世田谷区「保育の質ガイドライン」の委員会(有志)視察へ。またもや、感動すら覚えました。 | いろいろが、彩るまち。小金井市長 白井亨(元小金井市議会議員)blog    <※2022年11月2日までは市議会議員としての記事です>

いろいろが、彩るまち。小金井市長 白井亨(元小金井市議会議員)blog    <※2022年11月2日までは市議会議員としての記事です>

第一子誕生をキッカケに地域に目を向け色んな「縁」のおかげで地域に生きる“日常の豊かさ”を実感。2013年市議会議員初当選。2017年市議選でトップ当選、再び市政の最前線へ。2022年11月27日市長選挙75%の得票、当選!市長となる。

厚生文教委員会(一応行政視察ではなく有志という扱いですが、全委員参加)にて世田谷区役所へ視察へ伺いました。

 

 

私自身は昨年5月に個別にアポを取ってお話を聴いたことがあったのですが、やはり委員会として大勢で行くと多様な角度から質問が出ていいですね。さらに、5月段階から我が小金井市の公立園民営化に関して市の方針(および課題)がより具体的になってきたので、いいタイミングだったかもしれません。

 

 

◯運営主体を超えた、区全体の保育の質の維持・向上へ

 

区全体の保育の質を維持・向上させることを狙いとして、ガイドラインを作成されました(平成26年度)。ただし、一朝一夕で今の体制や環境が作れた訳ではなく、平成14年度から委託の看護師1名でスタートした「巡回指導相談」から随時課題を問い続け、試行錯誤を繰り返して今に至るということでした。今や、その巡回指導相談の担当課は19名体制(保育士11名、看護師7名、栄養士1名)を擁し、年1回必ず全ての保育施設をまわっているとのことです。

 

 

巡回指導相談を経てこそ、今の世田谷区の取組みに繋がっているのですね。

 

 

 

◯5つの地域ごとの「保育ネット」で情報・連携が進む

 

世田谷区には区立(公立)保育園が50あるそうです(凄い数ですが、人口が90万人というからにはそれくらい必要なのでしょうね…)。さらに私立のいわゆる認可・認可外が278施設あるというから、もう対応は想像ができません。

 

しかし、5つの行政圏域ごとに「保育ネット」という運営主体を超えた保育施設のネットワークを組んでいるとのことです(最初に烏山から初めたそうですが)。ここで、年3回の定例会があり、そこには行政職員も入って様々な情報共有と意見交換を実施してきたということ。定例会は園長や副園長など各施設をマネジメントする方々の集まりですが、その他にも年に何回か学習会というのも行っていて、そこには若手職員(保育士)が集まり、各職層レイヤーでの交流がさかんに行われていることがわかります。

 

そこでは、公立園と私立園の助け合いや協力のやり取りもあるそうで、これらの話を聴いていると、トップダウン的に押し付けるのではなく、現場からのボトムアップも許容する風土が世田谷にはあるのでしょうか。

 

 

 

 

◯区立保育園の「あり方」についての議論も進む

 

とてもタイミングが良かったなと思ったのは、世田谷区の子ども・子育て会議では「区立保育園のあり方」についての議論が行われているとの話を聴いたことです。部会を設けて3回の議論をし、その後本会でも3回、合計6回の議論の場があり、そろそろそのアウトプットが公開されるようです。

 

ここでポイントは、保育園そのものの「児童養護施設」としての機能を再確認するということで、在宅支援などにも着目しているといいます。虐待対応として一時的に預かる機能のみならず、地域ごとに予防メニューとの連携を模索されています。いや、凄いですね。

 

50ある区立を「そのまま残すことが適切だとも思っていない」と説明されていました。「あり方」としては、地域ごとのコーディネートや質の向上の中心的な役割、先程の児童擁護機能とともに、ハード面では老朽化してきた施設を中心に「統合」を企画しています。

 

 

◯ダイレクトの民営化は多方面にとってストレス過多だった

 

その「統合」とは一体どんなものか?ということですが、他では余り聴いたことがないやり方でした。例えば、老朽化した100人規模の区立保育園が2つあり、時期を明確にしてその2つの「統合」を発表します。ただし、環境が変わるお子さんへの配慮として、発表した段階で在園する子どもに関しては卒園するまで環境が変わらないことを約束しつつ、新たに入園するお子さんに関してはその時期に「統合」する園に移行することを了承いただき入園いただきます。で、100人規模の2つの区立園を1ヶ所に「統合」(200人)し、空いた場所を更地にして民間を誘致し土地を貸して新設民間園を建ててもらう、というやり方だそうです。

 

これだと、保育枠を減らすこともなく、大きな環境変化のストレスも比較的少なく、新しい民間園を増やすこともできる、ということです(200人規模の保育所という大規模感が想像が尽きませんが)。

 

この考え方に至った経緯は、10年ほど前に幾つかの区立園をダイレクトに民営化したところ、色んな方面にストレスがかかり、検証をしたのちその反省としてやり方を工夫したものだそうです。新しい手法なので課題がまた出て来るかもしれませんが、子どもたちの育つ環境変化を少しでも軽減するために工夫を凝らしていると思います。

 

 

「職員を減らす」市長の公約実現のためという大義名分と財政論優先で子どもたちの保育環境の変化への配慮を後回しにする、いわば大人の都合だけ押し付けるどこかの市とは全然違いますね。

 

 

あと、職員がプライドを持って「子どもたちのために」取り組んでいることがひしひしと伝わります。昨年も同じ話を聴きましたが、世田谷区の保育に関する取組みとその背景にある想いを聴くと、感動すら覚えるのです。

 

 

 

…さて、小金井市では財政論最優先で子どもたちのことを考えずに民営化を半ば強引に押し進めようとされています。私は民営化そのものは反対しませんが、運営主体を超えた市全体の保育の質の維持・向上への考え方についてしっかり議論を積み上げてもらいたいものです。

 

◯世田谷区=人口90万人÷区立園50=18,000人に1園

◯小金井市=人口12万人÷市立園5=24,000人に1園

 →3園の民営化方針=人口12万人÷市立園2=60,000人に1園

 

1つ言えることは、保育分野だけではなく子育て全般に関して、制度や環境、市民の取り組みなども含め世田谷区に小金井市は大きく劣っています。「子育て環境日本一」は少なくとも世田谷の保育に関する取組に追いつかないと果たすことは無理ということです。

 

 

【結論】

世田谷区の取組みを改めて聴いて確信したことは、子どもの環境については1つ1つ議論を積み上げ、工夫と改善を凝らし、うまくいかないことに目をつむるのではなく課題にも大きな壁にも真に向き合って対応してきた結果として、より良い子どもたちの育ちの環境がそこにある、ということです。決して、「後付け」ではうまくいかないということ。

 

 

 

 

 

 

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