「ホームページがより快適に! 経営改革報告(第5回)」という記事によると、2025年1月から日本棋院の web server は cloud 環境に移行したようです。

調べてみると、AWS に収容されていました。東京 region ではなく米国 north-west region なのは費用の問題ですかね。(東京を選ぶと3割近く高くなる感じです。)

未だに PHP 5.4.16 を使っている (2013年 release、とても危険) とか、未だに TLS 1.0 接続が可能 (とても危険) とか、気になる点はあるのですが、色々と手一杯な中で改善されたのだと推測しています。

TV anime で異世界モノをちょくちょく見かけますので、その枠組みだけ借りて話題にします。


あなたは今の日本とほぼそっくりの異世界に飛ばされました。今の日本と異なる点は、日本将棋連盟、LPSA、日本棋院、関西棋院が存在しない点です。

あなたは、この異世界に飛ばされる際に神から「あなたの使命は将棋又は囲碁のプロ団体を作り文化普及に努めることだ」と言われています。

この世界には、アマチュア選手にそうそう負けることがない将棋指しが200人、アマチュア選手にそうそう負けることがない囲碁打ちが500人います。彼ら/彼女らは、将棋または囲碁を専業にしたいと考えており、あなたが声をかけたら必ず団体に参加してくれます。

この世界には、声を掛けたらそれなりの規模の棋戦の sponsors になってくれそうな会社が、将棋の場合は8社、囲碁の場合は7社あります。ただし、その多くは新聞社であり、新聞業界自体は経営が年々苦しくなってきています。

将棋も囲碁も、嗜む人口は年々減ってきています。それに加えて、日本は長期的に (少なくとも今後50年間は) 人口が減ることが確定しています。


あなたは、公益社団法人・公益財団法人・一般社団法人・一般財団法人のいずれかを選ぶことができます。

あなたは、この組織の本拠地として自己所有の不動産か賃貸かを選ぶことができます。不動産を自己所有した場合、あなたの組織の試算の大部分は固定資産となります。

あなたは、本拠地を1か所に限定したり、「東京」「名古屋」「大阪」のように3か所に分散させたりすることができます。

あなたは、この組織に年金制度を組み込むか組み込まないかを選ぶことができます。年金制度を組み込んだ場合、将棋人気や囲碁人気が落ち込んできても年金受給者に対して年金を支出し続けなければなりません。

あなたは「プロ棋士」を認定する基準を自由に設定することができます。その基準は、「原則として1年間に4人」のようなかなり厳格な基準から、「〇〇推薦」のような柔軟な基準まで、設定方法は様々です。

あなたは「プロ棋士」の引退規程を自由に設定することができます。また、引退規程を設定せずに一旦「プロ棋士」になったら死ぬまで引退しなくてよいという制度設計にすることもできます。

あなたは「プロ棋士」の年収の中央値をある程度制御することができます。「プロ棋士」の人数を絞り込んで世間に高年収の職業と見做してもらうか、逆に中央値が200万円強になってでも「プロ棋士」の人数を増やすか、を選ぶことができます。

あなたは、この団体の職員の人数・人件費を設定することができます。


さて、どんな団体を想定したでしょうか。

それが、あなたが理想とする将棋団体・囲碁団体です。

標題記事を読んだ感想です。

ヒカルの碁世代は、現在30~35歳位の世代だと考えれます。そして、社会で一番忙しい世代とも言えます。会社では中堅もしくは部下数名を抱える役職者になっている人も多くおり、一番仕事の忙しい時期だとも言えます。
更には、この世代は既に既婚者であり小さなお子様の子育てをしている世代だとも言えます。

平日月曜日から金曜日まで大概残業続きで仕事をし、週末は家族サービスに追われる日々。たまの休日は、ご家族で買い物やレジャー、外食、子供達が興味ある娯楽の付き合いなど。とてもじゃないが、ヒカルの碁世代の囲碁人であっても、ご家族を持たれた世帯は囲碁を1日楽しむゆとりが有りません。

将棋界も、こういうことをちゃんと考えていますかね? どういう世代の人がどういう生活をしていて、その中で将棋や囲碁に取り組んでいるのか、ちゃんとした解像度で見えているでしょうか。

団塊の世代の爺様達の天の声を意識して、その世代の受けが良くその世代の意に反しない、今までの昭和のやり方を伝統・文化と言いつつ世の中が色々と変化している中、囲碁界だけは取り残されたように常に同じ表現方法を継続しています。

将棋界も状況は少々似ていると感じています。

同じ方が「波平シフトで囲碁を過疎らせる」という記事も書いています。

お二方のポストとも、平日にも関わらず200名も大盤解説に囲碁人が集結し賑わいを見せていた事を善意からポストされています。

だがしかし

このようなポストを囲碁界の普及を真剣に考えない目線でポストされると、間違いなく囲碁の衰退を招きます。

これもとても重要なことでして、子どもがたくさん集まっている場面が報道されれば他の子どもも興味を持つでしょうし、老人ばっかりが集まっている場面が報道されれば子どもは集まってこないでしょう。

日本棋院の経営分析で最近割と有名な web site がありまして、そこの最新記事 (表題通り)を読みました。

読んで少し認識を改めました。以下、引用します。

SNS等でよく見られるのが「強制引退で現役棋士を減らせ」という論ですが、現状のまま引退だけを促して加速させると日本棋院はおそらく破綻します。

その原因は日本棋院が年金制度を内包しているためのようです。

年金をなぜ外部組織にしなかったのか、という疑問が湧いてきます。これほど愚かな制度設計はなかなか見かけない気がします。何しろ、引退棋士は日本棋院が破綻したら (その分の) 年金がもらえなくなるし、日本棋院は引退棋士が足枷となって改革がとても進めにくくなります。

元記事でも

諸悪の根源とも言う。

と書いています。私は完全に同意します。

因みに、たとえ日本棋院が年金制度を内包していなくても、最低でも8割のプロ棋士が引退しないと日本棋院は立ち行かないだろう、というのが私の予想です。

Question #5

支部運営や大会運営を担ってくれる若い後継者がなかなか見つかりません。どうしたらよいですか。

Answer #5

基本的には将棋人口の減少が最大の要因です。

しかし、これだけを指摘しても問題の解決につながらないので、他の点も指摘させていただきます。

定年退職世代の方々と異なり、現在の勤労世代は共働きが一般的でございます。これはすなわち、男性も女性も家事・育児をしなければならないということでもあります。

また、娯楽も多様化しており、「私の最大の趣味は将棋であり、将棋のためならたくさんの時間を注ぎ込むことができる」と言い切れる方は大変少なくなっております。

言い換えますと、将棋を続けるための負担感が大きくなるなら他の娯楽に移行するということでもあります。

そういう状況ですので、若い方に運営を担ってもらうためには、運営作業の大幅な省力化が必須でございます。また、何をやったら運営したことになるのかという業務内容整理も必要でございます。

例えば模造紙です。例会経過や大会経過の掲示に模造紙を用いる支部は少なくないのですが、これの調達はそれなりに手間がかかる状況にある方もいます。それなら、最初から模造紙など使わずに全て A4 の紙で掲示する方式にしてしまえばよいのです。

省力化できる事項はとても多く、ここに書ききれるものではございません。他の支部の活動を参考にできるところから取り入れていくのが最善かと存じます。

Question #4

私の支部に参加する子どもの数は「新型コロナ」禍でもあまり減らず、現在はむしろ微増しています。藤井聡太六冠効果もあり、将棋人気は安泰に思えます。本当に将棋人口は減っているのでしょうか。

Answer #4

質問者様の県・地域では本当に将棋人口が増えている、という可能性と、将棋人口の減少が質問者様の支部にまだ現れていない、という可能性の2通りがございます。

前者である場合、何も心配する必要はございません。しかし、日本全体でみると将棋人口は減少傾向にございます。

最も分かりやすい指標は、質問者様の県・地域の支部数や将棋教室数が減少しているかどうか、です。減少している場合、これまで他の支部や他の教室が受け取っていた需要を今は質問者様の支部が受け取っているに過ぎません。

少しずつ干からびていく沼では、水域が小さくなるたびに沼の生物は残る水域へ集中していきます。ですので、一番水深が深い (最後まで水域として残りやすい) 場所にいれば、沼全体の生物数の減少はとても見えにくくなります。

日本全体で見ても、日本の人口減少は全ての都道府県で均等に発生しているわけではなく、3大都市圏へ通勤できない県から顕在化している状況でございます。特に東京都は、他の道府県から人口を吸い取る形となっていますので、質問者様がもし東京都民でしたら日本の人口減はなかなか体験できないものと思われます。

Question #3

支部例会などで子どもがやってきて、何人かの大人のところへは自ら話しかけに行っても、私のところへは来ません。その差は何によるものでしょうか。

Answer #3

子どもの行動は、猫に似ているところがございます。

平均的に人見知りする猫は、初めて会う人間には近づこうとしません。これは「その生物 (人間) がどう行動するか分からない」ためです。

人間から猫に近づいていくと、大抵は逃げられます。これも「近づいてくる目的が分からない」ためです。もしかしたら捕獲しにきたのかも、という想定が常に浮かんでいます。

ところが、「この生物 (人間) はオレに危害を加えない」と認定されたら、猫の側から寄ってきます。時には「オレの首の下を撫でろ」とばかりに要求してきます。

子どももかなり似ています。質問者様は成人男性であると勝手に想定させていただきますが、子どもにとって全ての成人男性は最初は得体が知れない怖い存在でございます。

猫と異なり、人間の子どもの場合は「その人に自ら絡みにいってよいか」というような感覚で距離を計っております。

子どもに怖がらないでほしいなら、幼稚園教諭や保育士の振舞いが参考になります。

また、服装も重要です。質問者様が将棋大会に参加する場合などは特に服装規定などないものですが、支部として普及活動に寄与したいならそれなりの服装を選ぶことが望ましいです。プロ棋士の先生方が指導対局などで支部へ来訪する際の服装が参考になると存じます。要は「私はあなた (子ども) に対して礼儀正しく接しますよ」ということを服装で表現すればよいのでございます。その際、高価な服装を用意する必要はなく、子どもの目から見て「得体が知れない成人男性」ではなく「ちゃんと接してくれる成人男性」と見えればそれで充分でございます。

杉内寿子九段 (当時八段) の引退について書いたことがあります

その後、1カ月半の間に4人の囲碁棋士が引退していました。2024年なんて1年間に3人しか引退しなかったのですから、これはかなりの人数です。杉内九段の影響力が小さくなかったのではないかと考えます。

誤解がないように書きますが、引退制度を整備するのは日本棋院の責務であり、囲碁棋士個人は自ら引退しなくても責められるべきではない、というのが私の考えです。その上で、自ら引退する囲碁棋士は潔いと思うのです。


杉内九段と今回の4名の棋士の方々の引退だけで日本棋院の問題が解決するわけではないですが、日本棋院存続のために自ら引退するほどの覚悟がある方がこれだけいることは、改革の一助になるのではないかな、と考えています。

日本棋院には Sustainable Development Go Society (略して SDGS) であってほしいです。

Question #2

将棋を習ったことがない子が私の支部に体験のために来た時、いつも私が負けてあげています。しかも対局中は好手を教えてあげて最後は5手詰くらいのきれいな終局に持ち込んでいます。しかし、私が相手をした子はみんなつまらなそうな顔になり、再度支部に来ることはありません。最高の体験を提供しているのに、何がいけないのでしょうか。

Answer #2

結論から申し上げます。あなたは相手の「失敗する権利」を奪っています。

将棋は、他人から教えてもらった手で勝っても嬉しくありません。全ての手を自分で考えて、その結果として自分の思考が相手の思考を上回り、相手玉を詰めてこそが、勝利の嬉しさの根本です。

しかし、子どもを完膚なきまで叩きのめして「もう将棋なんてやらない」と言わせたりしないだけマシかも知れません。

次に支部に来たお子様には、一切の指図をせず、なおかつ手を抜いていることをその子に気付かれずに負けてあげてください。今度は恐らくうまくいくでしょう。