【新譜】スッペ:交響的幻想曲 序曲集他 ルードナー トーンキュンストラーo (2022) | ~Integration and Amplification~ クラシック音楽やその他のことなど

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学生時代から断続的に聞いてきたクラシックCD。一言二言で印象を書き留めておきたい。その時の印象を大切に。
ということで始めました。
そして、好きな映画や読書なども時々付け加えて、新たな感動を求めていきたいと思います。

最近リリースされた新譜から ㉗

今週の新譜は、スッペです!先週のブルックナーとほぼ同時代のウィーンの音楽ですね。昨年突然たまにはスッペでも聴きたいな、と思いついたのですが、うちにある唯一のCDが奥の方にありそうなので、仕方がないな…と、取り出しませんでした。ところが、新譜でスッペが出ているではないですか。それもスッペの交響曲的作品が、世界初録音です。詩人と農夫もついています。いいですね(笑)。

【CDについて】

作曲:スッペ

曲名:①劇音楽「詩人と農夫」序曲 (9:54)

   ②交響的幻想曲 (31:56)

   ③歌劇「水夫の帰国」第1幕 前奏曲 (4:14)

   ④歌劇「水夫の帰国」第1幕 キャビンボーイの踊り (2:14)

   ⑤カール劇場の展示会のための序曲 (6:27)

   ⑥劇音楽「ウィーンの朝・昼・晩」序曲 (8:40)

演奏:ルードナー指揮 トーンキュンストラー管弦楽団

録音:2022年10月27日①⑤⑥、28日③④、27-29日② グラフェネッグ Auditorium

CD:8.574538 (レーベル:NAXOS)

 

【曲について】

このCDの指揮者であるルードナーは、スッペにオーケストラのための「幻の交響曲」があることを知り、ウィーンの博物館・図書館に遺されたスッペの手稿譜を丹念に調査して、この交響的幻想曲を見つけました。当時のイタリアにルーツを持ち、ドイツで成功したスッペの劇的な管弦楽をここに聴くことができます。

 

【演奏について】

スッペと言えば、「軽騎兵」と「詩人と農夫」ではありますが、オッフェンバックに触発されてウィーンのオペレッタを作り出した作曲家です。そのオペレッタは大正時代の日本でも紹介されていました。そんなスッペの管弦楽曲を今日は楽しみましょう。

 

「詩人と農夫」序曲

いろいろな大指揮者も録音を残している名曲ですね。ルードナーは、ソロはよく歌わせて、ラストに向けてはなかなかノリのいい展開を見せてくれます。音は素朴感もありますが、雰囲気がとても良く出た演奏でした。

 

「交響的幻想曲」

このCDの目玉ですね。世界初録音です。第一楽章は、ロマン派の交響曲をイメージさせる重厚な雰囲気も持ったもので、ちょっとメンデルスゾーン的雰囲気を感じました。構造は比較的シンプルだと思いました。ただスッペ独特の装飾が細かく入っている感じです。第二楽章の緩徐楽章は、静かな主部と舞曲風の中間部の対比が際立ちます。スケルツォ風の第3楽章は明るい舞曲風の楽章。そして、最終楽章でいろいろな楽想が展開され、楽しい感じでまとまりました。先入観もありますが、オペレッタ作家の交響曲的ではあります。最後は古典派的な雰囲気もあり、コーダは祝祭音楽のようでした。打楽器が好きだね、と思いました。まとまりなどはどうか?というところはありますが、楽想豊かで楽しい交響曲でした。

 

「水夫の帰国」

ピアノ版のスコアが残っていた曲を蘇らせたもの。前奏曲は、水夫の音楽でもあり、「さまよえるオランダ人」を連想するような雰囲気や、祝典的なフレーズの組み合わせを感じました。劇音楽の序曲ならではの展開で、いろいろなメロディが続けて登場します。

 

「カール劇場の展示会のための序曲」

これも世界初録音になります。カール劇場はスッペ後期の有名なオペレッタが上映された劇場でした。楽しげな曲が続く序曲ですが、曲は静かに終わりました。

 

「ウィーンの朝・昼・晩」序曲

これは、よく演奏される音楽ですね。「詩人と農夫」と同じような展開をする序曲スタイルでした。そうなんです。最初に「詩人と農夫」を聴いたので、以降の曲を、「詩人と農夫」を基準に比較してしまいます。

 

なかなか面白いCDでした。こうなれば「軽騎兵」も欲しいところですが、それはまたいずれ聴きましょう。

 

田谷力三さんの歌う、「恋はやさし野辺の花よ」。スッペの喜歌劇「ボッカチオ」からの曲です。朝ドラのブギウギでも取り上げられました。

 

【録音について】

ちょっと固い感じはしましたが、問題の無いいい録音です。

 

【まとめ】

楽しいCDでした。スッペの曲はかつてはカラヤンやショルティなど錚々たるメンバーが録音していましたが、最近の新譜事情はどうなんでしょう。迫力のある曲なので、豪華なオーケストラで聴いてみたい曲です。

 

購入:2024/01/14、鑑賞:2024/01/21