ロミと妖精たちの物語2 第1章「砂漠の海の戦い」② | 「ロミと妖精たちの物語」

「ロミと妖精たちの物語」

17才の誕生日の朝、事故で瀕死の重傷を負いサイボーグとなってし
まったロミ、妖精と共にさ迷える魂を救済し活動した40年の時を経て
聖少女ロミは人間としてよみがえり、砂漠の海からアンドロメダ銀河
まで、ロミと妖精たちは時空をも超えてゆく。

 

 

 

 

私は物心ついた時から今の私だった。幼い自分という存在はまったく知らないし、年老いた自分を想像することも無いわ、いつも私は私、少女とオンナの間を行ったり来たり。

 

私が初めて見た人間は、やせ細った髪の長い少年だった。

 

いつも私のそばにいて、まるで召使いかボディーガード気取りで、私に近づいてくる人々を追い払ってしまう。でも、彼の魔術はとても役に立つし、その歌声は様々な戦いの場面で、私を守る精霊戦士たちの勇気を奮い起した。疲れきって眠れなくなった私のためには、甘く囁くような声で子守唄を歌ってくれた。

 

あれから長い年月が過ぎて行ったけれど、私はあの頃のまま今も変わらない。なのに時とともに彼は大人になってゆき、今では眉間に深い皺の目立つ怖い顔のおじさんになっていた。

 

いつも不機嫌な顔をして、私の眼を真っすぐに見ようとしない。時々私も彼に意地悪をするけど、私を守ってくれる頼れるおじさん、聖戦魔術師トニー・マックス。

 

 どんな時も、私が困っている時には、必ずトニーが現れる。

 ――ああ、なんだかとても寒いわ、ここはいったい何処なの。

 

気がつくと若い男が私を見下ろしていた。

 

薄暗い洞窟には地上から差し込んだ光で、たぶん、まだ昼間であることを教えていた。若い男は鞘に収まった剣を杖のようにして、その細いアゴを乗せ、私の向かいにアグラをかいて座っていた。

 

「きみは随分長い間眠っていたよ」

私の視線に耐えられないのか、眩しそうに目を落として若い男は言った。

 

「あまりこの場所にふさわしく無いようだけど、きみは何者なんだ」

少し寒さを感じて、私は身体の下に敷いてあった皮のジャケットを羽おった。私の守護者の匂いが私の身体を包みこみ、暖かさとともに心地よい安心感が私の心を落ち着かせてくれた。

 

「とにかく、もうじき日が沈む。夜のオアシスは危険だ、ここを出なければ」 若い男は視線を洞窟の出口に向けたまま、私の様子を窺うように言った。

 

「ねえ、私と一緒にいた人は何処に行ったの」

「わるいけど、オレが来たときには誰もいなかった。きみがそこに一人で眠っていただけだ。きみを残してどこかへ行ってしまたのだろう」

 

そう言って若い男は立ち上がり、光の差し込む洞窟の出口に向かって歩き出そうとした。

私は座り込んだままじっとしていた。私をひとりきりにして彼が何処かへ行っ

 

「さあ暗くなる、早くここを出よう」

若い男は私の手をとって出口へ行こうとした。

 

「待って」

私の言葉をさえぎるように、若い男は私の手をしっかりと握りしめた。

「いいかいお姫様、夜の洞窟がどれだけ恐ろしいか、きみも知らない訳では無いだろう。連れの事を心配する前に、自分のおかれた状況を考えるんだ」

 

トニーの行方を心配し、逡巡している私にかまわず、若い男は私の手首をつかみ洞窟の出口に向かった。

 

夜が近づき、洞窟は暗くなってきた。

 

 

 次項につづく・・