柴崎友香の「続きと始まり」を読んだ! | とんとん・にっき

柴崎友香の「続きと始まり」を読んだ!

 

柴崎友香の「続きと始まり」(集英社:2023年12月10日第1刷発行)を読みました。

 

あれから何年経っただろう。

あれからって、いつから?

どのできごとから?

 

二つの大震災。未知の病原体の出現。

誰にも同じように流れたはずの、あの月日――。

別々の場所で暮らす男女三人の日常を描き、

蓄積した時間を見つめる、叙事的長編小説。

 

始まりの前の続き、

続きの後の始まりを見下ろし、

あの中のどこかに私もいる、と思った。

一穂ミチ(作家)

 

こうして、何かが起きて、画面を見続けるのは自分がこれまで生きてきた中で何度目だろう。

地震があり、事件があり、テロがあり、戦争が始まり、そのたびにこうしてひたすら画面を見る。2011年の震災のときからは、流れてくる報道の映像だけでなく、インターネットで情報を探すことも増えた。

しかし、それで何かが変わったことはない。

自分はいつも見ているだけだ。画面越しに、遠く離れた安全な部屋の中で、「情報」を見ているだけ、時間が過ぎていくだけだ。――本文より

 

後にコロナ禍と呼ばれる突然訪れた「非日常」が「日常」となった毎日のなかで、彼らはふと「あのとき」を思い出す。震災や大きな事件だけでなく、長い間、頭の隅に引っかかっていた物事を振り返る。本人にとっても、周囲から見ても大したことではない。トラウマや挫折とも言えない。けれど確かに心に刺さっている、小さな棘だ。――書評家・藤田香織

 

目次

1 2020年3月 石原優子

2 2020年5月 小坂圭太郎

3 2020年7月 柳本れい

4 2020年9月 石原優子

5 2020年11月 小坂圭太郎

6 2021年2月 柳本れい

7 2021年4月 石原優子

8 2021年6月 小坂圭太郎

9 2021年8月 柳本れい

10 2022年1月 石原優子

11 2022年1月 小坂圭太郎

12 2022年2月 柳本れい

13 いつかの2月とまたいつかの2月

 

柴咲友香:

1973年、大阪府生まれ、東京都在住。大阪府立大学卒業。99年レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2007年「その街は今は」で芸術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞を受賞。10年「寝ても覚めても」(18年に映画化)で野間文芸新人賞、14年「春の庭」で芥川賞を受賞。その他「パノララ」「千の扉」「待ち遠しい」「百年と一日」ほか、エッセイに「よう知らんけど日記」など、著書多数。

 

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朝日新聞:2024年1月20日