最近リリースされた新譜から ㉒
鈴木秀美氏のCDを見つけたので、日本の古楽器演奏はどういうものだろうという興味もあって、購入してみました。曲はハイドンとベートーヴェンで、愛称の無い曲を選んで並べたという体になっています。2018年のライヴ録音です。
【CDについて】
作曲:ハイドン
曲名:交響曲第3番ト長調 Hob,I:3 (17:16)
交響曲第102番変ロ長調 Hob,I:102 (24:47)
作曲:ベートーヴェン
曲名:交響曲第8番ヘ長調 op93 (25:58)
演奏:鈴木秀美指揮、オーケストラ・リベラ・クラシカ
録音:2018年6月23日 三鷹市芸術文化センター (L)
CD:ADJ-070(レーベル:Arte dell'arco、発売:キングインターナショナル)
【曲について】
ハイドンの交響曲第102番は、後期のロンドンセットの1曲で、1795年にロンドンの国王劇場で初演されました。この時ハイドンがステージに登壇したところ、観客がステージ近くまで押し寄せ、中央部が空席になってしまいました。その直後にホールの中央のシャンデリアが突然落下しますが、空席部に落ちたために怪我人は出ず、観客から奇跡だという声が起こったと言われています。ところが、現在ではなぜか第96番の初演時の出来事として語り継がれ、第96番の方が「奇蹟」という愛称で呼ばれています。
【演奏について】
ハイドンの交響曲は、つまみ食いしながらチラチラと聴いている程度なので、第3番も第102番も初めてかもしれません。まずは、第3番から聴き始めます。初期の交響曲で至ってシンプルな感じがします。最初の主題が強調され繰り返し現れるところが印象に残りました。そして、そのあとで聴く第102番がなかなか素晴らしい曲。ゆっくりした序奏で始まり、また、第2楽章の緩徐楽章に変奏が、自由な感じもしてとてもいい雰囲気だと思いました。きっと名作の一つだと思いますが、有名ではないので、ロンドンセットには更に名作が並んでいる事と思います。いつか並べて聴いてみたいですね。
さて鈴木秀美とOLCの演奏をじっくり聴いてみました。まず、水準の極めて高い演奏だと思いました。きっと名手ぞろいのOLCに、鈴木秀美による見事な統率で、素晴らしい音と構築感が誕生しています。なかなか聴けないレベルだと思いますので、会場で聴くと圧倒されるのではないかと思います。ということですが、聴くのはCDなので繰り返し、いろいろな角度から聴いてみるといろいろ考えるところもあります。
主にベートーヴェンを聴いての感想ですが、鈴木秀美の古楽器の演奏スタイルは、どちらかと言えば最近流行っているスタイルだと思いました。古楽器の奏法ならではの、強い拍が強調される感じです。対してメロディラインがとても美しい音で奏でられますが、そのバランスがどうかなというところは、聴きどころでもあります。そのあたり風通しのいい録音だけによく聴こえます。ニュアンスですが、楽想の変わり目など一瞬間をおく癖があるような気がしました。ちょっと唐突感やまとまらなさを感じることがありました。拍を強調するのは、アントニーニの演奏とかで慣れていますが、目先効果ではなく全体バランスでどう聴こえるかを感じることがポイントかなと思いました。
同じ会場で同じメンバーによる第5番の演奏。スタイルは第8番と似ていると思います。というか、安定したスタイルになっています。
ということで、上に書いた内容は、聴きながら違和感を感じたところではありますが、これたぶん聴くときの状況やスタンスによって、良くも悪くも違ってくると思います。全体として極めて高い構築感と緊張感を持った細部まで風通しのいい演奏なのと、もう一つはベートーヴェンの交響曲の中で埋もれがちな第8番の面白さが大変よく解る演奏なので、そこはとても良かったと思います。この曲をちょっと見直しました。
【録音について】
大変素晴らしい音とバランスで捉えられた録音と共います。
【まとめ】
古楽器の演奏といっても、いろいろなスタイルがあって、楽団や演奏者による違いはモダンオーケストラ以上に幅広いものと思います。時代によっても変わっていくとは思いますが、どんな演奏が残っていくのかなと思うと楽しみでもあります。このCDを聴く機会を持てたことは良かったと思いました。
購入:2023/12/06、鑑賞:2023/12/29
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