将棋と直接の関係はないのですが、表題記事を読んだ感想です。
基本的には事前予約は事業者にとっても多くの利点をもたらす。来店者数の予測、事前決済による業務効率化、混雑の緩和といったメリットに加え、予約制の標準化によってサービスの品質を安定的に維持しやすくなる。
私の支部が主管する大会について言えば、「利点」どころかそもそも完全予約制じゃないと大会運営が担当できないです。これは、支部役員の中では共通認識になっていると思います。今の支部の役員の中で少なくとも「当日申込制にしたい」という声は出たことがありません。
しかし、すべてが予約制になることで、突発的な利用や「飛び込み」の自由は失われる。思いつきで出かける、ふと立ち寄るといった行動の自由も減少する。
その自由は他の人よりもお金を多く出すことによって獲得 (購入) してください、というのが私の正直な感想です。例えば私は (私が運営員の一員となる) 将棋大会については完全事前申込制の支持者ですが、それでも当日申込参加費をとても高額 (運営の精神的負担から考えると6桁円くらい) にしてよければ、事前申込・当日申込の併用も検討します。
私が所属する支部が主管する将棋大会の事前申し込みは2日前までに設定することが多いです。大会が午前10時開始だとすると34時間前です。参加検討者の都合も考えて、かなり譲歩しているつもりです。これ以上遅らせると運営の負担が激増します。このたった34時間の自由を参加検討者に与えるために運営員がとても苦しまなければならない、というのはおかしいと感じています。当日申込の自由は、(少なくとも私の県では) 運営員の多大なる犠牲の上でしか実現しません。そして、そんな犠牲は嫌ですから、いずれ「〇〇県では〇〇将棋大会の県代表を選出しません」というようなことになるでしょう。
「予約疲れ」は、誰しも身に覚えがあるだろう。旅行のときに事前計画を建てる。航空機や新幹線のチケット、宿泊先、レンタカー。最近では新幹線に大きな荷物を持ち込むにも専用座席の予約が必須だ。こうした事前の計画や段取りは、旅の楽しみの一部でもあるが、すべてをウェブ上で登録・認証し、ひとつのミスも許されない環境では、機械の操作を苦にしない人でも次第に「予約疲れ」を感じることがある。
(強調は速水建朗氏ではなく私)
こういう自分の感覚が万人のものだと思い込むのは危険だと思います。
「予約疲れ」なんて感じたことは人生で1度もありません。もちろん、「予約疲れ」を感じる人がいても不思議ではないですが、そうではない人も少なくないでしょう。
航空券も新幹線特急券も、誤って購入したら払い戻し手数料を負担して払戻すだけです。宿だって rent-a-car だってそうです。「ひとつのミスも許されない」なんてものは今まで目にした記憶がないです。
すべてに段取りが必要な社会には、便利さと引き換えに、ある種の息苦しさがつきまとうのだ。
それは「そういう人もいる」というだけでしょう。そんな息苦しさを感じたことは1度もありません。逆に、予約させてくれればいいのに予約できなくて当日までずっと息苦しさを感じたという経験は数多くあります。
現代のオフィスワークもまた、そうした細切れの予定の連続で成り立っている。グループウェアやスケジュールソフトを通じて、次々と予定がなだれ込み、個人の時間は埋め尽くされていく。オンライン会議が普及したことで、かつては移動を前提に午前・午後に1件ずつ程度だったミーティングも、今では1日に3件、4件と詰め込まれるのが当たり前になった。意識してバッファータイム(余白)を確保しないかぎり、あらゆる空白時間は予定に占拠されてしまうのだ。
それは使い方が悪いだけでしょう。
online 会議が普及する前、かつての職場での話になりますが、1カ月に13件の会議が入ることが普通でした。短い会議は1時間、長い会議は8時間かかりました。今では会議はかなり少ないです。何しろ、資料などは online に置いておいて各自読めばよいだけですから、わざわざ会議をする必要がないのです (かつて私が出席していた会議の議題の9割以上は議論ではなく単なる報告でした)。
他の人から会議などを入れてほしくない時間帯は block するだけです。「グループウェアやスケジュールソフト」の使い方を分かっていないのか、それとも block 機能がないものを使っているのか、どちらかでしょう。
この「調整さん」は複数人の予定を合わせる際に非常に便利なツールだが、親しい友人同士で安易に使うのは、少し考えものかもしれない。友人関係というものは、互いの状況を察しあい、どちらかが譲ったり、あえて相手のために時間を作ったりする関係性の中で育まれるところがある。
この主張は分からなくもないです。
未来の予定は「〇」「△」「×」で表現できるものではなく、蓋然性と優先度によって決まるものです。それを数種類の選択肢に押し込めて表現しているので、不都合な点があることは理解できます。
事前予約が嫌な人は、その分の自由を金で買うのがよいでしょう。
事前予約の手間をかけずにふらっと駅に行って新幹線に乗りたいのなら、最初に秘書なり執事なりを雇い、最寄りの新幹線駅を発する全ての便の席を1人分ずつ毎日購入するように命じておけばよいでしょう。
事前予約の手間をかけずにふらっと航空機に乗りたいなら、自分で航空機を購入し (必要なら空港も購入し)、操縦士や整備士を雇えばいいでしょう。
世の中は、多くの人が事前予約をすることを前提に現在の価格が決まっています。「当日申込」のような自由が欲しいなら、その分の金銭を負担すべきです。その金額は、「当日申込」を求める方が自由を得る代わりに何らかの負担や苦痛を押し付けられる人が決めるのが妥当だと思います。
県によって違いもあるとは思いますが、当日申込制はその県の将棋文化を潰す一因になる可能性が高いです。
事前予約社会は、予約する側と受け付ける側との負担の不均衡をそれなりに改善した社会だと思います。私は望ましいことだと感じています。