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鳥大将棋部の日記

部員による日記です。将棋や日常について書いていきます。

今回は、実践棋譜から雁木の面白さを感じてもらえたらなと思います。
まずは、雁木に組み上がった局面から

第一図
(雁木側が後手ですが、反転しています。左と下符号は無視してください。)
相手は将棋倶楽部2000点位の方です。
前回までの講座では、▲65歩と角道を通して戦う形を解説しましたが、△64歩と先に突かれてしまいました。
これは、「雁木?なにそれ?角さえ止めれば怖くない」と言う手でこちらの攻めを牽制しています。
最強の大砲を眠らされては、勝てないので別の使い方をします。
第一図から
▲26歩 △52金
▲25歩 △33銀
▲36歩 △31角
▲77角 △73桂
▲59角 △63銀
▲26角 △44歩

第二図
雁木ではタブー化されている飛車先を突きこし、角を、77→59→26と転換します。
これは「三手角」と言う戦法で、矢倉より一手早く転換できるのが雁木の主張です。
雁木はとても柔軟な戦法で、相手が色んな対策や攻め方をしてきても大抵何とか受け流すことができます。そのため雁木使いも思考を柔軟に、形にとらわれない指し回しができるよう心がけましょう。
狙いはやはり4筋!ここに大砲をぶっぱなすのが目標です。
第二図から
▲46歩 △72飛
▲16歩 △43金右
▲37桂 △42角
▲45歩

第三図
37桂の前の16歩が大事な手で桂を跳ねた後、後手から△24歩、▲同歩、△25歩、▲同桂、△24銀の反撃があるのですが、16歩が入っていると△25歩に17角と引けます。
雁木は角ポジションが命です。
いよいよ仕掛けます。
第三図から
△45同歩 ▲同桂
△44銀 ▲48飛
△31玉 ▲46銀
△65歩 ▲同歩
△75歩

第四図
▲48飛までは一直線。
相手も41玉は流石に怖いので31玉としました。
▲46銀は少し疑問だったかもしれません。銀を上がると手厚い攻めができるのですが、今回は重い形にしてしまいました。
△65歩~75歩は軽い攻め筋で好感触!飛車角銀桂すべての駒たっ…駒たちが躍動してきます。
75歩は大体手抜きます。
第四図から
▲24歩 △同歩
▲23歩 △76歩
▲44角! △同金
▲53銀

第五図
24歩~23歩と垂れ歩で後手陣に嫌みをつけてから必殺の44角!
三手角の将棋は8割方、この44角のような角を銀に切る筋が出てきます。何故かと言うと、雁木囲いは「角で王手がかからない」からです。
比較的渡しやすい駒といえます。しかしあまり早く渡してしまうと、馬を作られたり、66歩~39角の筋があるので、角を切るタイミングが重要です。
今回は攻め合いになり、23に歩が残ったので、絶好のタイミングだと言えます。ここで必殺の角切りを決行できたのが本局の勝因かもしれません。
第五図から
△43金引 ▲42銀成
△同金引 ▲61角
△71飛 ▲34角成

第6図
馬を作り、雁木やや優勢ですが、攻め駒が不足しているので、まだまだ勝ちきるのは大変です。46の銀がいかにも重い形で悔やまれます。
狙い筋は▲22歩成~43歩や、▲44馬~53桂成を考えていました。
第6図から
△65桂 ▲44馬
△77歩成 ▲同桂
△同桂不成 ▲同金
△65桂 ▲71馬

第七図
△65桂に▲44馬と寄りました。
77に利かせつつ飛車取りなので、まあまあ好感触です。
77で精算して、飛車取りを受けず再度△65桂と打って来ましたが構わず根元の飛車を取ります。
金は取られて成桂も残りますが、まだ雁木玉に寄りは有りません。
第七図から
△77桂成 ▲61飛
△41角 ▲34桂

投了図
▲61飛が決め手で角を使わせて、自玉は安泰になり、雁木側からは▲22歩成や、▲53桂成があるので、適当な受けがなく、雁木勝ちとなりました。角以外の合駒だと▲63飛成が、▲22銀からの詰めろになっているので受けきれません。

本局は46銀、48飛が残ってしまったものの、必殺の44角が絶好のタイミングで指せたので何とか押しきれました。
24歩~23歩の筋は雁木だけでなく、様々な局面で使えるので覚えておいて損はないです。

次回は「実践棋譜2」をお送りします


さて今回はカウンターです!
前回は先行して攻め潰しましたが、今回は相手から先に攻めてくる順、そしてそれに対してのカウンターを解説します。まずはこの局面。

第一図
前回解説した、▲45歩~▲37桂と跳ねた局面です。先に歩を突き捨てておくのがここでの急所でした。
しかし、先に歩を突き捨てた効果で相手の持ち歩が2枚になったのである攻め筋が生じています。
第一図から
△86歩 ▲同歩
△87歩 ▲同金
△同角

第二図
△86歩~△87歩と金を吊り上げておいて△86角!
これは対雁木で良くある筋で、8筋の弱さをもろに突かれた一手です。部分的には角と金で駒損ですが、飛車成りが受からずこれで戦えると見ているのです。
この筋は受け損なうとそのまま潰されることもありますが、受け止めてしまえば逆に完封勝ちも望めるので、雁木使いの腕の見せ所でもあります。
そして今回のケースは無理に受け止めずカウンターを食らわせる順があります。
第二図から
▲同金 △同飛
▲77角打

第三図
▲同金 △同飛に▲77角打とします。
このてが角取を防ぎながら相手玉に不可避の大砲をぶっぱなす、まさにカウンターになります。
第三図から
△87飛成  ▲45桂
△44銀 ▲同角
△同金 ▲同角
△89竜 ▲79金


第四図
勢い竜を作るくらいですが、▲45桂から金銀をてにいれて先手好調です。
最後の△89竜が少し怖く見えますが、▲79金と打っておいて、案外後手の攻めが続きません。
△87角には▲78銀打で大丈夫です。44の角が受けに良く利いています。
このあとは11角成や33銀など、攻めには困りません。48の飛車も頼もしいです。

これで第4回の講座を終了します。
次回は自分の実践棋譜を解説します。
さて、雁木講座第3回はいよいよ攻めます。
雁木の攻め筋は非常に攻撃的かつ綺麗に進み、気分良く単手数で勝ちを決められることもあります!
有段者同士の対局では色々工夫を凝らさなければなりませんが、まずは「取り敢えずの狙い筋」を見ていきましょう。

第一図
△31角に▲96歩とした局面です。
2回目の講座の時と違い、飛車先を切るのを保留してきました。これは角で歩を交換し、引き場所を選ぼうとした順です。
▲96歩は地味ながら大事な手で角を95
に引かれる手を消していたり、97角と出る手を作っています。
現状有力なのは31,42,53ですが、今回は31に引いた順を解説します。
第一図から
△74歩 ▲48飛
△86歩 ▲同歩
△同角 ▲87歩
△31角 ▲45歩
△同歩 ▲37桂

第二図
74歩に48飛と回ります。
2筋をつかなかっかのはこのためでした。
飛車角を4筋に集中させ、一気に攻め潰す狙いです。
そして先に45歩と突き捨てるのが急所の筋で、先に37桂では、△35歩と桂頭を攻められ面白くありません。
第二図から
△64歩 ▲45桂
△44銀 ▲46銀
△65歩 ▲35歩

第三図
△64歩に同歩は同角がいい位置なので、取らずに45桂と攻め合いに出ます。
△44銀に▲46銀!
流石に攻めが細そうなのでじっと援軍を送ります。
相手は△65歩と取り込みますが、▲35歩とさらに攻めます。
第三図から
△35同歩 ▲33歩
△22玉 ▲35銀!!

第四図
△22玉に▲35銀!が必殺の一手で、この時点では、まだ意味がわからないかもしれません。
第四図から
△同銀 ▲53桂成
△同角 ▲43飛成

第五図
▲35銀には当然△同銀ですが、さらに▲53桂成!と桂も成り捨てます。この手がとてつもなく厳しいのです。3つの駒が利いていますが、同金は41飛成、同銀同角は43飛成です。次に▲32歩成が、と金、角の両王手になるので、これにて勝勢です!

一連の流れを見て頂きましたが、雁木の破壊力をお分かり頂けたでしょうか?35銀や、53桂成は、盲点になりやすいので決まる確立も結構高いです。
攻め気風の方にはお勧めです。

これで第3回「雁木の攻め筋」を終了します。
次回は第4回「雁木のカウンター」をお送りします。
さて、雁木の序盤について初手から順にみていきます。
初手からの指し手
▲76歩 △84歩
▲68銀 △34歩
▲66歩 △85歩

第一図
この局面で、ある程度将棋を指している方なら86の地点を受ける意味で77角や77銀を指す方が大半だと思います。
しかし雁木の形を目指すのであれば77銀は指せませんね。
かといって77角もお勧めできません。と言うのも雁木の攻め筋には角が必要不可欠で、77に上がってしまうと31角から角交換を迫られて角を消されてしまうのです。

第二図
そこで次の一手
▲67銀!

第三図
ここでは飛車先を受けず堂々と67銀と強気に雁木を目指します。
この堂々たる指し回しに多少のドヤ顔をしても、対戦相手は呆然として見送るしかありません。
当然「飛車先を受けわすれたのか?」と一瞬間があいたあと△86歩と突いてきますが、
▲同歩 △同飛
▲78金!

第四図
これで大丈夫です。
△87歩には▲77角 △82飛 ▲86歩で87の歩が回収できます。
第四図から
▲82飛 △87歩
▲56歩 △54歩
▲48銀 △42銀
▲57銀 △52金右
▲69玉 △33銀
▲58金

これで雁木が完成しました。
相手は飛車先を切るのに手を使っているのでまだ囲いが完成していませんね。
飛車先の歩を切らせることは悪いことばかりではないのです。
△82飛に▲87歩が大事な手で▲56歩くらいだと△86歩と垂らされてと金が受かりません。

ここはしっかり受けておきたいところ。
ここまで一直線に雁木を組んできましたが、飛車先を突いていないのですぐには攻められません。自分は居飛車党ですが相居飛車の場合、ほとんどの将棋で2筋は突きません。
雁木の攻めの狙いは実は2筋ではなかったのです。
第2回 「雁木の序盤」はこれで終了します。
次回 第3回 「雁木の攻め筋」をお送りします。


将棋には様々な戦法があります。

しかし相居飛車の将棋には、矢倉、相掛り、横歩取り、角換り等たくさんありすぎて全部覚えるのは大変ですね…。

そこで!

オススメの戦法がこの雁木戦法です!

金銀4枚のフォルムがとても美しいですね!

指して良し!鑑賞して良し!の優良戦法です。

しかしてあまり人気のある戦法とは言えません。

先日、雁木の棋書持参でT末君にこの戦法を薦めるも、やんわりどころか即答で断られてしまいました…。

それ以前に、我が(?)将棋部の大半が振り飛車党であり(体感7~8割りくらい)気軽に薦められる対象者がいないのです…。

しかし、新学期になり新入部員も入ってきてくれ、そのなかにはまだ自分の得意戦法や、得意スタイルを確立できていない人も居ると思うので、これをみて少しでも「雁木強えぇ…」と思ったら、雁木党の門を叩いてみるのも悪くないと思います!


不人気の理由のひとつとして「玉の位置が何か変」
と言うことがあげられると思います。

将棋界にはこんな格言があります。
「玉の囲いは金銀三枚」
これはとりあえず戦いが始まる前に金銀三枚で玉固めちゃいなよ!ってことです。


これは、全居飛車党を苦しめている美濃囲いです。とても固く、素早く組め、粘りもあります。
蛇足ですが終盤39に桂を打って凌ぐ「N村桂打ち」と言う手筋もあります。

このように金銀三枚で囲うと立派なお城ができ、王様も心なしか満足げにみえます。

ここでもう一度雁木囲いを見てみましょう

…。

金銀三枚どころか四枚使ってるにも関わらず全く堅陣感がありません。

王様も何故か城から追い出された感が否めません。

飛車を下段に下ろされたら一溜まりもないでしょう。

なので、比較的飛車交換になりやすい振り飛車相手に使うのはお勧めしません。

ただ、ずっと飛車を渡さない訳にもいかないので対策を二つ紹介します。

1、玉を安全にしておく
2、底歩を打てるようにする

1は玉をあらかじめ79に寄っておき88玉と上がれるようにします。

これならすぐに攻めこまれることにはなりません。

2は戦いのなかで5筋の歩を突き捨てておき39飛車に59歩を用意します。

これもしっかりしています。

このように事前に対策をしていれば飛車を渡すような強い攻めにも出ることができます。

第1回 「雁木とは」これで終了します。
次回は 第2回 「雁木の序盤」をお送りします。