当日申込制と事前申込制の比較のため、最初に条件を揃えておこうと思います。地域によって条件は異なると思いますが、以下の条件で考えてみてください。
- 会場は公民館。会場の机と椅子はガッチリ移動させて将棋ができる配置にしないといけない。
- 1つの団体が1か月で借りることができる部屋・コマ数には原則として上限がある (ただし開催日が近づいてきて空き室が多ければ追加で借りることができる)。
- 公民館を借りる関係上、参加者全員の氏名と連絡先は運営側が把握しておかないといけない。
- 参加者 (子ども) は自分の氏名が正確に書けるとは限らない。
- 参加者の氏名を正しく掲示できないと後からかなり強く非難される。(経験あり)
- 受付開始から第1局開始までは35分以内。受付終了から第1局開始までは15分以内。(なので、9時25分受付開始、9時45分受付終了、10時00分第1局開始、とします。)
- 参加申込用紙を会場で記入させた場合、受付前に記入者がものすごく滞留する。
- 事前申込者が欠席しても対局相手を不戦勝にしてよい。
実参加者50人として、運営員は何人必要ですか?
すぐに想像がつくと思いますが、当日申込制の場合は9時45分~10時00分の時間帯に作業量の spike が発生します。それもかなり巨大な spike です。9時25分~9時45分もかなりの修羅場になります。
運営員の事前打ち合わせをかなり綿密に実施しても、10人じゃ足りないと思います。それだけ人数がいても、申込用紙に書かれた氏名が読み取れないとか、「お母さん、電話番号ってなにー?」とか、すぐに発生すると思います。申し込みが済んだ人とこれから申し込む人とで会場がぐちゃぐちゃになり、受付終了時刻近くになって「どうしてもっとちゃんと案内しないんだ」と文句を言われることもあるでしょう。
事前に人数が確定しないことも大きな問題です。過去に、定員の4割増しの参加者が来た大会も見たことがあります。当日急遽公民館に頼んでもう1部屋借りたようですが、その手続きをしてもう1部屋会場を用意する分だけ更に子ども達を待たせることになります。「やむを得ない」では済まない問題です。
事前申込制なら、運営員が4人いれば回せると思います。
なにしろ、氏名や連絡先は事前申込されているのですから、会場で記入してもらう必要がありません。申し込んだ字が間違っていてもそれは申込者の責任ですから、「対局表に転記する際に氏名に気を遣う」ということもありません。参加人数が事前に確定しているのですから、対局表 (の枠) も会場配置も事前にきっちり計画を立てることができます。
当日申込制は、運営側にものすごく過剰な負担を強いる仕組みとなっています。もちろん、それに対応できるだけの人員が容易に確保できる地域や、将棋活動がものすごく盛んで公民館側の理解を得やすい地域なら、実現できなくもないと思います。
しかし、おそらくは日本の大部分の地域では事前申込制じゃないと運営員の後継者が充分に見つからないだろう、と推測しています。
それだけ運営側に負担をかけて当日申込制を採用しても、その利点は「参加者が大会当日まで参加手続きをしなくても済む」という点だけです。たったそれだけの利点を実現するために、将来の運営員の後継者を減らしている、というのが今の将棋界の現状だと認識しています。
異論もあるでしょうが、私は「当日申込制こそが将棋界を衰退に導く」と本気で考えています。
これだけ娯楽の種類が増えた現在の日本社会で、新聞では「8がけ社会」という言葉が何度も登場しています。
保護者の立場から見ると、将棋界の各種運営って他の娯楽と比べて「なってない」んです。子どもが将棋を大好きだったらこの「なってない」運営にも我慢して付き合いますが、そうじゃなければ将棋なんて選ばずに他の娯楽を選ぶでしょう。でもそういう保護者は、将棋界に不満を述べてから他の娯楽に移行するのではなく、何も言わずに将棋界を離れていきます。
そういった動きは、将棋界の内側から観測していても分かりません。そして「将棋人口がなぜ減っているのかわからない」と嘆くことになるでしょう。
将棋界が注目すべき家族は、祖父母や叔父叔母も含めて将棋指しが1人もいない、でも小学校低学年の子が将棋に興味を持ち始めて将棋の場にやってきた、という家族だと思います。そういう家族が、子どもの娯楽として将棋を選んでくれるかどうか、が重要です。
とりわけ、1~2回将棋の場にやってきてその後来なくなった家族と接点があれば非常に参考になると思います…が実際には無理ですね。
娯楽において、将棋の好敵手って何だと思いますか? 囲碁とか麻雀じゃないですよ。私の息子の世代だと、Splatoon とか Minecraft とかにゃんこ大戦争とかです。待ち時間もほとんどなしに手軽に始められます。
そういう意識がなければ、娯楽における将棋の立ち位置も把握できないと思います。そうすると、将棋大会で子ども達を長時間待たせても平気になるのだろう、と考えています。