これまで使ったカートリッジはすべて MC 型で、一番気に入ったのは DENON DL-103LCII。
ずいぶん前に、その DL-103LCII を知人がえらく気に入り、既に生産終了していたので友情価格であげた。
そんなことがあって以来、メインのカートリッジは現行機種の DL-103R に替わった。
DL-103LCII と DL-103R は、外見は樹脂を素材にしたハウジングの塗装が異なるくらいで、出力電圧・スタイラスの形状・再生周波数範囲・コンプライアンス・針圧・質量は同じ。
しかし、発電コイルに前者は LC-OFC 線(日立電線製、既に生産終了)を、後者は 6N 銅線を採用していて、インピーダンスについても前者は 13 Ω、後者は 14 Ω と異なる。
DL-103R に替えた時に感じたのは、重厚な低音域・充実した中音域・エネルギー感のある高音域など、DL-103LCII にとても似ているが、DL-103LCII の方が低音域のキレが良いということ。
今、DL-103R を使っていて、また DL-103LCII で聴いてみたいとの思いがずっとあった。
近年 MC カートリッジの価格が上昇し、DL-103R は 1994年の発売当時は税抜き 28,000円だったものが、現在では税抜き 58,000円と倍以上(2.07 倍)の価格に。
日本銀行が目指している 2% インフレで計算すると 30年で 1.81 倍になるから、30年で価格が倍になるのは通常の資本主義経済では自然なことかもしれない。
しかし、この 30年間の日本経済が「失われた 30年」と言われるように、現在の1世帯当たり平均所得金額は逆に 1994年よりも 18% 減っているため、所得対価格比で表せば 2.5倍の値上げに相当する。
<1世帯当たり平均所得金額 >(厚生労働省発表の統計データ)
1994年 664.2万円
2021年 545.7万円
ここまで高価になってしまうと、いつか DL-103R を買い替えるよりも、状態の良い中古の DL-103LCII を持っておきたいと。
生産終了からかなり経っているが、中古オーディオ店で状態が良く価格も満足できるものを見つけた。
針先の状態が非常に良く、カンチレバーも歪んでいない。
ヘッドシェルは、DL-103R に YAMAHA HS-11 を使っているので、DL-103LCII には Ortofon LH-4000 を使うことにした。
DL-103R は以前は LH-4000 に取り付けていたが、HS-11 を入手して取り換えるとさらに音場表現力がアップするなど好相性だったので、HS-11 がもうひとつ手に入ったら、是非 DL-103LCII を取り付けようと考えている。
レコードプレーヤー DENON DP-67L に取り付け、各種調整。
今日、4枚の LP を完全試聴した。
カラヤン指揮・ウィーン・フィル、ドヴォルザーク 交響曲第9番『新世界より』他
ドイツ盤、Grammophon、415 509-1、1985年録音・発売
オーケストラ・サウンドの広がりや迫力じゅうぶん。
低音域から高音域まで密度のある充実した音で、小音量演奏時でも各楽器を明瞭に描き分け。
明るさを強調したり派手さを付加することなく、落ち着きのある描写。
大音量時に DL-103R よりも滑らかに(歪み感が少なく)聴こえるのは、ヘッドシェルの違いによるものだろうか、それともスタイラスの状態(摩耗の程度など)の差によるものだろうか。
ジョージ・ウィンストン『AUTUMN』
米国盤、ウィンダム・ヒル・レコード、WH-1012、1980年発売
ピアノ・ソロは音を誤魔化せないので音質評価に欠かせない。
音の響きが豊かに収録されたアルバム。
重低音の響き、中音域の密度、高音域の美しさと伸びなど申し分なし。
速いパッセージでの1音1音の立ち上がりが良い。
松田聖子『ユートピア』
CBS・ソニー、28AH 1528、1983年発売
キャンディー・ヴォイスと称される可憐で甘いヴォーカルの魅力を引き出す。
「赤い靴のバレリーナ」の愁いの表現は秀逸。
喜多郎『1000年女王 オリジナルサウンドトラック』
キャニオンレコード、C28G0124、1982年発売
シンセサイザー・サウンドのアルバム。
美しくエネルギー感のある高音域を伴い、浮揚感と拡がりのあるサウンドを描き出す。
< 所有する/所有したカートリッジの評価 >
DL-103LCII 総合 9.0
高音 9 中音 9 低音 9
AT33E (audio-technica) 総合 9.0
高音 10 中音 9 低音 8
特筆すべき音の艶、美音。迫力では DL-103LCII が上
DL-103R 総合 8.5
高音 9 中音 9 低音 8
低音のキレにおいて DL-103LCII に一歩譲る
DL-301II 総合 8.0
高音 9 中音 8 低音 7
高音が良く伸びエネルギー感もある。重低音が不足
DL-55II 総合 7.0
高音 7 中音 7 低音 7
帯域バランス良好で躍動感がある。音に深みがあれば
DL-55 総合 7.0
高音 7 中音 7 低音 7
DL-55II と区別がつかない音。ハウジングの青が素敵
AT-F7 (audio-technica) 総合 5.0
高音 5 中音 5 低音 5
薄っぺらな音で、購入後2か月で手放した