第5部進行中ですが
お待ちの読者様方すみません
ロミ様からのレンラク待ちにて
続きはいましばらく
かかりそうです
畏れ入りますが
今日は第一部第一章を
再掲才させて頂きますので
妖精たちの物語りを
初めてご覧の方
いらっしゃいましたら
ぜひここからお進みください。
💛
ロミと妖精たちの物語第一章
※
白い光の霧氷の朝
きみはようやく目を覚ます
永い眠りから解放された早春の森
生命の樹のしとねから
その身を起こし
雪解け水に顔を洗い
腕を伸ばして大きく伸びをすると
谷間にこだまする小鳥たちの声が
はじける木々の芽音が
君にあいさつを送る
「おはよう森の妖精さん」
振り向くと木々の霧氷も
すでに消えていて
地表には
土と緑の甘い匂いが立ち込めて
きみは樹木の精霊たちに向かって
やさしく微笑みをかえす
強靭で柔らかな筋肉に包まれた
腕(カイナ)白き戦士
愛と癒しのエンパシーと、
暖かな春の陽光につつまれて
いま、きみはゆっくりと
その美しい羽根を広げてゆく
無限の天空に明滅する星々の光に
清らかな心を持つ
この地上の美しき妖精ロミ
あなたを崇拝する妖精戦士たちは
太陽に向かって唄い踊る
邪悪に染まった哀しき魂たちを
洗い清めるための戦いに
暗黒に凍てついた魂を救い出し
輝く宇宙のエネルギーを与え
ロミ,、あなたの微笑み(エンパシー)は
生命たちの再生の御技(ミワザ)となりて
愛の心は空を駆け巡り
そして
あなたをお守りすべき
最後の戦士として選ばれたのは
わたくし、
聖戦魔術師トニー・マックスであります
聖少女ロミ
今こそ光さすこの地上に
姿を現したまえ。
そして、ひと月に余って、わたしは聖少女を探しつづけた。
地球の深淵なる裂け目、アフリカの大地溝帯をさまよい、人類の起源なる暗い密林の奥へと探し求めた。
そして、ようやくたどり着いた砂漠の暗い洞窟で見つけたあなたは、目を閉じたまま身動き一つしない。
「ロミ、目を覚ませて」
目の前に横たわる女神の、ゆっくりとした息づかいだけがわたしの記憶の中にある、あの甘い香りとともに微かに聞こえてくる。
幾度か声をかけても、女神は目を覚まさまそうとしない。
「どうしたんだロミ!このまま目をさまさないなんて、大地の神よ、銀河の守護神よ、わたしに力を授けたまえ」わたしは目を閉じて祈った。
――汝の足は靴の中にありて、いかに美しきかな。
わたしは意を決して大きく息を吸い込み、大地に横たわる女神の足元にひざまづき、そのかたち良い足を包む靴を脱がせ、記憶のとおり右足からそっと口づけをして神々に祈った。
大地に頭を付け、目を閉じて祈った。
やがて、わたしたちの周りには平和な静寂が訪れ、洞窟の入り口から暖かな風が吹き込み、ロミの柔らかな亜麻色の前髪をそっと揺らせた。
そして女神の大きなあくびが洞窟の中に響いた。
「あら、トニーいたの、おはよう」
いつもどおりの美しい笑顔が、そこにあった。
わたしの女神、聖少女ロミを救出し、暗い洞窟から地上に出ると、外は夜明けを迎えた砂漠だった。雲ひとつない蒼穹の空に、遥か地平線の彼方から一条の光が夜の冷え切った大気を切り裂いた。穢れる物の何もない清潔な世界、空と砂だけがこの空間を支配していた。
「ねえ、ちょっと寒いわ」
薄衣しか身につけていない聖少女は、朝の冷気に震えていた。
わたしはシャツの上に着ていた皮の戦闘ジャケットを脱いで、聖少女に差し出した。
「ありがとう、でもちょっと匂うわね」
ときに彼女は、わたしに意地悪を言う。
わたしは返事もせず、黙って砂漠を歩き始めた。
聖少女は渋々と戦闘ジャケットに腕を通し、黙ってわたしの後についてきた。
「トニー、怒っているの?」
わたしは何も応えず、黙って前に進んだ。
「私はあなたを裏切ったつもりは無いのよ」
わたしは歩みを止め、ゆっくりと振り返り、昇り始めた太陽を背にした聖少女に目を向けた。いまいましい事に、聖少女のかたち良い頭には後光が差し包み、ポニーテールに結んだ髪の毛は黄金色に輝き、この世に二つと無い完璧なかたちをした両の耳が見える。
だまされてはいけない、わたしは視線を彼女の足元に落とした。
「いいですかロミ、あと一時間もしたら日差しが強くなります。できればそれまでに次のオアシス(地下水によって造られた洞窟)にたどり着きたいのです。太陽の高い間はオアシスで休んで、夜の涼しいうちに進み目的地を目指したいのです。どうか、歩いている間は黙って、余計なことに体力を使わないようにしてください」
ロミはいたずらっぽく下唇を噛むと、うつむいてトボトボとわたしの後を付いてきた。
次第に日は高く昇り、わたしたちの前方に伸びていた影は短くなってゆき、背中に太陽の熱気がジリジリと差し込んできた。
「ねえ、オアシスはまだなの?」
振り返ると、聖少女は急に力が抜けたように、焼けた砂の上に座り込んでしまった。わたしは急いで聖少女に近づき、その柔らかな身体を抱き上げた。
「いけません、火傷をしたらどうするのです」
「だって、とても疲れているのよ」彼女は力なく声を発した。
抱き上げたロミの身体は、以前よりすこし軽くなっているように思えた。
高い運動能力を持つ、柔らかで強靭な筋肉に包まれていたはずなのに、囚われていた間に痩せてしまったのか、その若々しい顔には苦労のあとは少しも見えないが、聖少女ロミの気丈な心が痛ましく思われた。
わたしの腕の中で目を閉じたまま、聖少女は弱々しく声を発した。
「早くオアシスへ・・連れて行って・・」
わたしは聖少女を抱えたまま空を見上げ、蒼穹の遥か高みを見つめた。
この銀河のいちばん近いブラックホールを探し、深く精神を集中してホーリーナイツ聖なる騎士道の経文を唱えた。
――二千億の恒星たちが集まりて、神々の翼休める銀河をつくり
輝く銀河の流れに乗りて、いたずら惑星たちは歌い踊る
――二千億の銀河たちが集まりて、神々の旅する宇宙をつくり
果てしなく拡がり続ける宇宙は、不可思議領域に子らを伴い
時空を超えて、無限の旅を続けてゆく
――四百垓の恒星と、一穣の惑星と、二溝の月たちが歌い踊る
選ばれし聖なる子らを宿し、子らを育むこの惑星(ほし)に
――ソラ(宇宙)よ、この聖なる子らに、その恵みを与えたまえ
ハーレー
視界の全てが、黄色い熱砂とその上に広がる蒼穹の空。聖少女を抱きかかえたまま、太陽の熱風にに焼かれて、わたしの体温は急激に上昇しようとする。そして今、ホーリーナイツの恵みがわたしたちを包み、遥か銀河のブラックホールとの絶対零度の交信により、聖少女ロミはふたたび生命の光を輝かせ始めた。
*参考≪無量大数≫
一、十、百、千、万、億、兆、京(けい)、垓(がい)、秭(し)、穣(じょう)、溝(こう)、潤(かん)、正(せい)、載(さい)、極(ごく)、恒河沙(ごうがしゃ)、阿僧祇(あそうぎ)、那由他(なゆた)、不可思議(ふかしぎ)、無量大数(むりょうだいすう)
・垓は十の二十乗・穣は十の二十八乗・溝は十の三十二乗・無量大数は六十八乗
次項につづく・・