、今回は、
実際に不妊治療を経験した僕、登坂淳一と
5年間の不妊治療の末、夏に第一子誕生予定のI氏
そして現在治療中のH氏の男性3人で
語った様子をお届けしようと思います。
☆登坂淳一
49歳。妻40歳。
2019年7月から不妊治療を開始。
13カ月間の不妊治療の間に流産2回を経て妊娠。
2021年4月に第一子誕生。
☆I氏
44歳。妻40歳。
2016年から不妊治療を開始。
転院を繰り返し、
5年間の治療の末妊娠。
2021年7月に出産予定。
☆H氏
48歳。妻36歳。
2020年1月、妻35歳の時に不妊治療開始。
タイミング法3回、人工授精3回、体外受精3回
現在も妊娠にはこぎつけていない。
#1 僕たちができること
登坂
不妊治療を経験して思うのは、やはり男性側にできることが、本当に少ないということですね。
身体的にも、精神的にも、時間的な面でも、女性側にかかる負担と男性側にかかる負担の量にはあまりにも違うなと。
H
そうですね。
身体的な苦痛はもちろん共有することができないし、
せめて病院に一緒に行こうと思っても、
コロナで妻しか診察を受けることができない。
負担が9:1です。9:1でも足りないところがあるかも。
I
男性は正直、結構気楽なんですよね。最初に病院に行ったときのことをよく覚えてます。
「ここで精子を出してください」と言われて、個室ビデオみたい感じのところに通されて。
「こんなとこがあるのか、DVDとかあるのか」とか思って。
また違う病院に行ったら「ああここはオンデマンドなんだな」とか。(笑)
そんな呑気なところも男性にはあったりして。
H・登坂 (笑)
I
だから女性の切実感とはどうしても違うところがあって、
そこをどう共有して行くかっていうのが難しいですよね。
登坂
不妊治療を進める上で「共有」はすごくキーワードになってきますよね。
うちは、とにかくドクターの説明を全部一緒に聞くとか、
薬が処方されたら、いつどれを飲むのか僕が整理して妻に渡すとか。
後は、妻の治療の内容に関してもちゃんと理解するようにしていました。
ピシバニールの注射を打つのってなんでなんだろうとか、
葉酸ってなんだ?とか。
薬をいちいち検索して調べて、
今妻がやっている治療が何なのか、というところを妻と同じレベルで知っているようにしました。
皆さんはどうされていましたか?
I
確かに、葉酸は調べますよね(笑)
エレビット(バイエル薬品の葉酸を含む
サプリメント)ここで格安で買えるんなら、ここでまとめ買いしようとかも、調べて話しましたね。
H
え、エレビット格安で買えるところあるんですか!
I
クリニックによっては、安く買えるよう紹介してくれるとかありますよ!
あとは、さっきHさんが仰っていたように、僕の場合も途中からコロナ禍で妻しか診察を受けられなくなってしまって。
それ以降は、僕が聞いた話は要点をまとめて妻に共有したり、
妻が聞いた話は2人で共有して、こういうことなんじゃないか、と話したりしてましたね。
だからもう、「共有」って、2人でよく話すっていうところしか解決策がないのかもしれませんよね。
登坂
本当にそれにつきますよね。
女性はやっぱり自分自身の身体のことだからより深く理解しようとしますし、
そこの理解のレベルを男性側も同じように保っていることができるかっていうのところは、結構気を付けました。
H
なるほど・・・
今お二人の話を聞いていると、自分の「共有」の部分が全然足りていないなというのを痛感しています。
I
いやいや。(笑)
まあ、僕の場合は、 僕の方に問題があったっていうところもあります。
精子に遺伝子の問題があったんですが、治療を受けるときには結局、僕の精子がどういう状態かという話をよくしていましたから。
登坂
治療を進めていくうちにいろいろな検査をして、問題ないって言われて、それでもなかなか出来ず…。
何が問題なのか分からなくて途方に暮れて、時間ばっかりが過ぎていく感覚と、
妻の負担ばかりが重くなってなかなか辛い局面もありました。
I
男性の側から言うと、できることがないのも辛いですよね。
結局、僕らは横で指咥えて見ていることしかできなくて。
それはなかなか辛いですよね。
H
代わりに注射打つとか、薬飲むとか、体に何か入れるとか。
代わりにできるならしたいとは思うんですが、でも口で言うことしかできないんですよね。
できることがあるならしたいけど、何もできないから。
登坂
そうですね。僕の場合はほぼ毎回一緒に病院に行けましたが、会社員のままだったら絶対できませんでした。
普通に働いていて、お互いに仕事がある、という状況だったらかなりのハードルがありますよね。
Hさんはどうしてるんですか?
H
治療のタイミングで、もちろんなるべくなら一緒にいたいとは思うんですが、
スケジュール的にどうしようもない時は本当にどうしようもないですよね…。
凍結精子で何とかしたこともあります。
やれる範囲で奥さんが折り合いをつけてやってくれている部分もあります。
毎回が毎回、理想のスケジュール通りには進まないものですよね。
I
本当にそうです。
スケジュール通りに進むことなんてなかったですね。
あとは、根拠はないんですが、
女性にストレスがあると上手くいかないのかなっていうのは
ずっと思っていましたね。
女性にストレスをかけない環境を作るには、どうすればよいのかというところが、男性側が一番考えるべきところなんだと思います。
登坂
確かに僕たち夫婦は医療の進歩に助けられていろんな治療を受けることができたし、治療を受ける選択をすることもできましたが、
もし、その治療を受けてよい結果が出なかったとしても、
きっとこの経験がお互いにとって貴重で、かけがえのないものになるんじゃないか、というポジティブな話はするようにしていました。
最後にポジティブな話をして次につなげよう、と。
Iさんが言うように、ストレスのない環境を作ること、
リラックスすることは大事だと思いましたね。
次回は「#2 不妊治療にかかるお金について」
です。