川上弘美の「東京日記3+4」を読んだ! | とんとん・にっき

とんとん・にっき

来るもの拒まず去る者追わず、
日々、駄文を重ねております。

 

川上弘美の「東京日記3+4」ナマズの幸運。/不良になりました(集英社文庫:2020年10月30日第1刷)を読みました。刊行されたばかりの本、本屋で平積みされていたのですかさず購入、いきおいで「1+2」も購入しました。

 

アハハ、笑っちゃいます。「1+2」は読んで、2018年7月にしっかりブログに書いてました。なにをかくそう、最近、ダブって本を買ってしまうことが多々あるんですね。これも歳を取った証拠ですね。

川上弘美の「東京日記 1+2 卵一個ぶんのお祝い。/ほかに踊りを知らない。」を読んだ!

 

川上弘美は、押しも押されぬ芥川賞作家、芥川賞選考委員もしているみんなから尊敬されている大御所ですよね。それがなんと、パンツネタですよ。「単行本あとがき」には、ネタの率が高いのはパンツの記述率、年配者の跡をつける率、自分の名前を地名に探す率、等々。「ことパンツの記述にかんしては、巻中に四箇所もあって、パンツに対する自分のなみなみならぬ熱意に、あらためて驚きました。更年期と、何らかの関係があるのかもしれません」と続けています。

 

暑い日にはいくつかの種類がある、として、ようかんにこだわります。

今日は「せつに暑い日」なので、ようかんを食べることにする。「せつに暑い日」のようかんは、虎屋の「夜の梅」であることが望ましい。厚さは、きっかり二ミリであることが望ましい。枚数は、四枚であることが望ましい。午後の一番暑い時刻に、ノギスで二ミリに測って切った四枚を食べて、冷やしたはとむぎ茶を飲んで、「せつなる暑さ」を存分に堪能する。

 

加齢臭と古本の匂いは、同じ成分であると聞いて、びっくりする。本棚のある部屋にいって、大きく息をすう。これが加齢臭なんだ!実は、加齢臭という言葉はよく耳にしていたのだけれど、実際に「加齢臭」というまがまがしい響きの匂いが、どんな匂いなのだか、知らなかったのである。この匂いなら、まったく問題なし。むしろ加齢臭のある人の方が好きなんじゃないだろうか。世間さまがあんなに加齢臭を忌むべきものとして攻撃することに、あらためて疑問を感じつつ、何回も大きく息をすう。

 

三月某日、、あんなに熱中していた「ソリティア」断ちを宣言します。

大地震。久しぶりに、三日ほどソリティアをしておらず、仕事にかかりきりになっていたけれど、「やっぱりソリティアをしないと、調子悪いし」と、仕事をいったんやめてソリティアを始めようとしていた、その刹那の揺れである。次々にあきらかになる大惨事に、言葉、なし。この先、被災地がたちなおるまで、いっさいソリティアをしないことを決意。そんな決意、誰の助けにもならないことは知っているけれど、でも、でも、決意。

 

以下は、川上弘美の「神様2011」を読んだときに書いたものです。

川上弘美の「神様2011」を読んだ!

 

日常の何気ない時間を描写しているだけですが、その日常は大切だと、この作品はいいます。あきらかに3・11が起こってから、最も重要な作品のひとつと言えます。川上は以下のように言います。

 

このたびのさまざまな事々を見聞きするにつけ思ったのは、「わたしは何も知らず、また、知ろうとしないで来てしまったのだな」ということでした。・・・2011年。わたしはあらためて、「神様2011」を書きました。原子力利用に伴う危険を警告する、という大上段にかまえた姿勢で書いたのでは、まったくありません。それよりもむしろ、日常は続いてゆく、けれどその日常は何かのことで大きく変化してしまう可能性を持つものだ、という驚きの気持ちをこめて書きました。

 

静かな怒りが、あれ以来去りません。むろんこの怒りは、最終的には自分自身に向かってくる怒りです。今の日本をつくってきたのは、ほかならぬ自分でもあるのですから。この怒りを抱いたまま、それでもわたしたちはそれぞれの日常を、たんたんと生きていくし、意地でも、「もうやになった」と、この生を放りだしたくないのです。だって、生きることは、どんなときでも、大いなるよろこびなのですから。

 

過去の関連記事:

川上弘美の「東京日記 1+2 卵一個ぶんのお祝い。/ほかに踊りを知らない。」を読んだ!

川上弘美の「某」を読んだ!

川上弘美の「ぼくの死体をよろしくたのむ」を読んだ!

川上弘美の最高傑作「センセイの鞄」を(再び)読んだ!

川上弘美の「森へ行きましょう」を読んだ!

川上弘美の「大きな鳥にさらわれないよう」を読んだ! 

川上弘美の「水声」を読んだ!

川上弘美の「なめらかで熱くて甘苦しくて」を読んだ!

川上弘美の「神様2011」を読んだ!

川上弘美の「パスタマシーンの幽霊」を読んだ!
川上弘美の「これでよろしくて?」を読んだ!

川上弘美の「なんとなくな日々」を読んだ!

川上弘美の「どこから行っても遠い町」を読んだ!

川上弘美の「風花」を読んだ!
川上弘美の「真鶴」を読んだ!
川上弘美の「ハヅキさんのこと」を読んだ!
川上弘美の「おめでとう」を読んだ!
川上弘美の「夜の公園」を読んだ!

川上弘美の「溺レる」を読んだ!
川上弘美の「古道具 中野商店」を読む!
センセイの鞄は川上弘美の最高傑作だ!
ニシノユキヒコの恋と冒険
川上弘美の「光ってみえるもの、あれは」をまた読んだ!
川上弘美の「龍宮」を読む!

 

「東京日記1+2」卵一個分のお祝い。/ほかに踊りを知らない。

(集英社文庫:2018年6月30日第1刷)

「東京日記3+4」ナマズの幸運。/不良になりました。

(集英社文庫:2020年10月30日第1刷)