フランキー堺企画総指揮、篠田正浩監督の「写楽」を観た! | とんとん・にっき

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テレビで放映されたものを録画しておいた映画「写楽」を観ました。


篠田正浩の著作、「日本語の語法で撮りたい」(NHKブックス:1995年7月30日第1刷発行)では、映画「写楽」について僅かですが、以下のように述べています。


私の最新作「写楽」は、日本人がどのような政治的変革や危機に遭遇しても、十分に日本という共同体を支える文化伝統をもっていることを描きたいと願ったのです。そしてこの世界は新憲法の文体、つまりクレオールからできるだけ遠い位置から表現できないか思案しました。もっとも、「写楽」では常に歌舞伎を中心とした七五調のセリフと、それについて回る音曲が支配します。


文章としては、中野三敏の「写楽」(中公新書:2007年2月25日発行)を読みました。寛政6年(1794)から翌年にかけて、浮世絵界に忽然と現れて消えた「東洲斎写楽」。その素性についての謎解きは枚挙に暇がないとしながら、まず江戸文化のなかで浮世絵が占める位置を再考した上で、残された手がかりを考証し、写楽が阿波藩士斎藤十郎兵衛であることを、中野は解き明かしています。

中野三敏の「写楽 江戸人としての実像」を読んだ!


僕が蔦屋重三郎のことを詳細に知ったのは、2010年11月にサントリー美術館で開催された「歌麿・写楽の仕掛け人 その名は蔦屋重三郎」でした。この展覧会の図録には、「蔦屋重三郎は何を仕掛けたのか」というタイトルで、法政大学教授田中優子の巻頭論文があり、蔦屋重三郎の数々の仕掛けを解き明かしています。最も大きな仕掛けとしては、吉原の年中行事を核に吉原を文化の別天地・発信地としたこと、を挙げています。


図録、第4章の最初には、以下のようにあります。

蔦重は晩年、役者絵の出版に本格的に乗り出し、謎の絵師・写楽をプロデュースします。写楽の作品はすべて蔦重の元から出版されていますが、そのデビューは豪華な黒雲母摺の役者大首絵を28枚同時に出すという鮮烈なものでした。本章では、写楽の歌舞伎役者絵や相撲絵の名品を軸に、プロデューサーとしての蔦重の手腕を浮き彫りにします。

サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(後期)」展を観た!
サントリー美術館で「その名は蔦屋重三郎(前期)」展を観た!


写楽については、とんぼ役の真田広之が「しゃらくせえ」と言ったのをとらえて、東洲つまり江戸の、しゃらくつまり写楽、と蔦重が名づけたと、映画のなかで描かれていました。もちろんこの映画「写楽」は、映画館で観て、ビデオを借りてきて観ているのですが、今回、観直してみると、まったく印象が違っていました。以前は、真田広之と葉月里緒奈のスキャンダルのほうに、意識がいっていたのかもしれません。今観なおしてみると葉月里緒奈は女としてではなく、あまりにも子供子供した印象でした。とんぼと花里、二人の恋、こちらのほうはあまり重点を置いていなかったこともわかりました。佐野史郎、片岡鶴太郎はなかなかの好演でした。


事実上この映画は、写楽を描いてはいますが、企画総指揮のフランキー堺の映画であり、フランキー堺演じる蔦屋重三郎の映画ということができます。この映画が今観なおされるのは、もしかしたら、松平定信が弾圧を加えた時代と同じく、社会が不穏で不安定になっている時代になっていることも、大きな要因かもしれません。


僕は今まで数多くの展覧会で、その作品を観てきました。たとえば・・・

東京国立博物館平成館で「特別展 写楽」を観た!

江戸東京博物館で「写楽・幻の肉筆画」展を観た!


BS-TBS 土曜ロードショー「写楽」
8月2日6:30pm~ 2時間24分

1995年、日本、「写楽」
監督篠田正浩、主演真田広之による歴史ロマンラブストーリー。


キャスト
真田広之、葉月里緒奈、佐野史郎、岩下志麻、片岡鶴太郎
永澤俊矢、坂東乎八十助、竹中直人、中村富重郎、フランキー堺

スタッフ
企画総指揮:フランキー堺
監督:篠田正浩
原作・脚本:皆川博子
音楽:武満徹

番組内容
鬼才・篠田正浩監督作品。
しゃらくせえ。江戸のしかけ花火―写楽。若き芸術家たちの恋、野心、そして情熱・・・。

「写楽」は写楽研究家でもあるフランキー堺が、映画化構想30ねんにして、企画総指揮をとり自らも江戸出版界の鬼才蔦屋重三郎を演じる。監督は「瀬戸内少年野球団」「少年時代」「スパイ・ゾルゲ」の篠田正浩。音楽に武満徹、美術に浅葉克己、衣装に朝倉摂と超一級のスタッフが集結した。主演のとんぼに真田広之。花里に葉月里緒奈(本作が映画初出演になる)。篠田作品に欠かせない岩下志麻が、大道芸人を繰る首領おかんに扮している。また佐野史郎が天才絵師歌麿、ほかに片岡鶴太郎、坂東八十助、永澤俊矢らが、当時の実在の人物として出演、脇を固める。重要文化財、四国・琴平の"金丸座"を借り切ってのシーンには中村富重郎をはじめ、中村芝雀、市川團蔵ら歌舞伎の名優が主演し、本物の迫力を存分に楽しませる。また、最新のデジタル合成技術によって、江戸の町の絶景や日本橋、吉原界隈の雑踏などを甦らせることに成功。浮世絵の施餓鬼出す絢爛さをより際立たせている。

ストーリー
18世紀、江戸の人口は百万を数え、それまで京都・大阪中心の政治経済が江戸へ移行し、文化面でも独創性を発揮しはじめていた。この時代、北斎、一九、馬琴ら若き芸術家が、江戸の名プロデューサーと謳われた版元、蔦屋重三郎のまわりにいた。その一人歌麿は蔦重の手腕により、天才絵師といわれるまでに育っていた。しかしその頃、江戸庶民文化の興隆に危機感を抱いた老中、松平定信は厳しい弾圧を加えようとしていた。蔦重がその標的となりつつあることを察した歌麿は、言い寄ってきた別の版元へ鞍替えしてしまう。歌麿を失った痛手は蔦重にとって大きかった。歌麿の寝返りを苦々しく思いながらも蔦重は次なる絵師の掘り起こしに躍起になっていたが、万策が尽きてしまう…。寛政6年5月、蔦重の店で、東洲斎写楽を名乗る絵師の奇妙な画風の役者絵が、突然売りに出され街の話題をさらっていた。一方、吉原でもこれまで名の知れなかった絵師の浮世絵が、高価な黒雲母摺り(くらきらずり)で何十枚も売り出されたという噂で持ち切りだった。歌麿の豪華絢爛な浮世絵に対抗するかのごとく出現した写楽。その毒気のある画風に最も魅了されたのは、ほかならぬ歌麿であった。そしてそこにもうひとり、幼い愛を感じ始めた女がいた。江戸のもうひとつの華、吉原の花魁花里だ。花里は偶然知り合ったその男の中に写楽の情熱を感じ取っていた…。


以下、映画のなかの名シーン

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BS-TBS 土曜ロードショー「写楽」